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風土とは単なる自然環境ではなくして、人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。こうした観点から著者はモンスーン・沙漠・牧場という風土の三類型を設定し、日本をはじめ世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした。今日なお論議をよんでやまぬ比較文化論の一大労作である。 (解説 井上光貞)
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Posted by ブクログ
大昔教科書で少し読んだ記憶があるが初めて通読。今更ながら哲学者和辻の観察、考察、審美眼がものすごい。インド人アラビア人エジプト人はもとよりギリシャ人ローマ人中国人そして日本人の考察には舌を巻く。 沙漠(砂漠ではない)的人間は他の多くの人間を教育した...その特性ゆえに他の人間よりも深く人間を自覚した...続きを読むからである。南欧の明朗と西欧の陰欝を含む楽土的な牧場的風土により西洋人にとって自然は単調で征服する対象であり、合理性、理性の精神を育んだ。風土による中国人の無感動性、無政府的な性格は中国民衆を最大の不幸にまで追い込んでいった。中国の文化復興は世界の新しい進展にとって絶対必要であると和辻は言う。 台風大雪をはじめとする過酷かつ豊穣な自然環境への忍従性そして桜の花に象徴される日本人の気質は熱しやすく冷めやすく、しめやかな激情と戦闘的恬淡を育んだ。また、日本人には「家」があるが西洋人にはただ個人と社会がある。日本人には社会への関心、繋がりが弱く、政治への関心も低い。日本人の重要な「間柄」が「家」であるが、それを拡大し国家を天皇を宗家とする大家族とすることには無理があるとしている。後年太平洋戦争で多くの悲劇がそこから生まれた事実は重い。日本においては「家」の精神的構造によっても、公共的なるものへの無関心を伴った忍従が発達し、欧米においては公共的なるものへの強い関心関与とともに自己の主張の尊重が発達した、デモクラシーは後者において真に可能となるという。最終的にはヨーロッパ人と日本人との比較に当たり前に力点が置かれている。 論陣は芸術的比較論にも及ぶ。ギリシャ~現代ヨーロッパ芸術の特徴を合理的規則性とし、東洋の芸術の「まとめ方」はそうではない。ヨーロッパ人工庭園と日本の自然庭園が象徴するように。 最終章はヘルデルからカントヘーゲルマルクスら観念論哲学者における風土哲学の解釈、変遷についての考察。 もとより本書は比較文明論であり「人間の存在の仕方」について述べられた哲学書でもある。自分とは、我々とは、かの国の人々とは何者か。自己と他との違いを理解してはじめて自身を自覚する、特に自身の優越性を自覚するわけであるから。またそれは風土的歴史的に限定されていると和辻は言う。己の性格を認識することはその限界を超えて進む道をも悟る、また己と異なる性格を理解し他の長を取って己の短を補う道をも開く。日本人の政治的無関心、公共への無関心は大変な問題であると思うが、その構造を理解しなければ矯正のしようもない。折々、己の文化的側面の来し方を振り返ることは重要であろう。 読後感としては、これらの思索において日本人的精神に対する著者の深い愛情と誇りが感じられ、的確な考察に古さは全く感じない。ただ、世界との距離が急激になくなってきた今後の社会において風土性の重要性や価値がどう変化していくかが非常に興味深いテーマではある。
風土と人間的素性の関係がよくわかる。風土が違うのだから違って当然でそこに優劣がないという西洋中心主義に対する批判が見える。旅行でその土地の風土と人の関係性を感じたいと思った。
[ところの視点]人間は特殊な「風土的過去」を背負っていると主張し、モンスーン地帯、砂漠、牧場の三形態を基に、その影響を考察した一冊。優れた直感に基づいた諸文化との比較から、今日においても読み継がれる日本文化論の代表的作品です(初版の刊行は1931年)。著者は、『古寺巡礼』でも知られる和辻哲郎。 ...続きを読む解説で述べられているとおり、数々の観点からの批判が可能な作品ではあるのですが、その着眼点の新鮮さ、そしてすっと胸に落ちてくる説得力は今日的魅力を多分に有しているかと。抽象的故に理解が難しい箇所が散見されたのですが、上記の風土の三形態をシンプルに読み比べるだけでも、本書の主要なエッセンスは十分に吸収できるのではないかと思います。 和辻氏の世界観として、「いくつかの小世界が存在する」という根底が存在していることが本作からは読み取れます(風土を「比較」するという点においてそうなることは必然でもあるように思えますが......)。その小世界の区切り方として世界の風土をどのように和辻氏が切り取ったか、また切り取っていないかを知ることができるのも本書の魅力の一つだと感じました。 〜人間が己れの存在の深い根を自覚してそれを客体的に表現するとき、その仕方はただに歴史的のみならず風土的に限定されている。〜 考えるヒントを与えてくれる良作☆5つ
