【感想・ネタバレ】買い物の日本史のレビュー

あらすじ

市場での日常品から朝廷の官位にいたるまで、中世人の購買行動から、当時の価値観や道徳意識、信仰心のありかたに迫る。政情不安な時代の生々しい実情と、人々の心性を浮かび上がらせる、新しい日本史。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。

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Posted by ブクログ

【書名】
買い物の日本史
本郷恵子

【本を手に取った動機】
夫である本郷和人氏の著書を読んでみて面白かったので、妻でもあり同僚でもある本著者の書籍を読んでみたくなった。

【印象に残ったポイント】
・承認欲求の満たし方、官位を寄付を通じて得ること。

・幕府において御家人の官位を統制するニーズがあったこと
ここから、寺社勢力とタッグを組んで官位と寄付単価を吊り上げるのは、三角貿易みあって面白い。

・元服≒成人
いろんな前提の違いはあるが、一人前になって元服し大人となる。所定の年齢まで生きてたら大人扱い、の現代とは異なる。
わたしは昔の基準に照らすとちゃんとした元服後の大人なんだろうか?

・徒然草の引用。死んだあとに色々残してもしょうもない、はだいぶ時代をさかのぼるがDie with Zero的で共感した。
・成功(じょうこう)で官位を手にするムーブから、人間はいつの時代も行きつく先は承認欲求なのだなと感じた。

・中世において余剰リソースは信仰に集中したこと
昔は宗教が世界認識のベースだが、いまはそうじゃない。だから、これやっとけば極楽浄土なんてないし、これやれば正しいもない。
自由すぎて選択のジレンマに陥ってるから、生存はできるのに精神疾患とか、蔓延してしまうのかもしれない。

・ある意味、極楽浄土と説法はエンタメ
○○参りという娯楽、説法での資金調達。現代でも、××参りで金を使い、スタートアップのピッチで資金調達したり。変わっているところと、変わってない点があり面白いなと感じる。


【具体的に生活や仕事にどう活かすか】
・承認欲求に気を付ける
正直、あまり具体的な活用ポイントは見いだせなかった本書。
自分の承認欲求を自覚し、うっかり出しすぎないよう気を付けたい。


【ふりかえり・気づき】
・今昔、承認欲求を満たす?地位財
地位財が欲しくなるのは、今も昔も同じ。これは社会生活上の本能なのだろうか。わたしは時計も車も興味ないが、社会の中で群れとして生活する中でヒエラルキーの中に占める位置が高いのであるとシグナリングするのには、有効なのかもしれない。または、有効じゃないけど狩猟採集本能の名残でやってるのかも。
いま官位は金じゃ買えない、むかしはタワマンも時計も車もなかった。もし、あったらどう経済行動が変わるんだろうか。

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2025年04月28日

Posted by ブクログ

日本の中世(平安時代末~室町時代)までの時代に、人々がなにを求めたのかということをテーマにした本。『買い物の日本史』というから、貨幣史や流通史、市場経済の本なのかなぁと思っていたら、もう少し分野を絞ったものになっている。題名とは違って、語られているレベルもかなり高いし。

中世で最も人気が高かった商品はなにかといえば、それは「官位」と「極楽往生のためのお墨付き」の二つで、買官と寄進の二つが富を動かす力になっていた……というのは面白いのだけれど、正直に言えば、ちょっと取っ付きにくい部分もあった。それよりも、第一章と第二章、第九章などで語られる貨幣と市の現場と、第十一章の枕草子のような豊富なエピソードが面白かった。

ただ、面白さは別にして本書を読んで思ったことは、物々交換が基本の世界で貨幣が浸透していくことの難しさと、それでも行われる商取引の飽くなき欲望の二つだと思う。あと、中世になると朝廷や幕府が「権威販売業」のような感じになっていて、社会がそれによって成り立っているという不思議さを感じた。別の意味では、大金さえ払う能力があれば官位を買えるわけなので、その後の下剋上の幕開けを予感させるものであったとも言える。

しかし、この本を読んでみて思うのは、諸勢力が乱立している世界ではまともな経済発展というのはないのだなぁということ。それでも平和な時代であれば、少しずつ経済も発展していくのだろうけれども、「強力な政治体制」と「平和」の二つが機能しだした安土桃山時代から江戸時代に、現代の感覚で言う「買い物」の素地が固まったのは言うまでもないことだなぁと思った。

あと、官職と位階の相関が一目で分かる、官位相当表があるのは良かった。

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2013年09月15日

Posted by ブクログ

内容は、タイトルと多少違い、中世の「成功」と呼ばれた官位売買の話が主で、中世日本の市、貨幣、金融等にも少し触れられている。官位の売買は、その収入を寺社の改修などの費用にあてるように制度化されていた。官位を買うのは、一生に一度の買い物だが、余裕ができると中世の富裕者は、寺社への参拝、寄進を積極的に行っていた。鎌倉時代の地方有力者の日記に残された寄進の記録の夥しさに驚いた。現代人には、理解できない堅固な信仰心である。ホイジンガの「中世の秋」にも宗教が総ての中心である社会が描かれていたが、日本でも事情は、似ていたようだ。本書は、なかなかイメージしにくい中世の社会を、お金を通して、おぼろげに見せてくれた。

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2013年09月11日

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