白井裕子のレビュー一覧
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建築の専門家である大学教授による日本の林業に対する意見書。著者は、有識者会議など政府の委員も勤められた林業の専門家であり、現場にも頻繁に足を運び、日本の林業の置かれた現状をよく理解していると思う。日本の林業が抱える深刻な問題点を理解できた。また、著者には林業に対する並々ならぬ熱意があり、林業振興に努力する姿に感銘を受けた。田中淳夫著『絶望の林業』と視点は若干違うものの、結論は同じであり納得できる内容であった。勉強になる一冊。
「(伝統木造は作ることができない)「伝統木造」が仕様規定から外れるとなると、住宅といえども、マンションレベルに要求される難しい構造の計算が求められ、さらに「適合性判定」 -
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増税や規制で日本が袋小路に落ちて解決策を
見失っていると考えている「貴方・貴女」
解決策が見えてくる一冊です(読むべし)
欧州で国を支える基幹産業『林業』が、日本
では「活かし方を知らない政府」の政策によ
り宝の持ち腐れ・・・補助金(国民の税金)
で全国一律に材木・製材価格を破壊したため
ひとつの産業が瀕死の有様である
合理性に欠けるバイオマス発電推進のために
良木が細かく裁断、あげくのはてに原木を外
国に輸出(タブーと考えください)
10年前から木材生産額は2000億円、補助
金で相場を壊す、また林道と造林に行政投資
した額は3000億円と売り上げの1.5倍に至る
この国は腐ってるが、著者 -
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■どんな本か
工学博士かつ一級建築士でもあり大学教授でもある著者が、会議で発言したことや国内外の高官や現場と話して林業とそれを支える制度について、問題点をまとめた本。前著があり2作目らしい。
■主張
本の帯にある、【このままでは『宝』の持ち腐れだ。】の一文が主張をよく表している。林業を取り巻く制度の問題点が、これでもかこれでもかと笑えるくらいに上げつらねられている。
・日本の建築基準法は伝統的な構法を無視
・そもそも国益として景観を守る理念欠如
・小さな製材所が戦いにくい現状
・バイオマスを推すあまり、A材まで回される
・日本の森林多様性に富み様々な使い道あった
・畑の延長でイケてる林業機 -
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森林、林業、バイオマス燃料に関わる業界に従事している者として読みました。
前著に引き続き、林業のみならず日本社会の問題についても考えさせられる本でした。
補助金漬けの林業の悪循環。
(補助金により価格の安い木材が市場に流出 → 価格競争 → 山林、出荷元へ還元される利益が減る → 供給持続が難しくなる)
何のための補助金か、補助金がなければ成り立たないというのは、制度として破綻しています。その補助金制度は行政担当者の実績作りの為ではないか、現場を軽視した画一的なものでないか。補助金の問題は、林業において顕著に出ておりますが、似たような事例はたくさんあります。
バイオマス燃料の活用は、日本 -
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木材を大いに消費し、森林に関わる産業に従事している為、こちらの本を手に取りました。
現場を知らない人が、全国で画一的な補助金制度を作り、林業という地域性が非常に強い業界の足かせとなっている現状。林業の補助金制度に着目していましたが、日本社会のあらゆる問題にあてはまることと思います。
本書の中でありました、どこの地方に行っても似たような街並み、地域性が見られないというのはよくわかります。地方に行った際に、個々のお店や狭い範囲で地域性を感じる場面はありますが、街全体に地域性を感じる事はあまりありません。これらは、地域性を勘案しない画一的な補助金制度や規制の結果なのではないかと考えさせられました -
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筆者は現場に入り、実際に林業に携わっている人々の声がよく反映されていると思う。
現場経験がない私にとって、本書の内容には目新しいものが多くあり、とても勉強になった。
しかし、その書きぶりには感情的な一面があり、読むのに疲れてしまう。
説明が過度に簡略であったり、議論の前提を曖昧にしていたりする箇所があり、筆者の熱量は非常によく感じるものの、すんなりと筆者の主張を受け入れるには抵抗を感じる。
(思えば「蘇る」「瓦解」といった扇情的な言葉から察するべきだったかもしれない)
私個人の好みではあるが、データと論理に基づいた、粛々と進む議論を期待したい。 -
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ネタバレ森を取り巻く環境について知るべく読書
メモ
・日本の伝統木造の構法や技能の可能性
・自国の伝統文化は国益に直結する
・本来A材として売るべき丸太もB材として売らざるを得ない状況が発生している。A材は高く売るべきだが、バイオマスのエネルギープラントに流れ出す状況も。
・日本の木材は含水率が高い。バイオマス燃料化には一苦労。特に針葉樹の杉が今は増えている。
・我々はバイオマスというと再生エネルギーを想像するが、欧州では熱を想像する。
・ドイツでは熱も利用しないと買取対象にならない
・FIT制度やバイオマスプラントの存在がA在まで燃料化する、熱利用法を無理やり探す必要まで生じている
・買い手が一方 -
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丸太は品質によってA、B、C、D材に分けられる。A材は製材に、B材は集成材やCLT、合板の材料に、C材はチップ用などである(CLTなどの用語の説明は後述する)。D材は林地残材などで、これまではそのまま山に置いてきた資源で、今なら再生可能エネルギーの燃料用である。価格は当然、A材が一番高く、順に値段が下がる。
さらに懸念されるのは、本来A材として売るべき丸太も、B材として売らざるを得ない状況が発生していることだ。同様にB材をC材で、C材をD材で、という具合に値段が下がり、用材になるはずの丸太が、そのままバイオマスのエネルギープラントに流れ出している。バイオマスのプラントでは、残ったD材を消 -
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伝統構法を偏重する事なく、在来構法にも安住しない。
ヨーロッパ至上主義的な視点を本著から感じるのは残念。
規模のみを追い求めるのではなく、規模の使い分けが必要。
バイオマス利用が最優先される事に違和感を感じるのはその通りだと思う。
銘木にそれ相応の価値が付いてこそ林業百年の礎が築かれる。
林業は地産地消が第一だと思うが、次善の策として輸出も重要と思う。
輸出をするなら国内製材とワンセットで。
林業も3Kを古い言葉にしなくては。
補助金も災害対策といった観点からある程度の必要はあると思うが、補助金ありきの事業はやはり廃れるだろう。
清風堂書店梅田店にて購入。 -
Posted by ブクログ
長良川流域では、人為的に杉を大量植林した。これとは対照的に昔からヒノキが自生もしていた木曽川流域は、そこにある森林資源と結びついて木材地場産業が育ってきた。
林業の補助金制度は、それを日々担当している者すら混乱するほど煩雑だ。
補助金をもらう条件を決める5機能
山地災害防止機能 水源涵養機能 保険文化機能 生活環境保全機能 木材等生産機能
日本で木材価格を吊り上げているのは、木を運び出すコストである。
その地にかなった林業をすすめるべきだ。優良材が収穫できる樹種が勝手に自生するような土地なのか。戦後、はげ山となった山肌に、広葉樹より育ちやすいと思われている杉、檜、松をただ植林しただけな