和辻哲郎のレビュー一覧
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「…さらにまたこの種の政治家によって統制される社会が、その経済的の病弊のために刻々として危機に近づいていくのを見ても、それは「家の外」のことであり、また何人かがおそらく責めを負うであろうこととして、それに対する明白な態度決定をさえも示さぬ。すなわち社会のことは自分のことではないのである」
第1章からいきなりむずかしくてつまづきそうになるが、第2章までいけば個別具体的な議論になってわかりやすい。有名なモンスーン・沙漠・牧場の3類型などはなるほどと思わせる(現代の水準でどの程度の妥当性があるかは疑問だが)。
日本人の政治に対する無関心についての箇所(3章の最後)は、ごく短い記述ながら現代に日本にお -
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「芸術の風土的性格」の章が印象深かったのでまとめる。
日本人≒ギリシャ人⇔ローマ人 という構造
ギリシャ人→舞台背景に自然の景色を使う。自然や風景への愛。これは自然のまま放っておいても美しい。
ローマ人→風景の美を顧みず、人工的なもののうちに享楽する。人工によって自然を支配する。
日本人→人口は自然を看護することで、却って自然を内から従わせることができる。人には、季節の移り変わりに従い、調和を保つ役割がある。庭園には注意・手入れが必要。苔や石などの間には「気」が合っている。
日本のことが出てきて身近に感じられるようになってからは読みやすかったが、冒頭部分は読みにくく、時間がかかってしま -
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親鸞や法然についての本は多いと思う。悪人正機説なんてツッコミドコロ満載だし。鎌倉仏教の影響については、日蓮に関する言及は多かった。あの絵巻がらみで一遍上人の念仏宗について読んだこともある。だけど、道元については何か読んだことが無い。禅は釈迦の教えに一番近いという。和辻哲郎の風土は学生時分に読んだ。そんな訳で手に取る。
仏性をアートマンとする解釈を排したとあり、自分の勘違いを知る。悉有は絶対的な有。それは無の別名と言われたら、判ったような、判らないような。更に空なんて言われたら、もう無理。
少数の弟子と山の籠り、仏祖に従う。純粋な宗教のありかた。壮麗な宗教施設や宗教美術を否定する。本来の宗教 -
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大正7年の書。面白いのは、ただ古い寺のことを書いているだけではなくて、ガンダーラ美術やギリシア美術との関わりについてや、天平・平安の時代の日本の様子についてなど、そこから派生する様々な事柄を関連させて、とりとめもなくどんどん話題が広がっていくところだった。
だから、最初は寺のことを契機として書き始めていながらも、その話しがどうい展開をみせるか、まったく予想がつかない。筆者自身が、奈良をまわっている途中に出会った人のことや、宿や食事のことなど、雑談的なトピックも、他の話しとまったく同列に綴っている。
この本がいいのは、教科書的な解説ではなく、著者本人の純粋な驚きや熱気をそのまま書き残していると