志賀直哉のレビュー一覧
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ああ『小僧の神様』の、この感覚。
本名を明かさない。店から足が遠のく。気が小さいという。
自分にもあるちょっと後ろめたいような、モヤリとした部分。
「寂しい」と表現に、そういう面もあるのかもと思いが巡る。
最後のわざわざ書き残された作者としての迷いには、文豪とも言われる方ながら近しいものを感じてしまった。
祠で終わらなくてよかった。
そして『真鶴』
幼いと若々しいとの間くらいの心持ち、かな。
町で見かけた大人の女性に、弟の手を引きつつも気持ちをすっと持っていかれる様子が、なんとも甘酸っぱい。
弟君の我慢強さもほほえましかった。
その他、どの作品も情緒があった。時が過ぎたらまた読み返したくな -
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中学?の国語の教科書に載っていた?あやふやな記憶を頼りに読んでみました。
掲題作「城の崎にて」は圧巻でした。わずか8ページの短編ながら、身近な出来事から死への恐怖を連想させられます。
本書は短編集ですが、他の作品も、日常のある部分を切り取り、鮮明なイメージを植え付ける「山椒は小粒でも…」的な作品が多いです。
解説を読むと、この短編を描いた時期は、志賀直哉の私小説的部分と空想小説的部分が曖昧になっているとのこと。その事実を聞いた上で、妻の情事を聞き、がっかりしながらも心の底では興奮を禁じ得ない主人公を描いた「雨蛙」は、ぴりりを飛び越え、若干ぞっとします。
「小僧の神様」は痛快なヒーロー小説?にな -
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ネタバレ「ところが、どうだろう、この変に寂しい、いやな気持ちは。」
評判通り、文章が非常に綺麗だった。
小僧の神様では、善行の後に残る不快感をみごとに表現している。
赤西蠣太では、ふと芽生えた愛情に揺れる男が描かれている。
清兵衛と瓢箪は、昔読んだ懐かしい作品だった。
范の犯罪では、妻から強く逃げられない男の弱さがうかがえる。
流行感冒では、人間的にできていない”石”が悪くも、良くも活躍する。
清兵衛と瓢箪は、小学校の授業か何かで読んだ作品で、最後の瓢箪を売られる場面を今でも覚えていました。その作品に再び会えたことに驚き、また、よいものを小さいころから読ませられていたんだなと、改めて思いました。 -
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今年5月に初めて城崎温泉に行った。
翌日帰る間際に、1軒ある小さな書店でこれを見つけて購入。
ひさしぶりに角川文庫手にしたかも。
この表紙はとても風情があってかわいい。
こんなに有名な作家さんなのに、
実はこれまで読んだことがなく、
なのであの名作の「暗夜行路」なんかも残念ながら読んだことがなく、
全くもっていい齢してお恥ずかしい限りですが、
きっかけはともあれ、この時代の文学に触れ直すきっかけをもらった1冊。
印象的だったのは「城崎にて」もさることながら、
「母の死と新しい母」
「小僧の神様」
そして「雨蛙」
追記
志賀直哉が城崎を訪れてから、今年がちょうど100周年とのこと。わたし -
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わたしはふだん、装丁なんかどーでもいい、本は中身、装丁はいいから安くしてくれ、とか、とんでもないことを思っているが、この本は異様にカバーに惹かれ、なんの脈略もなく志賀直哉。たぶん三十年ぶりくらいの志賀直哉。
いや、でも、おもしろかった。ものすっごく短い短編ばかりだけれど、文章が濃く、なんというか水気のあるというかしっとりしているというか。話もどうとはいうことがないのだけれど印象深い。「小僧の神様」なんてすごく好き。「転生」もおもしろくてキュートで好き。
こういう日本文学もやっぱり読まないと、と思った。
短編より長編が好きなので「暗夜行路」読もうかな。 -
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ネタバレ表紙は城の崎にての沢蟹か。
小僧の神様と清兵衛の瓢箪はいつか読んだことがあった。知っていた小説だからかこの二つの小説は際立って優れたものであるように感じた。ひいき目すぎるか。
小僧の神様は二つの視点から進んでいく話を神の視点から把握することができるのが面白い。片方のみだとこの情緒は生まれないだろうなんてありきたりなことを考えた。小僧の無知さから生まれる勘違いが可愛らしい。
母の死と新しい母は志賀直哉の私小説らしい。たしかに主人公=志賀直哉自身の心情が素直に描かれているなと感じた。母の死に心を痛めるも新たな美しい母にも素直に心を開いていく様子が淡々とした状態の文章ながらもやさしく述べられている。 -
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志賀直哉の小説は初めて読んだ。文豪の作品となると「難しい」という先入観が先に立つが、一編が10から20ページ程度の短さでとっつき易かったし、尚且つ読み易いのに深みを感じさせる文体が美しかった。
中学や高校の国語便覧の作者紹介で代表作として挙げられていた「小僧の神様」「清兵衛と瓢箪」「城の崎にて」を、1冊で網羅出来たのがなんだか嬉しい。憧れの人にようやく会えたような不思議な感覚である。
善いことをしたはずなのになんだかもやもやした後味になったり、信じたいのに心のどこかでは疑ってしまっている自分を自己嫌悪したり、命の儚さに想いを馳せたり、身近な心理に材を取っていて共感を覚えた。