西谷修のレビュー一覧

  • 戦争とは何だろうか

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    さすがちくまプリマー新書。
    わかりやすく戦争そのものに関する概観を捉えることができた。
    ちくまプリマー新書や岩波ジュニア新書などはこれから本格的に読んでいきたい本の導入としてとても良い。

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    2026年08月11日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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     要するに、「国民」というのは、国家の保護枠から放り出されて、グローバル経済に参画するさまざまなグループや法人の、使い捨ての資材とか売り物になっている。けれども、それをあからさまにはできないから、うまくごまかして国家と国民の繋ぎをしてくれるようなイデオロギーは大歓迎というわけです。
    …(中略)…
     経済原理によって「解放される」ということは、結局、個々人がバラバラに分断されて、そのことが「自由」だと言いくるめられる状況です。役立たずとなると「個人」としてさえ認められません。こういうことから分かるように、「個人」として認められるというのは同時に「人権」を認められるということ(が必要になるはず)なんですね。
     それ(=人権)を主張すると、今度は、自由な体制なんだから何があっても自己責任だ、ということにされる。そういう論理が用意されています。「民営化」の下ではみんな「個人事業主」、体一つ以外に資産がなくても自営業者なんだ、と。「民営化」(privatization)という単語はほんとうは「私物化・私権化」であって、翻訳でうまくごまかしています。

    ----------------------------(本文68頁より)

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    2025年11月13日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    哲学の視点を持ちながら時代の流れと世の中の仕組みを解説してくれて、面白かった!読みやすくもある。
    私は科学の進歩で、生活が豊かになると単純に信じていたけれど、同時にそれは人間であることが不可能になる(まだこの言い回しに慣れない)ことを示唆しているとは考えもつかなかった。
    信じていたものに疑問を持つ機会をくれた、良い読書体験だったと思う。

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    2024年05月03日
  • 自発的隷従論

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    当時は教会が政治との結びつきが強く、政治扇動の書として誤解されることを防ぐため、友人のモンテーニュがラ・ボエシの死後も発表を躊躇したという書籍。

    人は力や謀略により強制的に服従することはあっても、強制されずとも自ら進んで権威に服従するのは何故か。この自発的隷従のメカニズムついて様々な考察を示し、最も唾棄すべき悪徳として痛烈な批判を浴びせている。翻訳の絶妙さなのか、ラ・ボエシの批判的な文章が妙に強烈なのが印象的だった。


    【一部引用】

    彼らは強制されもせず、いかなる必要もないのに、圧政者に身を委ねた。私はこの民の歴史を読むと、きわめて大きな恨みの念を覚えずにはいられない。われながらまるで人間らしさを失って、それ以後彼らに訪れたかくも様々な災厄を喜びたい気持ちになるほどだ。

    私は勇壮な人でも、高貴な生まれの人に語っているのでもない。ただ普通の常識ある人、さもなくばただ人間の顔を持つ人に対して語っている。こんなふうに生きるより悲惨なことがあるだろうか。自分では何も持たず、自分の幸福も自由も、身体も命も他人にゆだねるとは。

    もう隷従はしないと決意せよ。逃れたいならば逃れたいと望むだけでよい。敵を突き飛ばせとか、振り落とせと言いたいわけではない。ただこれ以上支えずにおけばよい。

    臆病と呼ばれるにも値せず、それにふさわしい卑しい名が見あたらない悪徳、自然がそんなものを作った覚えはないと言い、ことばが名づけるのを拒むような悪徳とは。

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    2024年02月07日
  • 自発的隷従論

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    「日本の状況が他人事と思えなくなる」の帯がついていましたが、一人の圧政者に云々という下りは、北朝鮮を思い起こさせました(著者はモンテーニュと刎頸の交わりがあったとのことで、引用はギリシア・ローマが多いのですが)。

