菅野昭正のレビュー一覧

  • 不滅

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    『存在の耐えられない軽さ』もそうだけど、男女の物語と哲学的なメタテキストが混然一体となって踊るような構成で、細部の言葉遣いを味わいつつも引っ掛からずに読める滑らかな文章で綴られている。その読書感覚は独特で、クンデラ以外では読んだことがない。現実世界と小説の境界を溶かそうとして敢え無く現実世界に呑み込まれてしまうような切なさを感じる。

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    2025年01月08日
  • 不滅

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    まさに自由奔放
    時間は真っ直ぐ進まなく、現実/虚構の区別も曖昧。
    けれども、それぞれの「エピソード」が、複数の主題と結びついていき、壮大な人生の小説となる。

    ■「不滅」「顔」「イメージ」
    2020年代現在、当時よりもより一層、(一般市民の)私たちにとって身近に潜むテーマなのではないか。
    私たちは片手一つに収まる電脳世界の中で、ほぼ四六時中イメージの生成に勤しんでいるし、さらにそれを不滅の世界にいとも簡単に残せてしまう。
    そして、あまりにも多い顔たち……。

    ■アニュスが意図もせず、死によって他者の中にあるイメージを強く刺戟したことを考えると、
    きっと私たちは不滅にならざるを得ないのだと思う。

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    2023年03月29日
  • 不滅

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    「生きること、生きることには何の幸福もない。しかし、存在すること、存在することは幸福である/人生において耐えられないのは、存在することではなく、自分の自我であることなのだ」ポールとアニェスの関係をゲーテとベッティーナとの対位法的に描きながら次第に既存の物語の手法から逸脱させていく本作だが、それは歴史の非合理さと合わせ鏡となることで不条理な生を浮かび上がらせている。絶望はしても決してその感情には醉わない―そんな場所から書かれた言葉は自分が自分であることの困難さを抱えた者たちにとても深く、重く突き刺さるのだ。

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    2014年09月14日
  • 不滅

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    学生の頃に一回読んでるはずの本。そのときは、これが小説なんだ、と新鮮な驚きを感じたのを読み返しながら思い出した。学生時代はクンデラやマルケスや色々読んでいて、小説って色々あるんだなあ、と驚いていたと思う。
    最近になり、仕事や勉強の本ばかり読んでいてもよくないような、もっというと精神的な休憩が必要な気がし始め、小説を読み返したりしている。いいもんだね。自分の土壌に肥やしと水が注がれるようで。

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    2012年02月12日
  • 不滅

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    クンデラが、これこそ「存在の耐えられない軽さ」だと
    作中で述べる作品、不滅。

    吾が親愛なるゲーテ先生が語る。

    時系列があいまい。出来事がいろんなところで交差する。
    その絶妙さ。そして不滅の存在について。自我について。

    存在は幸なり。自我こそ苦なり。

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    2009年10月04日
  • 不滅

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    クンデラは、女性のキャラクター描写が上手いなぁ。女をよく見てると思う。今回は、勿論アニエスに共感すること多数。なんかもぅ、本当にアイロニック。

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    2009年10月04日
  • 不滅

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    あるひとつの仕草を発端に作者の中に生まれでた、虚構の人物のはずの「アニェス」が、読み進めているうちにどんどん「存在」してくる様はまるで魔法のようで、いつのまにか「不滅」の世界に呑まれている自分に気付きます。
    「存在の耐えられない軽さ」よりも好きな本です。

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    2009年10月04日
  • 不滅

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    クンデラの小説で一番好きなのがコレ。話を一言では言えないけど、エピソードに頼らない小説の力を見たような気がしました。

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    2009年10月04日
  • 不滅

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    長い。プールサイドで見た老女のひと仕草だけからよくもこんなにつらつらと描けたものだ。不滅とか顔とか、存在論的な単語がモリモリ。

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    2025年05月05日
  • 九鬼周造随筆集

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    文人哲学者、九鬼周造の随筆集。どのエッセイも何か余韻を感じて、しみじみとしてしまう。九鬼周造を身近に感じ、かつ、彼の内面がどのような哲学的思考と連結しているのか思いを馳せた。

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    2025年04月30日
  • 不滅

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    5章以降、私のことかと思った
    文章の連なりから受け取る感覚も、鋭い洞察も特別あるわけではないが、形式が持つ何かを感じた

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    2025年01月13日
  • 不滅

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    とりあえず一読。

    安易に整理をつけようとすると、作者から嗤われそう。
    もう何周か読んできちんと書きたい。

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    2023年11月28日
  • 不滅

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    ネタバレ

    最初のうちは面白く読んでいて、付箋なんかもつけたりしたのだけれど、半分も読み進まないうちに何を読まされているのかわからなくなる。
    今は誰の話を、なんの話を、いつの話を読んでいるのか?
    物語の大半は理解できないうちに零れ落ちてしまったけれど、なんとか少しでも掬い取れたらいいのだが。

