三川基好のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
冒頭で、殺人事件を考えることについて、つまりこの小説の書き方について語られる。
「殺人事件のニュースや小説を読む時、殺人事件の調査をする時、人々は殺人が起きたところから考え始める。しかし殺人は結果なのだ。因果関係はその以前から始まっている。あの目撃者がそこにいたのはなぜ?あの証人が嘘をついたのはどんな感情で?殺人事件に至るまでには、計画があり、多くの偶然により思いもかけない形が作られ、関係者となった人たち性質が影響して、殺人という”ゼロ時間”に集束するのだ。」
物語の前半は、ある年の月に海辺の町ガルズポイントに集まることになった人々の事情、それまでにした経験が語られる。
スコットランド -
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クリスティ自身が自作ベストテンに入れたことが肯ける作品。
普通の推理小説は“事件”から始まるが、この小説は“事件”に向かって話が進んでいく。
それを思いつくクリスティの発想の豊かさもさることながら、伏線の回収の仕方など、その見事さに唸るばかりで、読み終わったときは「お見事!」と思わず快哉を叫びそうになりました。
・・・ところで、メインキャラクターであるオードリー・ストレンジについて、目が離れていることが描かれているのだけど、これは何か意味があるのかしら?当時(1944年以前)の人相学などの影響か、単におっとりした印象を与える顔だと書きたかったのか? そこだけ不思議に思いました。 -
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1944年の作品。
バトル警視が活躍するサイコスリラーサスペンス。
あらすじ
有名なテニスプレーヤーのネビル・ストレンジは、再婚したばかりの美しい妻、ケイ・ストレンジと夏の休暇を養母のトレシリアン夫人の屋敷、ガルズポイントで過ごすことにした。だが、ネビルは別れた妻のオードリーストレンジも同じ時期に招待し、元妻と現妻に仲良くなってほしいと提案する。
さらにケイ・ストレンジに想いを寄せるテッド・ラティマー、オードリーストレンジの幼なじみで、オードリーに結婚の申し込みをしようと決意しているトマス・ロイドも屋敷にはやってきて、ガルズポイントには居心地の悪い不穏な空気が流れていた。
そんな中、トレシリ -
Posted by ブクログ
文句無しに面白かったです。
俗に、ノンシリーズと言われる本作。事件の解決は、ポアロのような名探偵ではなくバトル警視。解説によると、このバトル警視の登場自体は5作目。彼は、それまで地味な扱いだったのが、本作で華開いたとのこと。
作中で、バトル警視がポアロの名前をあげて、意識的に違和感を嗅ぎ取って推理し、活路を見出すのがいいですね。ポアロの人柄や推理の仕方が出てくるので、一冊はポアロの登場する本を読んでおいた方がいいでしょう。自分は、一作目『スタイルズ荘の怪事件』を読んでいたのでイメージできました。
物語は、老弁護士が推理小説を読むときの持論を語り出し、「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以 -
購入済み
ナニか物足りない
やたらと散りばめられた多数の伏線が
見事に回収されて、すごいなと思う。
ゼロ時間に向かって物語が進んでいくのも斬新だなと思う。
その一方で、後だし感が強いなとも感じた。 -
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【ノンシリーズ】
ポアロじゃない「ノンシリーズ長編」。
全ての伏線が最後に一気に回収される。
繋がりがないように思えたエピソードも全て
関係している。
偶然に起きる殺人なんてものはなく、たくさんの要素が絡まった時に殺人は起きてしまう。人間の心理を描いたクリスティーらしい作品。
今回も犯人を当てられなかった。
犯人がわかってからもう一度読み返すと、犯人の心理的な怖さをもっと感じられる。
バトル警視は、ポアロのような灰色の脳細胞を持つ天才タイプとは違って、良いお父さんであり人間味がある。作中でポアロの話も出てきてニヤリとしてしまう。
最初のエピソードが最後になって意味を持ってくる。そこに -
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ネタバレひとりごと
アガサ•クリスティーさんの作品を初めて読みました。登場人物が多くて(最初名前も覚えるのが難しい)慣れるまで登場人物、役職を見返しました。
本作は自殺しそこねた男から始まり、それぞれが1つの屋敷に集まって何やら起こりそうな雰囲気が漂う中、殺人事件が起こるー。
ゼロ時間の種明かしをされた時、サイコパスの人は1つの事柄だけでここまで用意周到に準備をし実行するんだと思うと怖くなりました
憎い人を簡単に殺めるのではなく徐々に追い詰めてそして思いつく1番の苦しい方法で消えてほしい
その為に、犠牲者が何人いても構わない犠牲者はただの演出という考えが恐ろしいです
ただ普通の人達が理解できな -
Posted by ブクログ
ネタバレ海の見える館ガルズポイントで行われた殺人。被害者の遺産はネヴィル・ストレンジとその妻に相続されることになっていたが、奇しくもその日館には、現在の妻ケイと前妻のオードリーが顔を揃えていた。時を同じくして、ガルズポイントに客として訪れていた高齢の弁護士が死亡する。心臓を患っていた彼は、何者かがエレベーターを故障中と偽装して階段を歩かせたことが原因で死亡したと見られる。
バトル警視は、不自然なほど揃い過ぎた証拠を検証しながら、甥で同じく警察官のジェイムズとともに犯人を追い詰めて行く。
登場人物の過去や心情を丁寧に描きながら、動機やアリバイを重視したクリスティらしい作品。
クリスティの作品は高齢の人物 -
Posted by ブクログ
ネタバレ殺人事件は始まりではなくて、物語の結末、つまりゼロ時間。
館の老婦人が殺された。証拠が出揃い、犯人は明らかかと思われたがバトル警視には引っかかることがあった。スポーツマンと離婚した元妻と現在の妻、友人、親戚、使用人たち。人間関係を追った後に明らかになった真相とは——。
クリスティーはナイルでもそうなのだが、殺人事件が起こるまでのストーリーが読ませる。作中でバトル警視も述べているように、多くの殺人事件を描いた物語は、まず殺人事件が起きてそこに探偵がやってきて、と始まる。しかし本来、誰かが人を殺すには、そこまでに至る物語がある。
クリスティー作品は登場人物が多くてもその一人ひとりの顔がしっか -
Posted by ブクログ
「殺人は結果であり、物語ははるか以前から始まっている」当然と言えば当然だが、殺人が起こるまでを切り取るのは面白い。僕はクリスティがほとんどのトリックや構成を彼女の時代に生み出したと思っているが、今回も秀逸だ。
バルト刑事シリーズもクリスティの中では有名だが、改めて読むと彼の人間性(無骨だが力強く優しさがある)に惹きつけられる。彼の娘の事件は確かに頭の悪い女教師の暴走だが、それに対してのリアクションがバトル刑事の魅力を思い出させてくれた。
章が変わり、登場人物達の紹介が行われ、彼らは物語の舞台ソルトクリークに終結する。どの人物達も一癖も二癖めありそうな連中ばかり。これからどのように経過が進み