    圧政者一人が4〜5人を追従者として周りにつけ、徐々にそれを広げて権力基盤を固めていくというのは、企業でも似たところありかとも思いました。

    本文は80ページほどの短いものですが、最後の西谷修氏の解説が圧巻です。対米追随の日本の現状を分析し、これを権力基盤としている政党や追随者の話は、別に一冊書いて欲しいと思うほどの内容です。これを読むと、「日本の状況が他人事と思えなくなる」というのも頷けました。

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    2021年07月11日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュの時代(1500年代)に圧政者とこれへの隷従が生じるのはなぜか、その構造は何かを論じたもの。うーん、自発的隷従か、確かにその構造
    があるからこそ、圧政は可能となるように思われる。今の時代のsenseを読み解く鍵になるかもしれない。

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    2020年06月12日
  • 自発的隷従論

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    自発的隷従論 ポエシ ちくま

    公務員でありながら
    客観性に飛んだ人間論を持った人によって
    1500年代に書かれた稀有な本だ

    人の本質には個としての自律心と
    全体の一部としての依存心が共存しているのだろう
    そのどちらが表面化するかによって
    生き様が変わるのだけれど
    自主的参加による集いから
    余剰生産物の到来による社会の肥大化で
    個人が組織に飲み込まれて以来
    主従関係が蔓延することになる
    そこで生み出されたのが
    奴隷と戦争に支えられたギリシャにおける
    民主主義モドキの貴族社会であり
    このボエジの本である

    つまり赤ん坊が親と環境に依存すると同時に
    自由奔放に自己を表現するように
    人間は本来冒険を愉しむ為に生まれてきた筈なのだ
    主従という依存心に溺れるのは
    生産物の奪い合いがもたらした物質文明の成せる業

    お互いに競争原理の矛盾に気付き
    信頼と切磋琢磨による調和を求めて精神性を取り戻そう

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    2020年01月06日
  • アメリカ 異形の制度空間

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    ヨーロッパの視点から見たアメリカ論で、出色の出来。現在の世の中を見る視点がいかに歪んでいるかがよくわかる。今年読んだ中では最もおすすめ。

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    2018年10月02日
  • 自発的隷従論

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    ネタバレ

    西谷修氏の解説『不易の書『自発的隷従論』について』の中に「一人の支配者は独力でその支配を維持しているのではない。一者のまわりには何人かの追従者がおり、かれらは支配者に気に入られることで圧政に与り、その体制のなかで地位を確保しながら圧政のおこぼれでみずからの利益を得ている。そのためにかれらはすすんで圧政を支える。」とある。これは、中国や北朝鮮や日本など国家だけでなく、企業や各種団体などあらゆる集団に当てはまる。多くの人が自分は他者より利益を得ていると感じるから隷従に甘んじているのだろうか。目を覚まさないと。

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    2016年05月03日
  • 自発的隷従論

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    その刺激的な題名と、書かれた時代(16世紀末)とのギャップから受ける印象を全く裏切らない刺激的な内容は、その平易な訳と相俟って、強いメッセージ性を帯びたもので、一気に読み進むことが出来た。

    又、本書の約半分を占める解題や解説は、その内容を読み下す助けの役割を十二分に果たしており、この手の重い本にしては極めてコンベンショナルな内容であった。

    時代は全く異なるが、かつて大学で学んだ黒人文学の中で接した「リロイ・ジョーンズ (LeRoi Jones)」の詩に、極めて似た内容の詩があるのを思い出した。

    『奴隷は、奴隷の境遇に慣れ過ぎると、驚いた事に自分の足を繋いでいる鎖の自慢をお互いに始める。どっちの鎖が光ってて重そうで高価か、などと。そして鎖に繋がれていない自由人を嘲笑さえする。(後略)』

    中世の若き法官と1960年代の黒人文学の交錯は、私の中ではとても刺激的な出来事だった。

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    2015年10月12日
  • 自発的隷従論

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    ネタバレ

    とても色々なことを考えさせられる刺激的な本だった。読むことができて大変良かったと思う。

    この本はとても素朴な疑問から出発している。なぜ何百人、何万人もの民衆が、数の上では圧倒的に有利なのにも関わらず、たった1人の圧政者に従うのか。
    著者はその疑問を考察していき、本来自由なはずの人間が習慣の力によって堕落し、自ら自発的に服従を求めるようになるのだと述べている。
    なるほど、と思う。

