芳沢光雄のレビュー一覧
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新聞の読書欄で佐藤優が取り上げていたので手にした一冊。
国語の重要性を説く数学者という意味では、藤原正彦と同じスタンス。藤原正彦の主張の多くに共感しているワタシとしては、本書の主張についてもウンウンと頷きながら読み進めることができた。マークシートの問題点を、国語・数学の例を挙げながら解説し、答えを「考える」のではなく、「当てにいく」姿勢になってしまうことを問題視する。マークシート式問題はよくないだろうと漠然と思っていたが、その理由を論理的に説明していてスッキリした。
ただ、どうしても引っかかるのが、本書のタイトル。最近の新書にはありがちだが、本書の内容と必ずしも合っていない。四章構成のはじめの -
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佐藤優が勧めていたため、本書を読んだ。
芳沢氏の著書は何冊か読んだことがあるが、内容的に浅いものが多く心配であったが、案の定本書も深い内容ではなかった。
本と映画とラーメンは他人の勧めに乗ってはいけない。
佐藤優の勧めだとしても、乗るべきではなかった。
しかし、既知の事柄を確認する意味はあったし、新たに得た知識もあった。
1991年の「大学設置基準の大綱化」が、改悪であったことは有名である。それまで、大学は文部省が決めた設置基準を完全にクリアしなければならなかった。しかし、この「大綱化」によって単なるガイドラインになったため、設置基準がゆるくなったのだ。その結果、主に以下の二つのことが生じた。 -
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数学は苦手ではなかったが、証明や補助線を引くような問題は結構苦手な方だった。
しかし数学の面白さは、実はこういう所なんだということを、社会人になってからなんとなく感じるようになった。なのでこの本の内容についても、興味を持って読む事が出来た。
世界のビジネスエリートに求められる素養。
・問題と原因と対処法を見つけて解決を図る事
・数字やデータを正しく読んだり使ったりすること
・自らの考え方に理解を得る説明が的確にできている事
・ほかの意見を公平に受け入れる精神を持つこと
そして日本の教育で証明問題が軽視されており、これは世界の流れと逆行していることに非常に危惧を抱いている。
そして証明力とは -
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「論理的に考え、書く力」をつけるための本ではない。「論理的に考え、書く力の危機」について数学教育の立場から記した本。最近、こういうキャッチーなタイトルの本が増えて困る。出版社の方も、タイトルと本の内容の整合性について、論理的によく考えてほしい。
さて、この本の主題である教育について考えてみると、センター試験が導入された当時、例えば難関私大入試には難問奇問がつきもので、国立大の二次試験も含め、大学入試は今より難しかった。センター試験には大学入試の良問化、標準化を目指すという目的があり、それなりに肯定的に捉えられていた記憶がある。
しかし、受験戦争を緩和したいという思いと、大学にも自由競争を促す -
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ネタバレ「数学的思考法」としてよりも、現代における数学(理科系)教育の問題点の方が印象が強く残りました。
よく数学の何が役に立つのかと聞かれたことがあります。
ここで書く「数学」というものが「計算能力・公式暗記能力」と解釈すると
まったく役に立つことはないでしょう。電卓、パソコンの方がどんなにも役に立つでしょう。
このように、日本の数学教育を受けると大切なのは最後に出てくる
「計算能力・公式暗記能力」の対価としての「答え」になります。センター試験が典型例ですね。
しかし、数学は「考える学問」であり、答えも大事ですが導く過程が何よりも大切なのです。この過程を経ることで「考える」ことを行う学問なので -
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現役高校生のとき挫折した人を救済するような本ではない。学問としての数学への架け橋、あるいは実践的数学の入り口のような位置付けか。
定理→証明→例題→練習問題の流れ。証明がしっかりあって嬉しいのだが、数学挫折者にとって「どうしてそうなるの??」と引っ掛かるところが多い。そのため、苦手な人はとりあえず読み通してしまって、高校の時の数学とは違うイメージを焼き直すための本と位置付け、詳細な式や証明の処理の感覚やコツを身に付ける練習は他の参考書を使った方が良さそうだ。
こういった意味で本書は高校数学に新しい風を吹き込ませたい人のための本であるように思える。