マルグリット・デュラスのレビュー一覧

  • 愛人 ラマン

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    ネタバレ

    いわゆる家庭を持った人の、外に作った恋人とは違う、愛する人、愛した人としての愛人。
    映画も原作も知らないが、漫画としてとても良い。痛みを伴う読後感。この作品が大ヒットだったと言うのだから、自分なんて神秘の縁にも立ててやしない。

    フランスの愛は深いなと思う。自分の一部を相手の中に預けてしまっている。意図的ではなくても、望んでいなくても。元の自分に戻ることはできない。それなのに一緒に生きることは出来ないのなら「老いる」しかないのだ。自分を失うのだから。

    傑作。

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    2024年10月06日
  • 愛人ラマン

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    映画を2〜3回観てから読んでみた。本の方が間に今現在の描写が何度も出てくるので、回想感が強い分ちょっとあっちこっち気が飛んでしまうかも。
    読んでも観てもお話のような運命の出会いだよなぁと思う。男はロリコンでもなさそうだし、むしろ15歳という歳に似合わず大人びている彼女に一目惚れしたんだろう。その男が大金持ちで彼女は家が貧乏で苦労している…なんて。なんてドラマみたいなの!交際?している間は淡々と付き合って深入りはしないようにしていたけれど、最後の客船での涙は愛していたから流れたのよねぇ。それでもあの当時もう2度と会えないかもしれない距離に帰ってしまったことは、彼女にとっては忘れられる、思い出にで

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    2020年08月20日
  • 愛人ラマン

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    映画よりも、小説のほうが中国人の愛人のことより、母親のことが書かれていると思った。母親の関心をひきたいから、愛人を作ったようにも見える。母親の愛は上の兄に注がれるだけ、主人公と下の兄は母を愛していたが、愛に飢えていた。母親は娘のことを殴ったりするけど、外を向いては子供たちを絶対に否定しない。そこには強い女、母親が見てとれる。一人で3人の子供たちを育てた強い母親。お金が必要だから、娘が金持ちの中国人の愛人になっても、見えないふりを続けた。否定も肯定もない分からない行動。娘自身も愛というものがどんなものなのか、体の関係と割りきっていたはずなのに、本国に還る船の中で、突然彼を愛していたのかもしれない

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    2014年11月19日
  • 愛人ラマン

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    母によって粗末に扱われたデュラスが、中国人男性とのマゾキスティックな性愛関係にアディクトすることで、必死にうちなる悲しみをのりこえようとする様が痛々しい。またそこに、植民地における支配-被支配の脈絡が、性愛化されて現れていく。この関係性の輻輳を破綻なくまとめあげるデュラスの力量が堪能できる一冊。

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    2012年05月31日
  • 愛人ラマン

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    はじめてデュラスを読む。
    映画の中のインドシナの退廃的な雰囲気が忘れられず原作をと。

    映画では2人の逢瀬に多くの時間が割かれていた記憶があるのだが原作での描写は家族と私,彼と私,自分の周りの女性と私,という3つ程度にカテゴライズされる印象を受けた。

    そのため最初は暴力的な家庭と悦楽の記憶が交互に立ち現れ,独白の羅列かのように見えるのだけれど,なぜか暴力ゆえにあれがさらに輝きを増していき,混濁が次第にエロスとタナトスの濁流を作り始める。私はその濁流にうっかり飲み込まれる(そうなることを望んでいたのだが)。メコンの流れを思い出す。あの土褐色の大河。

    原作に忠実に映画化したら相当前衛的だっただ

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    2011年11月15日
  • 愛人ラマン

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    大好きな小説です。フランス語分からないので原文がどうなってるのか分からないんだけど、とにかくアーティスティックな文体が大好きです。文がどんどん「、」でつながって行って最初は分かり辛いけどすごいパワーを感じる。翻訳本ってどうしても原文が透けて見えるようなものが多く、言葉としては元から日本の作家によって書かれたものには遠く及ばないものがほとんどだと思ってましたが、この本だけは凄いなー原文どうなってるんだろう?ってすごい好奇心を刺激されました。