    思うに、この『自発的隷従論』が説く帰結の一つは「権力は存在しない」ということではないだろうか。

    国家の権力なるものは暴力だとか社会契約といったものに起因するのではなく、ただ人間が生まれながらにして(あるいは習慣として)持つ「服従したい」という欲望によって生じる。
    この本でボエシ(執筆当時まだ10代だったそうだが)が主張していることは権力から社会秩序を考えるのではなく、服従を求める人間の欲望が社会秩序を作る、という発想につながるのではないか。

    だから権力にはいかなる実体的な内実も無く、ただ人々が服従することをやめるだけで「土台を失った巨像のように、みずからの重みによって崩落し、破滅」(P.24)するのだ。

    そうすると、人間の「服従を求める欲望」はどこからくるのか、というような疑問も湧いてきて、西谷修がこの本のあとがきで、人間が言語を使うということ(言語というルールに従うこと)にその原因があるのでは、というような事を述べているのも面白い。

    本の内容から派生して、色々なことを考えさせられた。
    いい本。

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    2014年01月08日
  • フォト・ドキュメント 骨の戦世 65年目の沖縄戦

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     沖縄戦の激戦地だった場所の再開発に伴って日本兵の遺骨が次々と発掘されているという。なかには頭蓋骨のなかにミイラ化した脳を残しているものもあったとか。そこにはどのような記憶が石化して眠っているのだろう。その写真を震えながら撮ったという比嘉豊光による遺骨の写真をみると、骨たちは何か言いたげだ。それに応える想起をどう考えるのか、また兵士とその傍で命を落としていたであろう住民との関係をどう捉えるかなど、骨が問いかけるものは多く、また重い。そのような骨に出会えたのも、草の根の地道な試みがあったからこそである。その取り組みを伝えるとともに、骨からの現在の戦世への問いを伝える好著。比嘉豊光の写真も素晴らしい。

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    2019年01月16日
  • 自発的隷従論

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    圧政が成立するのは、支配者が原因ではなく、民衆が隷従するからで、これを「長いモノには巻かれろ」と云い、西洋では「自発的隷従」と云う。

    支配者の戦略が巧妙であり、歴代不変であり、なかなか崩れないものである。

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    2026年05月06日
  • 戦争と西洋 ――西側の「正義」とは何か

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     『戦争論』『不死のワンダーランド』の著者による新たな戦争論。2025年刊行の著作だが、著者はウクライナ戦争、ガザのジェノサイドが進行する世界の軍事的緊張を、「西洋文明」による世界化というプログラムの限界と、それでもなお地球支配を継続し、ヘゲモニーを維持し続けようとする「西洋」の断末魔(?)あがき(?)と捉え、「西洋の没落」以後の新たな「世界」の構築に備え、参与せよと説く。
     前半部分は20世紀戦争史のおさらいという内容で新味は感じなかったが、「ポスト冷戦」期、湾岸戦争以後の戦争の変質を内在的にあとづけていった以降の論述は刺激的だった。難しいと思うのは、ウクライナ戦争における西側=アメリカ/ヨーロッパの責任を前景化する語りがどうしてもプーチンのロシアに対する評価を甘くしているように見え、また、米国の対中封じ込め政策の問題を指摘する語りが現在の中国の権威主義的な体制に対する批判的なまなざしを弱めているように見えてしまうこと。もちろん中立的で客観的な語りはありえない。だが、一方を問題化することがもう一方を不問に付すことになってしまうようなことにならない議論の立て方は可能なのだろうか。複雑なファクターの「複雑さ」を等閑視せずに議論することができるのか、もし可能だとして、そのためにはどんな戦略を立てる必要があるのか。「現在進行形の戦争」を語ることの難しさを改めて思い知らされた。

