実は読んでなかったが、内容を何となく知っているために読んだつもりになっていた本。
巻頭、フッサールやハイデガーを踏まえた現象学的な記述で始まり、意外と哲学的な本だったか、と思ったものの、そのあとは文化論。
後半のほうに出てくる「うち」「そと」の区分と、「家」を中心とした日本文化の特色を論じた部分が面
...続きを読む白い。このへんはその後の大量の「日本人論」の嚆矢だろう。
確かに小集団を「家族」的なものと見なす雰囲気が日本には強い。「学級」から、会社もお役所もそうだ。そういえばこの構造は、『フィロソフィア・ヤポニカ』の中沢新一=田邊元的な「種の論理」に該当するものではないだろうか。良い悪いは別として、アメリカ人などとは明らかに違う文化傾向だ。
この本には各国文化の芸術を論じた箇所があるが、ベルクソンのへっぽこ芸術観などとは違って、なかなかに適切な批評になっていると思う。
戦前に書かれたということを考えると、やはりこれは「名著」と呼ぶべきものだろう。