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    2012年09月28日
  • 愛人ラマン

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    その頃のインドシナの情景も目に浮かぶようです。
    「シロップを焦がした匂いが部屋の中に漂ってくる、それから南京豆を炒る匂い、中国風スープの、焼き肉の、いろいろな薬草の、ジャスミン茶の、埃の、香料の、木炭の火の匂い、」と続いて行く匂いを描写したところなんて、まるで自分がそこに居るような奇聞になった。

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    2011年01月28日
  • 愛人 ラマン

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    映画を観たのは、随分昔の事。こんな物語だったのかと。フランスの植民地だった頃のベトナム。想像すら出来ない。こんな事が本当にあったのだろうか…。

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    2024年12月31日
  • 愛人ラマン

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    ネタバレ

    大好きな友達と、自分の人生で好きな本10冊あげようという会話をしている中であげていたので。
    あっという間に読んでしまいました。

    あの映像(イマージュ)…

    海、かたちのない、単純に比類のない海。

    男は女に言った、以前と同じように、自分はまだあなたを愛している、あなたを愛することをやめるなんて、けっして自分にはできないだろう、死ぬまであなたを愛するだろう。

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    2024年04月28日
  • 愛人ラマン

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    「十八歳で私は年老いた。」この一言が強烈に印象に残る。タイトルで手を出しにくい作品かもしれないが、是非一読を。

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    2022年11月26日
  • 愛人ラマン

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    文章が独特で、一人称から三人称になったり実験的な小説だったように思う。それでもデュラスの言葉は芳しく広がり、とても自由奔放のそのものだ。
    ストーリーを堪能するまえに、まずはデュラスの背景を知らなければならないように思う。自伝的小説による宿命だ。

    「十八歳でわたしは年老いた」嵐が過ぎ去ったあとのデュラスは何を見ただろう。
    中国の男性と白人の娘による決して官能的ではない、愛の物語。



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    2022年01月19日
  • 愛人ラマン

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    「仏領インドシナを舞台に15歳のときの、
    金持ちの中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。」(表紙裏より)

    映画は観ていないが、予告編の雰囲気に記憶があるので、
    エロティックで妖艶な恋の物語だろうと思っていた。

    ところがなんと哀しい可憐な少女の心。
    そして文章の美しさ。

    インドシナのメコン川デルタ地帯、靄と湿地とのけだるい空気。
    愛人との出会いの迫力、愛人と過ごす時間の濃密さ。
    そのひまに見え隠れする少女の家族。
    その家族の精神のあやうさ、すさまじさ。そして、貧しさの原因。

    文章が美しいと言ったが翻訳とて、言葉というより構成がいいのかもしれない。

    一人称、三人称と自在に変わり

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    2021年08月31日
  • 愛人 ラマン

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    ジャン=ジャック・アノー監督作の映画が抒情的だったが、デュラスはあまり好まなかったんだとか。
    その理由をあとがきで高浜さんが追及している。
    この漫画も映画のイメージから大きく離れることはないが、おそらく原作を咀嚼したものなのだろう。
    絵が、そして少女の顔つきが、素敵。
    「ニュクスの角灯」も読みたい漫画家。

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    2021年03月27日
  • 愛人ラマン

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    この作品は映画でセンセーショナルな反響があったと記憶していますが、こうやって原作を読むとこれは年寄り婆さんの遠い昔の思い出に耽った繰り言ですね。(笑)
    少女時代に彼ー愛人とひたすら性愛に溺れた日々の感傷に耽るみたいな感じですかね。