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    2026年03月16日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    めちゃくちゃ面白くて分かりやすい。フランス革命以降の200年と明治150年という二つの時間軸のもと、西洋・アメリカ・日本等の関係性を構造的に考えることができたのはデカい。
    参考文献も何個か挙げられていたから、それらも読みたいと思う。

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    2026年02月06日
  • 自発的隷従論

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    タイトルからしてインパクトあるこちらの本。敬愛する本好きの方から、最近読んで面白かった本としておすすめいただいた。

    本書解説から拾うと、「自発的隷従」とは、「強いられもしないのに、自ら進んで奴隷になる」ということ。ラ・ボエシは自身が生きる時代までに起こった数々の圧政・独裁に対して、それは民衆が加担しているから起こると説く。

    この本を読むまで、ラ・ボエシという人物を全く知らなかったが、彼は16世紀のフランスの知識人で、この「自発的隷従論」をなんと16か18歳(!?)で書き上げたとされる、驚くべき天才。

    ラ・ボエシは日本ではあまり知られていないと思われ、ちくま学芸文庫のこの本自体、初版が2013年と割と最近。監修する西谷修氏のあとがきを読むと、「混迷の今こそ、ラ・ボエシに学べ」との強い意志を感じる渾身の一冊となっていると感じた。

    ラ・ボエシは、進んで支配を受け入れる民衆を憂いながらも、人間は生まれながらにして兄弟のように友情を育む存在であり、友とはお互いの善良さを保証しあえる関係性にこそ生まれることを力強く伝えてくれる。

    「いま一度、正しく行動することを学ぼう」という締めくくりに勇気をもらった。学ぶことで人間はより善く生きられるはずだ。

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    2025年11月24日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュの友人ラ・ボエシが10代で書き上げた短い論考が400年以上も読み継がれるとは、書いた本人も想像していなかったことだろう。
    自発的隷従、つまり自由に選択して奴隷になるという矛盾した言葉は、当時はモンテーニュをして世に出すのは危険と捉えられたようだが、他方、現代においては非常に納得しやすいものなのではないだろうか。
    スマホを弄り、グローバル企業にせっせと情報提供しながらも、その支配を嘆く我々はまさに自発的隷従をしているとしか言いようがない。(とこれを書く私もまた自発的に隷従するのだ)
    これは社会を構成する人間の「自然」なのだろうか?

    本書は革命を語る本かと思いきや、それはよくある誤解のようで、ラ・ボエシはあくまで時代性を離れた一つの思索として人間のあり方を考えて書いたらしく、これは「共産党宣言」というわけではない点には注意が必要である。

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    2025年03月22日
  • 自発的隷従論

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    ちくま学芸文庫 ラボエシ 「 自発的隷従論 」 訳 山上浩嗣 監修 西谷修


    自由を放棄し、圧政者に隷従する人間の行動を紐解いた本。著者が伝えたいのは、習慣としての隷従を戒め、人間の「自由」を復権すること


    「愚かな民衆は、いつも自ら嘘をこしらえては、のちにそれを信じるようになる」は 名言


    自由とは 権利や権力であるように感じた。共同体のなかで 権利は調整されるべきもので、隷従は 権利を放棄した結果ではなく、権利を調整した結果なのではないかと思った



    「人間は自由を失うことで、人間性を失った。人間であることは自由であることであり、人間は自由を志向する存在である」


    「人間が自発的に隷従する理由は、生まれつき隷従していて、しかも隷従するようにしつけられているから」



    「圧政者は決して愛されることも、愛することもない〜友愛は善人同士にしか存在しないし、互いの尊敬によってしか生まれない。それは利益によってでなく、生き方によって保たれる」



    ラボエシの中心的な主張
    *人間の本性としての自由
    人間は、本性と区別できないほどにそれと一体化した習慣によって、隷従の悲惨さを認識するできないまで目をくもらされている