社会や文化を学ぶなら一度は通る本! モンスーンがある、雨が多いなど風土の特色が社会文化の基本になっているという論について書かれています。 全てが正しい論理ではないと言われていますが、それでも考え方としては面白いですし、全く見当違いではないはずです。 うさぎや自治医大店 田崎
情報を読む力 学問する心などリファレンス多数。「寒さ」「冷たさ」などの言葉に人が反応する感覚は、単に気温が低いというのもあれば、風が強い、乾燥している、雪が冷たいなどそれぞれが在り得るわけで。 その他にも「神」や「芸術」など、こうした言葉と感覚のもつギャップを、主にシルクロードを遡る形で拾い集めて...続きを読むいく本書を通じて著者が浮き彫りにしたかったのは、日本の四季が、我々にもたらすものが如何に多様かという点ではないだろうか。 発刊と同時に批判があったという点も、一般化という観点から言えば頷ける部分も多いにあるが、それは本書を単なるフィールドワークと履き違えているが故であろう。 本書が指すのは、文化風俗の形成プロセスに対する仮説という、科学的アプローチと言える。
読解するのに、結構時間がかかった。 しかし、いろいろ疑問に思っていることがある程度氷解した。 また、もう少し時間を空けてから再読したい書籍。
書かれた時代を念頭に置く必要があるが当時の日本文化の独自性や日本人(民族?)のものの考え方の根底に流れるところを解き明かそうとするもの。グローバル化が進む現代においては、異文化の尊重と自分の文化の認識が、必要である。戦前に書かれたこの本であるが、このメッセージを読みとった。
もう少しわかりやすく書ける筈だと思う。九鬼周造などのがわかりやすい。やはりモンスーン・砂漠・牧場と分けたコンセプトが秀逸で、それ以外はどうなのか。中国論や日本論は時代を感じさせる。一部は極論と思うし、稲作を指摘しないのも確かに片手落ちではないか。
民俗学を勉強し始めて、地理に関する考察も必要とわかってきたところに読んだのが本書。 風土や地理によって歴史を見る、文化の発展を考察する。 自分は民俗学の勉強を深めるために読んだが、どちらかというと比較文化の方が近い。あと哲学的要素も多く、文体も哲学っぽい。認識論とか形而上学とか…。 ○自分の住む世...続きを読む界がどういうところなのかという認識は、他の地域・世界を旅してこそ認識できる。→たくさん旅をして最後に故郷に戻り故郷と感じた坂口安吾と通じるものを感じた。 ○それぞれの民族部族は、そこに生きる土地、風土でその性格が規定せられる。生き方、文明、文化の生まれる素地もどのような風土で生きているかで決まる。 →私自身としては、部族とか民族とかそういうものに自分が所属しているような認識はないけれども、個人としても集団としても、そこに生まれた土地に縛られるということは今も変わらないと思う。例えば田舎か都会か、など。 ○ 風土がその民族の性格を決定するという基礎に基づいているが、ちがう性格の民族から良いところを学び自らに取り入れることはできる。しかし住む土地は変わらない。 性格とは何か。生きるためにどう自然と付き合うか或いは克服・征服するか。寒さをしのぐであるとか、食べ物を求めて遊牧し他国を征服するとか。風土に応じた自然の克服の仕方を通して文明や芸術がうまれる。 ○うちとそと 家内とか宅という家と家の外=世間とを分けるのは日本の特徴。家の作りも襖で仕切るのみ。うちとそとの分け方では個人の区別は消滅する。(ヨーロッパは自室に鍵をかけるが家自体の出入りは開放的なので個人という区切りの次は家ではなくもっと開かれた地域) →外に対しては必ず戸締りをする…と述べているが田舎だと戸締りしないし近所の人も敷地内には気軽に入ってくる話を聞く。戸締りをしない村落は村の中での区別が消滅する単位になるということか?と解釈してみる。 ○日本人の性格を表す言葉としてしめやかな激情。と表現している。 →特攻をした兵士、天皇万歳で自殺した人、国歌斉唱を拒んで自殺した人、切腹した武士それぞれに通じるものなのかと読んでいて感じた。 ○これも日本人の特徴として、社会のことは自分のことではないのである。公共的なるものをよそものとして感じている。 →日本人の政治への関わり方としてなるほどと思った。けして満足してはいないが投票率は高くない。外国で見られるような大規模なデモは起こりにくい。 ○人間だけではなく、大地も生である。地球は絶えず変化し、大地が変わればそれは人の生活にも影響する。 後半では筆致がダイナミックというか人の感情に訴えかける書き方で印象に残る。 結び…民俗学で地理風土の重要性はよく認識できた。文化の規定についてはそれは飛躍してないか?って思ったところもいくつかはあった。
風土が人間にどんな影響を与えるかを考察した本。実際感覚的にはなんとなく当たってると今でも思うところがある。
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風土-人間学的考察
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和辻哲郎
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