河上肇のレビュー一覧

  • 現代語訳 貧乏物語

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    恥ずかしながら、『貧乏物語』というタイトルから大正期の貧困のルポルタージュのようなものをイメージしていたが、全く違った。一般新聞読者に向けた経済学の啓蒙書。しかも経済学の原理と倫理にしぼり、当時の読者になじみがあったであろう儒学の名句なども織り込みながら、当時の西欧の経済状況とこれからの日本経済のあり方について、わかりやすく説いている。ドイツ革命およびロシア革命の直前に書かれた文で、ドイツやイギリスの総力戦体制を社会主義(「経済的な国家主義」)への先駆として評価しており興味深い。現代の視点からながめれば、つっこみどころはいろいろあるが、それを差し引いても論の展開がおもしろい。現代の貧困問題を考

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    2018年02月19日
  • 貧乏物語

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    現代と時代背景が異なるので少し想像しづらいが、これは物不足の時代における「貧乏物語」。大正以降の資本主義経済が生み出した社会的矛盾の原因と対策を述べる。

    限りある資源が富裕層の奢侈の為に費やされる。ゆえに貧困層に生活必需品が行き渡らない。そして貧困の追放のために資源は一般民衆の為に大量生産され、安価に供給されるべき。という持論が展開される。
    社会的な階級の差を現前化させて経済を語ることは、大正デモクラシー期に於いては社会主義や共産主義の活動に援用されたのだろう。しかしその後の日本にとっては国家社会主義や皇国思想、軍国主義を支えるひとつの柱ではなかっただろうか。

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    2014年06月07日
  • 現代語訳 貧乏物語

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     資本主義社会で当然に発生する、多数の貧困の原因に迫った良書。大正時代の新聞連載の貧困解明は現代語訳でさらに読み易い。
     著者の結論は、富裕層の贅沢禁止という良心に訴えかける施策をチョイスしている。国家の資本への介入による富の再分配でなく、江戸時代の倹約令を彷彿とさせる処方は却って目新しい。
     戦前とはいえ、著者がその後日本共産党へ入党するとは、本書上では信じ難い。外部(植民地)からの富の奪取については触れてもいないのだ。

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    2021年12月13日
  • 現代語訳 貧乏物語

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    河上肇 「 貧乏物語 」 佐藤優 (現代語訳 解説)

    貧乏を定義し、貧困対策を提言した本。佐藤優氏の解説が秀逸で 現在の貧困問題とリンクしやすい。貧困対策としては、マルクス主義同様「金持ちの贅沢禁止」など資本主義抑制の論調

    性善説であり 実効性としては 疑問だが、貧困の一面を理解する上では 良書。租税論に繋がる考え方もある。










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    2019年02月14日
  • 貧乏物語

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    「貧乏」問題を、経済学の知見や古今東西の典籍に基づいて検討するもの。富裕層の奢侈を廃止することが貧乏対策になると説いています。なにしろ大正5年の古典なので、その理論的妥当性は別途の検討に委ねるとして、早くもこの時代から格差問題に理論的に取り組もうとしていた点に感銘を受けました。

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    2016年10月17日
  • 現代語訳 貧乏物語

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    人間社会が抱える諸問題、特に経済に起因する問題解決に対するアプローチの仕方、考え方、このことについて、いくら時を経ようと、先人の英知を検証し、「知の継承」ということは重要なことであると思う。
    佐藤優氏のそのような考え方の下、発刊されたのが。河上肇氏の書いた「貧乏物語」の現代語訳版である。
    経済学者として10数年のキャリアで書かれた当該書籍、これはこれで、情報発信するものであり、当時の時代状況で発信された内容を佐藤氏が最後に論評を加えている。
    その中で、良質な小説等の紹介があり、早速、2冊を読みたいというカテゴリーにノミネートしておいた。
    読書は永遠です(笑)。

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    2016年09月09日
  • 貧乏物語

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    なぜ貧乏な人々がこれほど多いのか、またなぜ彼らは貧乏になったのか、そして彼らを救うための根本的な解決とはどんなものなのか。著者は以上の問題に対して、データを駆使しながら論述していく。加えて解題にあるように、著者河上肇にとって、本書を書き終えた時期は転換期で、具体的には東洋的マルサス主義から西欧マルクス主義へと転換した。しかし、それでも人道主義という立場は変わらなかった。

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    2025年04月20日
  • 貧乏物語

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    為替の影響でインバウンド需要が再び戻り、街には外国人が溢れている。高級店はまるで外国人のために値付けされ存在するようだ。一方で日本人は度重なる値上げに賃上げが追い付かず、格安店を賑わす。コロナ禍が終息し、活気を取り戻したが、金持ち外人と格安国民のこの構図は辛い。やがてくるトリクルダウンまでの我慢なのか、ネットで「岸田」と打てば「増税」の予測検索。社会政策の有効性が問われる。

    貧乏物語は、物語というくらいだから、小説だと思っていた。大正時代の経済学本だという。中身は、貧乏を生みだす社会的構造に対し、奢侈を廃止し社会政策を講ぜよ、というもの。投資は利益重視で行われるから、儲かるものに傾斜されるが

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    2023年07月23日
  • 現代語訳 貧乏物語

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    社会経済学入門のレポート課題のために読んだ。原文の難解な文章を読みやすく工夫して現代語訳されており、非常に読みやすかった。日本史でも登場した河上肇の初期の経済学的思想に触れることができたのも良かった。解説の章で述べられていた訳者である佐藤優氏の論評を完全には受け入れられなかったが、概して良書であると思う。

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    2023年04月16日
  • 現代語訳 貧乏物語

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    貧乏人とは
    1・他の誰かよりも貧乏な人
    2・生活保護などの公的扶助を受けている人
    3・身体を自然に発達させ維持するのに必要なものだけをギリギリまかなえる(貧乏線上にいる)もしくはそれすらも十分に得られない人(貧乏線以下の人)

    〜なぜ多数の人が貧乏しているか
    生活必需品の生産量が足りないから。
    ┗ 一部の富裕層と多数の貧乏人が存在する。富裕層は米や下駄を買ってもまだお金が余っており、贅沢品を求める。これは「購買力を伴った需要」であるため、購買力の低い貧乏人の需要(生活必需品が欲しいという需要)は追いやられ、贅沢品が供給され、儲けにならない生活必需品の供給は欠乏する。
    ┗貧乏な人は生活必需品を購

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    2016年09月09日