    *一者による支配の構造的悪
    圧政者は、民衆を隷従の状態に慣れさせ、自分を崇拝させるため、たゆまぬ努力を重ねてきた

    *支配と隷従の相補的関係
    いかなる隷従も自発的なものであり、圧政を中断させるのに暴力的な抵抗は必要ない。民衆が何も与えなければ圧政者は自壊する


    区別が国家を発生させる
    *社会を上の者と下の者に区別する国家は、権力関係を実際に機能させる
    *権力関係とは、国家制度の本質そのもの〜国家は権力関係の拡大にほかならない









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    2025年02月15日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    1.著者;西谷氏は哲学者。東大卒業後にパリ第8大学で学ぶ。フランス現代思想を学び、世界のグローバル化によって起こる諸問題を研究。テーマは、戦争論・世界史論・メディア論・身体・医療思想論・芸術論と幅広い。戦争論については、世界戦争と死の意義を考察。「産業の軍事進出には経済の健全化の為に警戒が必要」と主張。
    2.本書;「はじめに」から抜粋。私達の今生きている世界の動態をどのように捉えるかという事を、ここ200年程を振返りながら考察。世界は、近代のもたらした自由を解消するような方向に進化している。政治社会的開放の成果が、テクノロジー経済の自立的発展によって、❝新世界❞という新たな身分制社会になだれ込んでいる。文明の未来を先取りするとみなされる人達が、私的に巨額の富を築く一方で、世界中に悲惨な貧困や荒廃が広がっている。5章建ての構成。
    3.個別感想(印象に残った記述を3点に絞り込み、感想を付記);
    (1)『「第1章;今の世界に至る道」の「3.人権や平等に疲れて」』から、『今ではどこでも、「1%の金持ちと99%の困窮者」。これはほとんど不可逆的で、その階層は世代を超えて再生産され、どこでも社会は再階層化されています。その一方で、「社会防衛」の意識は共有され、反対や不満の表明は「危険因子」としてすぐに隔離・除去されます。それを誰もが求めているのが実情です』
    ●感想⇒「1%の金持ちと99%の困窮者」について。某調査によれば、日本の階級構造は次の通りです。「①資本家階級(経営者・役員)=就業人口の4% ~ ⑤アンダークラス(非正規労働者)=15%」。1980年代以降の富裕層の所得税引下げ等の格差拡大政策により、国民の階層化は激しく進行。非正規雇用は正規労働者に比べ生活が不安定で[貧困率=39%]、結婚して家族形成出来ない様な状況は、倫理的にも問題です。非正規雇用はバブル経済末期頃から登場。企業経営の核となる人間を一コストと考え、人件費削減の拠り所にしたのは明白です。政治は、企業の主張に同調して、人材派遣制度を改定したのです。子育て支援政策強化と言いますが、その前に誰もが結婚出来る様な環境づくり(非正規労働の改善)が必要だと考えます。また、「反対や不満の表明は、危険因子としてすぐに隔離・除去」される社会は異常です。「平等社会」の実現に向けて、政治はアンダークラスに対する救済を使命と考えるべきです。
    (2)『「第3章;日本は朝鮮半島をどう見ているか」の「2.拉致問題の経緯」』から、『日本はアジア諸国を侵略して蹂躙した。南京攻略を始めとして、各地で残虐行為も繰り広げた。日本の戦争が中国始めアジア諸国にとってはいかに酷いものであったか、・・・国内的に見ても多数の人が兵隊にとられて、本土空襲もやられ、原爆まで落とされて塗炭の苦しみを国民が味わった。・・・しかし、その記憶は、日本が高度成長し、経済大国と言われバブル経済も経験した社会で薄れてゆく』