    ただ、マルグリット・デュラスの少女時代はかなり悲惨だったようで、当時生まれ住んでいたベトナムでは父が早くに亡くなり母が土地投資に失敗し、母や上の兄からはモラハラ紛いのことをされていたようです。
    なので家庭的な要請や自己逃避など複雑な背景があったように思いますが、金持ちのちょっと気弱な中国人男性に目をつけたのもある意味必然だったのかもしれないですね。
    15才のマルグ

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    2021年03月14日
  • 愛人ラマン

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    1984年ゴンクール賞受賞作品。
    1992年発行の文庫本が本棚に積まれてました…(;'∀')

    1929年のフランス領インドシナ。
    関係も家計も破綻した家庭の貧しいフランス人少女が
    華僑の中国人青年と愛人関係を持つようになる。
    しかし、人種差別的にはフランスが強く中国は
    弱い立場なので少女の家族を含んで非常に
    ゆがんだ関係が築かれる。

    日本では1992年に映画が公開されました。
    映画のちょっと妙な服装をした少女と
    イケメンだけどおどおどした中国の青年、
    よどんだメコン川がはっきりと思い出されます。

    友人と観に行きました。懐かしいなぁ。

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    2021年01月04日
  • 愛人ラマン

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    植民地時代の仏領インドシナ。
    貧困家庭の白人の娘と裕福な黄色人種の青年。
    そもそも始まりからして歪んでいて、
    それは愛として結実できる代物ではなく、
    熟んで倦んだ。
    昇華できない情欲の関係は
    娘の心と若さを削り取っていくしかなかった。
    とてもフランス的な自叙伝。

    私は好きだったけどね、
    こういう救いがないけど抜け出せないような
    どうしようもない話は。

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    2020年03月08日
  • 愛人ラマン

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    フランス領インドシナで生きるフランス人の主人公の、中国人青年との性愛を中心に描いた自伝的小説。
    植民地の中でフランス人としては最下層におり生活に困窮しているため、中国人青年と関係を持つのはある種生活のためであるという義務感と、どれだけ困窮しようとも自分は白人であり黄色人種の中国人青年とは違うのだという差別意識とが綯交ぜになって感情が複雑なまま、一つだけ確かなのはその青年との悦楽のみ。決して青年を愛してはいないと、自分に、彼に言い聞かせながら関係を持ち続けていた主人公が、はたと自分の本心に気づく瞬間のやるせなさにぐっときた。

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    2019年01月03日
  • 愛人ラマン

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    p.180「そしていまようやく、彼女はその愛を見出したのだった。

    ちょうどのちに、死を横切って、下の兄の永世を見出したように。」


    散文詩とでも言うのか、あざやかな言葉と影像の塊によって描かれた小説。インドシナの地で、貧困と憎しみで結び合わされた家族と、思春期の変わった少女と、中国の青年との出会い。
    植民地・肌の白い・人種の違い・プライドとコンプレックスといった感情と歴史的背景を完全に理解することはできなかったが、溢れ出るかの地の情緒とコラージュされた映像、とても印象的な小説だった。

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    2018年06月30日
  • 愛人ラマン

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    はじめて読んだときは、『太平洋の防波堤』のあの無力感に圧倒されて、ただ、さっと流してしまった。
    改めてもう一度読んでみて、デュラスがこれを書かずにはいれなかった情熱と、一方でその情熱を持て余してやりきれないでいる彼女の姿が見えた。
    時系列や場所、人物に一貫性はない。彼女の筆が進むまま、記憶の連想が進むままにただただ綴られていく。まるで思い出の活劇を眺めているみたい。その中で一本とおっている筋は、「わたし」という何者かがたしかに生きて考えているということ。時にその言動さえも揺らいでいるようにも見える。シナ人の愛人を持ったのはなにゆえか。金か愛か。そんなものでは決してない。ただ、彼女が生きている。

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    2016年06月12日
  • 愛人ラマン

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     フランス人がベトナム人を見る、あるいは中国人を見るという視点がわかる本である。現在ならば差別小説になってしまうであろう。

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    2012年11月25日