和辻哲郎のレビュー一覧
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大昔教科書で少し読んだ記憶があるが初めて通読。今更ながら哲学者和辻の観察、考察、審美眼がものすごい。インド人アラビア人エジプト人はもとよりギリシャ人ローマ人中国人そして日本人の考察には舌を巻く。
沙漠(砂漠ではない)的人間は他の多くの人間を教育した...その特性ゆえに他の人間よりも深く人間を自覚したからである。南欧の明朗と西欧の陰欝を含む楽土的な牧場的風土により西洋人にとって自然は単調で征服する対象であり、合理性、理性の精神を育んだ。風土による中国人の無感動性、無政府的な性格は中国民衆を最大の不幸にまで追い込んでいった。中国の文化復興は世界の新しい進展にとって絶対必要であると和辻は言う。
台風 -
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古寺巡礼
著:和辻 哲郎
紙版
岩波文庫 青144-1
大正7年著者が、友人と奈良付近の寺々をめぐった印象記とある
ギリシャ⇒インド⇒西域⇒中国⇒日本 を貫く、美術、技法の伝達
仏像をみてなまめかしい感触をもつなど、結構官能的、学術的にはちょっとはずしているのでは
天武帝や光明皇后などの逸話、万葉集と恋歌、そして、仏像とその作者への思い、など、和辻が案内する奈良の原風景は、時代を超えて日本という国が明確に成立した時代、白鳳時代へといざなってくれる
仏像、菩薩、まさに日本の至宝
東大寺三月堂本尊不空羂索観音
聖林寺十一面観音
法隆寺百済観音
法華寺十一面観音
薬師寺金堂本尊薬師如来
薬 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著名な哲学者、和辻哲郎さんの著作『風土』。 元々地理に興味のある私からすると、かなり難解ではあるものの、地理、世界史の広い分野における、知識と観点、様々な示唆と課題を与えて頂くことができた、今回の読書であったと思います。
私の主観ですが、1900年代前半に世に現れた本書は、日本語としては、現代のそれと
甚だかけ離れてはおらず、その点に関しては読みやすかったです。しかし、和辻さんの天才的、詩人的感性から生まれ来る洗練された言葉の一つ一つは、長く連なることで、非常に難解な壁となって眼前に迫ってくるように感じました。
しかしながら、その点を踏まえても、この本が、長い年月を経ても尚、岩波文庫の書物 -
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[ところの視点]人間は特殊な「風土的過去」を背負っていると主張し、モンスーン地帯、砂漠、牧場の三形態を基に、その影響を考察した一冊。優れた直感に基づいた諸文化との比較から、今日においても読み継がれる日本文化論の代表的作品です(初版の刊行は1931年)。著者は、『古寺巡礼』でも知られる和辻哲郎。
解説で述べられているとおり、数々の観点からの批判が可能な作品ではあるのですが、その着眼点の新鮮さ、そしてすっと胸に落ちてくる説得力は今日的魅力を多分に有しているかと。抽象的故に理解が難しい箇所が散見されたのですが、上記の風土の三形態をシンプルに読み比べるだけでも、本書の主要なエッセンスは十分に吸収で -
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情報を読む力 学問する心などリファレンス多数。「寒さ」「冷たさ」などの言葉に人が反応する感覚は、単に気温が低いというのもあれば、風が強い、乾燥している、雪が冷たいなどそれぞれが在り得るわけで。
その他にも「神」や「芸術」など、こうした言葉と感覚のもつギャップを、主にシルクロードを遡る形で拾い集めていく本書を通じて著者が浮き彫りにしたかったのは、日本の四季が、我々にもたらすものが如何に多様かという点ではないだろうか。
発刊と同時に批判があったという点も、一般化という観点から言えば頷ける部分も多いにあるが、それは本書を単なるフィールドワークと履き違えているが故であろう。
本書が指すのは、文化