本郷恵子のレビュー一覧
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【書名】
買い物の日本史
本郷恵子
【本を手に取った動機】
夫である本郷和人氏の著書を読んでみて面白かったので、妻でもあり同僚でもある本著者の書籍を読んでみたくなった。
【印象に残ったポイント】
・承認欲求の満たし方、官位を寄付を通じて得ること。
・幕府において御家人の官位を統制するニーズがあったこと
ここから、寺社勢力とタッグを組んで官位と寄付単価を吊り上げるのは、三角貿易みあって面白い。
・元服≒成人
いろんな前提の違いはあるが、一人前になって元服し大人となる。所定の年齢まで生きてたら大人扱い、の現代とは異なる。
わたしは昔の基準に照らすとちゃんとした元服後の大人なんだろうか?
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歴史では中世が好きなので、ヨーロッパ中世に関する本はちょこちょこ読んでいたけれど、日本の中世について編年的に論じ掘り下げた本を読むのは、今回が初めて。知らないことばかりで大変勉強になりました。
文章が堅苦しくなく、たいへん読み易かったです。各章のインターミッションに、平安貴族の男色(なんしょく)についてなどのコラムがあり、分厚い本を読み進める推進力になりました。
最初の武家政権として船出した鎌倉幕府、源氏三代の滅亡から北条氏の執権政治へ。御成敗式目という極めて先進的な法律を、おそらく世界に先駆けて成立させたにも関わらずうまく運営できなかったり、元寇という未曽有の国家的危機に襲われるも「神 -
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自由と悲惨は表裏一体、強者は弱者に。
そんな中世社会を跋扈した「怪しいもの」とは何者だったのか。
第一章 中世の博打・・・詐欺を行う者たち。「博打」と行者との関係。
第二章 夢みる人々・・・卜占も夢も神意の現れ。
第三章 勧進の時代・・・浄土思想と勧進。永観と重源。
第四章 異形の親王・・・院政開始から増えた天皇や院の御落胤たち。
以仁王の子らの運命。清盛は果たして?
第五章 法勝寺執行の系譜・・・院政を行い、絶大な権勢と富を得た
白河天皇が造営した法勝寺。その寺院経営の
中核であった執行たち。信西の息子や俊寛も!
参考文献有り。系図も複 -
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日本の中世(平安時代末~室町時代)までの時代に、人々がなにを求めたのかということをテーマにした本。『買い物の日本史』というから、貨幣史や流通史、市場経済の本なのかなぁと思っていたら、もう少し分野を絞ったものになっている。題名とは違って、語られているレベルもかなり高いし。
中世で最も人気が高かった商品はなにかといえば、それは「官位」と「極楽往生のためのお墨付き」の二つで、買官と寄進の二つが富を動かす力になっていた……というのは面白いのだけれど、正直に言えば、ちょっと取っ付きにくい部分もあった。それよりも、第一章と第二章、第九章などで語られる貨幣と市の現場と、第十一章の枕草子のような豊富なエピソ -
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内容は、タイトルと多少違い、中世の「成功」と呼ばれた官位売買の話が主で、中世日本の市、貨幣、金融等にも少し触れられている。官位の売買は、その収入を寺社の改修などの費用にあてるように制度化されていた。官位を買うのは、一生に一度の買い物だが、余裕ができると中世の富裕者は、寺社への参拝、寄進を積極的に行っていた。鎌倉時代の地方有力者の日記に残された寄進の記録の夥しさに驚いた。現代人には、理解できない堅固な信仰心である。ホイジンガの「中世の秋」にも宗教が総ての中心である社会が描かれていたが、日本でも事情は、似ていたようだ。本書は、なかなかイメージしにくい中世の社会を、お金を通して、おぼろげに見せてくれ
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論文2~3本と、それに一般読者を意識してか古文書概論・日本史概論がいくつかで構成。と思う。(笑)
大まかな所でいえば、鎌倉幕府の統治限定主義が室町幕府の全国統治主義に移行する論理に将軍権力の発露を見た!ということであろう。但し、文書権威や地方との「外交」を土台に形成された将軍権力だ。より高次の道理・衆議に発展したともいえるか。
武家にしてみれば時代の流れにあわせ、仕方なくって感じもあるんでしょうかねぇ。案外、日本の歴史上は下からの、あるいは武からの王化に対しては面倒くさがりなのかもしれません。
個人的には官宣旨のくだりは、古文書講義を聴いているようで懐かしかったです。 -
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最初の感想は読みやすかった。
二分王権論を強く意識しながら、基本的には政治史に沿った記述です。
読みやすかった理由は鎌倉だけではなく、後三条〜後醍醐登場までを包括的に扱った点にあるのだろう。
どうしても鎌倉時代だから頼朝からでとなると、実は非常に分かりにくいし、平清盛をどう評価するのかが見えにくくなる。
平氏政権は武家政権の入り口であるので、本来切り離せないものであり、本作はその意味で流れを意識して作られている。
著者の夫は石井進、五味文彦に師事した本郷和人。夫婦で東京大学史料編纂所に勤務しているという、研究環境も本作に影響したのではないだろうか。
ただ、通史というと1人が書きっぱなしのイ -
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バタイユの著作を読みエロティシズム、蕩尽といった概念を学んだわけだが、バタイユはフランス人であるがゆえに、バタイユの考察、あるいはエロティシズム、蕩尽といった概念が日本においてどれほど有効であるのか、かなり疑問であった。そのためこの本を読むことで、日本において富がいかにして蕩尽されていたのかについて考えようと思い手にとった。
平安時代後期には全国の荘園から集められた富が藤原氏、院によって蕩尽される仕組みができあがっていた。そして平氏が実権を握った時代は、海運が整備され、中国から輸入された富をも中央に集められ蕩尽された。だが武士政権が成立すると、貴族は徐々に衰退し、例えば鴨長明の「方丈記」や吉田