菅野昭正のレビュー一覧
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萩原朔太郎を中心にして、北原白秋、三好達治、伊東静雄、西脇順三郎といった近代日本の詩人たちにかんする論考を収録しています。
白秋は、外界の対象を「見る」ことと、その奥にひそむ実相を「観る」ことを区別していました。著者は、ものの実相にせまることで内面の喜びも深められることを示した白秋の詩のゆたかさを認めつつも、ことばを乱用するきらいのある彼が、通りすぎていく情緒をただ受けとめるだけに終わり、朔太郎のようにそれを執拗に彫り込んでいくことはなかったと評しています。
こうして著者は、本書の中核となる萩原朔太郎論に移り、「愛憐詩篇」「浄罪詩篇」『月に吠える』『青猫』『氷島』とつづく彼があゆんだ道を順 -
Posted by ブクログ
20年以上前だったと思うが、池澤夏樹さんが書評で激賞していた記憶がある。いつか読んでみようと忘れずにいたんだから、我ながら呆れる。
プールサイドで友人を待つうちに見かけた初老の女性の仕草。そこからアニュスと名付けた女性、そしてその夫、妹、娘たちの物語が始まる。つけられた名前は記号にしか過ぎず、神の目線を感じるばかりなのが、やがて血肉を伴ってくるような印象。著者や友人アヴェナリウスが邂逅する場面などドキリとする。
小説の前半はゲーテと、彼に付き纏い死後の名声を望む女性ベッティーナとの話にかなりのページが割かれる。批評のようであり、ゴッシップのようであるのは著者らしいと云えるのか。
後半に唐突な