    ふと見かけた見知らぬ女性の、軽やかにひるがえる手の動きを見て心を惹かれた私は、その女性にアニェスと名付けて、彼女の家族とその関係性について思いを馳せる(妄想する)。

    アニェスの母は、家族や友人たちに囲まれて生きることに喜びを感じる人だったが、アニェスの父や彼女は、人と離れて生きることに安心を覚えるタイプだった。

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    2022年12月13日
  • 村上春樹の読みかた

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    ある程度の数読んだから、手に取ってみた

    こういう「外から」見た意見を読むのは本人のエッセイ以外初めてだったので、共感するとこもあれば目から鱗のこと、何それ?って思うことがあったりして面白かった

    こんな深い読み方できるようになりたい

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    2021年10月08日
  • 不滅

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    今までの小説とは異なり、著名な芸術家の部分的なストーリーである。ゲーテ、ブリューゲル、モーツァルトなどヨーロッパの芸術家が軒並み登場する。チェコの情勢は殆ど書かれない。
     芸術家の人となりを簡単に知るにはいい本であろう。

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    2021年09月07日
  • 不滅

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    ネタバレ

    作中で、作者はエピソード(エピゾード)のとるにたらなさを語っている。だけれど、本作で伝えられているのはそのエピソードの威力にほかならない。私たちの存在を支え、他者に印象を与え、思い出させるのはエピソードであって、私たち個人そのものではない。

    キャラクターの魅力でいうと、ファザコン極めたアニェスの高潔さが好きだし、ヒステリックで自己愛が過ぎる(でも、自分に自信がない)ローラの身勝手さには苛々する。ポールの空しい若さ崇拝や半分意識的な無神経さにも。

    でも、最後にアニェスの仕草でポールをつなぎ止めるローラや、その仕草を嬉しがるポールには、スカッとするような可哀相になるような、不思議な気持ちがした

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    2018年05月28日
  • 不滅

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    人々がまるで戦場で死ぬように車で死んでいるけれど、しかし現代人の誇りである自動車を禁止するわけにもゆくまい。惨事のかなりのパーセンテージは、無謀な運転手の酩酊に責任を帰するべきだけど、しかしフランスの遠い昔からの栄光である葡萄酒を禁止するわけにはゆくまい。公共の場所での酩酊の一部はビールによるものだけれど、しかしビールも禁止するわけにはゆくまい、というのは市場の自由に関する国際条約の違反になるだろうから。

    ↑この皮肉めいた冷静な言い回しがとてもいい。


    自我の単一性を開発するには二つの方法がある、足し算的方法と引き算的方法である。

    嘘をつくな、真実を言え、はある人間が他の人間を対等とみな

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    2015年01月08日
  • 村上春樹の読みかた

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     東京の世田谷文学館で昨年の秋に開催された連続講座の記録。5人の論者が村上春樹について語っている。そのうち、藤井省三と加藤典洋の二人が村上春樹と中国の関係に言及している。村上春樹は9月26日、尖閣諸島をめぐる問題について朝日新聞にコメントを寄せたばかりということもあって、いろいろ考えさせられた。
     藤井は、中国での村上春樹の受容のされ方について論じており、村上春樹は、中国絡みの作品に限って何度も書き換えを行っているという重要な指摘をしている。さらに、十数年前に台湾の新聞社のインタビューで「僕は神戸の人間で、中国人は僕にとってはたいへん自然なものでした。僕の父は戦争中に徴兵されて中国大陸に行きま

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    2012年10月18日
  • 不滅

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    ネタバレ

    【概要・粗筋】
    「私」がプールサイドで友人を待っているときに見かけた初老夫人の魅力的な仕草から生まれた主人公アニュス。彼女の愛と悲しみと戦いの人生を描く物語(粗筋を書けるほど理解できていない・・・)。


    【感想】
    非常に難解な小説。断片的に理解はできるものの、一読しただけでは大まかにも把握はできなかった。それでも、語りの巧妙さから600ページものの長さを感じないほどどんどん読み進めてしまうほど不思議な魅力を持っている。

    この小説の主要人物はアニュスを中心とするその家族たちなのだが、そこにゲーテやヘミングウェイ、実在の人物なのか架空の人物なのかわからないアヴェナリウス教授、ルーベンス

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    2011年06月19日
  • 不滅

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    うまくいえないですが、この人の小説に、シンクロする瞬間があります。それがなんとも心地よくて読んでしまう。文化も歴史も違う国の人なのに、それを感じつつも同化する瞬間。いろんなシーンが交差しながら、最後はしゅっとさりげなくまとまるあたり、心地よく読みました。

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    2010年03月12日