    ●感想⇒「原爆まで落とされて塗炭の苦しみを国民が味わった」。私は、戦後に生まれたので戦争の悲惨さを体験していません。幼少の頃に祖父母から戦争話を幾度も聞かされました。「爆撃機が突然飛来してくる度に、着の身着のままで一目散に防空壕に逃げ込んだ。食事は、白米なんて食べられず、すいとん(水でこねた小麦粉をちぎって丸めた食べ物)だけ。調味料もない。しかし、生きているだけで運が良かった。・・・」と。子供ながらに辛い話でした。また、「南京攻略を始めとして、各地で残虐行為」を繰り返した日本軍の蛮行は決して許されません。これは歴史的事実であり、私達はその事を忘れずにアジアの人々と交流しなければなりません。時々、日本企業が世界の上位を占める報道を見聞きしますが、それよりも、非人道的な蛮行をした国々への償いの一つとして、経済支援に注力して欲しいものです。蛇足です。某日の新聞への読者投稿の抜粋です。『❝戦争の恐怖もう二度と❞ 私は常に死と向き合う、あんな怖い思いをもうしたくありません。紛争が世界で絶えませんが、話し合いを重ねれば戦いは停止させられる』と。
    (3)『「第5章;令和の日本と世界のこれから」の「1.西洋的世界の変質」』から、『国の政治が自分達の社会生活を規定しており、だからこそ政治に関わらなければいけないし、それが主権者としての権利でもあり務めでもある事は、教育を通じて教えなければなりません。それを戦後しばらくを除いて、日本の公教育はひたすら排除してきました。その結果「政治離れ」です。そして、今や日本の政府(自民・公明政権)は、選挙の度に投票率が低くなる事を期待する始末です』
    ●感想⇒「日本の公教育はひたすら排除(政治に関わらなければいけない事を)してきました。その結果、政治離れ」。某調査によれば、令和4年の参院選挙の投票率は次の通りです。「全体;52%⇒(年代別内訳)最低;20歳代 の34%~最高;60歳代の66%」。選挙に行かない人が約半数、中でも若者の投票率が低く、将来が危ぶまれます。選挙に行かない人は、自分の生活に政治が関わっていると思っていないかもしれません。私も義務教育で政治や選挙の重要性を教えてもらい、学んだという記憶がありません。若い頃はたかが一票と思っていました。しかし、されど一票です。「国の政治が自分達の社会生活を規定しており、だからこそ政治に関わらなければいけない」という著者の主張は至極当然です。国内外の実状に関心を持ち、民主主義を守るためにも、私達が政治に物申すチャンスである選挙投票は私達の責務です。他人事と思ってはいけないのです。少なくとも投票棄権だけは止めましょう。
    4.まとめ;主に小説やエッセイに勤しんでいるいる私にとって、この類の本を読んだのは久方ぶりです。日本では平和を満喫しているようですが、世界ではウクライナや中東・台湾問題など緊張状態にあり、1986年米ソの核廃絶宣言、どこ吹く風とばかりに、アメリカ×ロ・中の大国間競争の中で、核の脅威が再燃しています。第三次世界大戦が勃発してもおかしくない状況です。国内に目を転じると、与党の裏金問題
    や東京都知事選でのパフォーマンス合戦を見るにつけ、政治はいずこへとの感です。こうした時こそ、世界の現状に関心を持ち、自分達の出来る事を考える時と思います。本書は歴史を振り返り、分かり易く書かれており説得力があります。しかし、本書の論理だけを鵜吞みにせず、他の書も読んで自分なりの考え方を持つのが大切でしょう。人の考えは千差万別なので、ものの善し悪しを判別する自分なりのモノサシ作りが必要です。人類は難問の解決に向けて、今こそ理性と英知が試されているのだと思います。(以上)

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    2024年06月30日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュがその才能を賞賛していたラ・ボエシの本を読む。なんか時代的に意外なタイトル。
    色んな時代の色んな党派がこの小論を基にアジテートしてきたというのも頷ける、汎用性が高い内容。自分だったら、今の職場に当てはめて読んだ。
    議論の出発点の、自由は人間の本性が求めるものということの根拠として、人間が同じ形をしていて、能力に差があるのは、互いに助け合うためであり、隷従状態はその対極にあるということを挙げている。これをさらっと前提にしているの、良いな。

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    2024年02月23日