西谷修のレビュー一覧

  • 私たちはどんな世界を生きているか

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     要するに、「国民」というのは、国家の保護枠から放り出されて、グローバル経済に参画するさまざまなグループや法人の、使い捨ての資材とか売り物になっている。けれども、それをあからさまにはできないから、うまくごまかして国家と国民の繋ぎをしてくれるようなイデオロギーは大歓迎というわけです。
    …(中略)…
     経済原理によって「解放される」ということは、結局、個々人がバラバラに分断されて、そのことが「自由」だと言いくるめられる状況です。役立たずとなると「個人」としてさえ認められません。こういうことから分かるように、「個人」として認められるというのは

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    2025年11月13日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    哲学の視点を持ちながら時代の流れと世の中の仕組みを解説してくれて、面白かった!読みやすくもある。
    私は科学の進歩で、生活が豊かになると単純に信じていたけれど、同時にそれは人間であることが不可能になる(まだこの言い回しに慣れない)ことを示唆しているとは考えもつかなかった。
    信じていたものに疑問を持つ機会をくれた、良い読書体験だったと思う。

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    2024年05月03日
  • 自発的隷従論

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    当時は教会が政治との結びつきが強く、政治扇動の書として誤解されることを防ぐため、友人のモンテーニュがラ・ボエシの死後も発表を躊躇したという書籍。

    人は力や謀略により強制的に服従することはあっても、強制されずとも自ら進んで権威に服従するのは何故か。この自発的隷従のメカニズムついて様々な考察を示し、最も唾棄すべき悪徳として痛烈な批判を浴びせている。翻訳の絶妙さなのか、ラ・ボエシの批判的な文章が妙に強烈なのが印象的だった。


    【一部引用】

    彼らは強制されもせず、いかなる必要もないのに、圧政者に身を委ねた。私はこの民の歴史を読むと、きわめて大きな恨みの念を覚えずにはいられない。われながらまるで人

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    2024年02月07日
  • 自発的隷従論

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    「日本の状況が他人事と思えなくなる」の帯がついていましたが、一人の圧政者に云々という下りは、北朝鮮を思い起こさせました(著者はモンテーニュと刎頸の交わりがあったとのことで、引用はギリシア・ローマが多いのですが)。

    圧政者一人が4〜5人を追従者として周りにつけ、徐々にそれを広げて権力基盤を固めていくというのは、企業でも似たところありかとも思いました。

    本文は80ページほどの短いものですが、最後の西谷修氏の解説が圧巻です。対米追随の日本の現状を分析し、これを権力基盤としている政党や追随者の話は、別に一冊書いて欲しいと思うほどの内容です。これを読むと、「日本の状況が他人事と思えなくなる」というの

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    2021年07月11日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュの時代(1500年代)に圧政者とこれへの隷従が生じるのはなぜか、その構造は何かを論じたもの。うーん、自発的隷従か、確かにその構造
    があるからこそ、圧政は可能となるように思われる。今の時代のsenseを読み解く鍵になるかもしれない。

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    2020年06月12日
  • 自発的隷従論

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    自発的隷従論 ポエシ ちくま

    公務員でありながら
    客観性に飛んだ人間論を持った人によって
    1500年代に書かれた稀有な本だ

    人の本質には個としての自律心と
    全体の一部としての依存心が共存しているのだろう
    そのどちらが表面化するかによって
    生き様が変わるのだけれど
    自主的参加による集いから
    余剰生産物の到来による社会の肥大化で
    個人が組織に飲み込まれて以来
    主従関係が蔓延することになる
    そこで生み出されたのが
    奴隷と戦争に支えられたギリシャにおける
    民主主義モドキの貴族社会であり
    このボエジの本である

    つまり赤ん坊が親と環境に依存すると同時に
    自由奔放に自己を表現するように
    人間は本来冒険

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    2020年01月06日
  • アメリカ 異形の制度空間

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    ヨーロッパの視点から見たアメリカ論で、出色の出来。現在の世の中を見る視点がいかに歪んでいるかがよくわかる。今年読んだ中では最もおすすめ。

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    2018年10月02日
  • 自発的隷従論

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    ネタバレ

    西谷修氏の解説『不易の書『自発的隷従論』について』の中に「一人の支配者は独力でその支配を維持しているのではない。一者のまわりには何人かの追従者がおり、かれらは支配者に気に入られることで圧政に与り、その体制のなかで地位を確保しながら圧政のおこぼれでみずからの利益を得ている。そのためにかれらはすすんで圧政を支える。」とある。これは、中国や北朝鮮や日本など国家だけでなく、企業や各種団体などあらゆる集団に当てはまる。多くの人が自分は他者より利益を得ていると感じるから隷従に甘んじているのだろうか。目を覚まさないと。

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    2016年05月03日
  • 自発的隷従論

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    その刺激的な題名と、書かれた時代(16世紀末)とのギャップから受ける印象を全く裏切らない刺激的な内容は、その平易な訳と相俟って、強いメッセージ性を帯びたもので、一気に読み進むことが出来た。

    又、本書の約半分を占める解題や解説は、その内容を読み下す助けの役割を十二分に果たしており、この手の重い本にしては極めてコンベンショナルな内容であった。

    時代は全く異なるが、かつて大学で学んだ黒人文学の中で接した「リロイ・ジョーンズ (LeRoi Jones)」の詩に、極めて似た内容の詩があるのを思い出した。

    『奴隷は、奴隷の境遇に慣れ過ぎると、驚いた事に自分の足を繋いでいる鎖の自慢をお互いに始める。ど

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    2015年10月12日
  • 自発的隷従論

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    ネタバレ

    とても色々なことを考えさせられる刺激的な本だった。読むことができて大変良かったと思う。

    この本はとても素朴な疑問から出発している。なぜ何百人、何万人もの民衆が、数の上では圧倒的に有利なのにも関わらず、たった1人の圧政者に従うのか。
    著者はその疑問を考察していき、本来自由なはずの人間が習慣の力によって堕落し、自ら自発的に服従を求めるようになるのだと述べている。
    なるほど、と思う。

    思うに、この『自発的隷従論』が説く帰結の一つは「権力は存在しない」ということではないだろうか。

    国家の権力なるものは暴力だとか社会契約といったものに起因するのではなく、ただ人間が生まれながらにして(あるいは習慣と

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    2014年01月08日
  • フォト・ドキュメント 骨の戦世 65年目の沖縄戦

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     沖縄戦の激戦地だった場所の再開発に伴って日本兵の遺骨が次々と発掘されているという。なかには頭蓋骨のなかにミイラ化した脳を残しているものもあったとか。そこにはどのような記憶が石化して眠っているのだろう。その写真を震えながら撮ったという比嘉豊光による遺骨の写真をみると、骨たちは何か言いたげだ。それに応える想起をどう考えるのか、また兵士とその傍で命を落としていたであろう住民との関係をどう捉えるかなど、骨が問いかけるものは多く、また重い。そのような骨に出会えたのも、草の根の地道な試みがあったからこそである。その取り組みを伝えるとともに、骨からの現在の戦世への問いを伝える好著。比嘉豊光の写真も素晴らし

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    2019年01月16日
  • 自発的隷従論

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    タイトルからしてインパクトあるこちらの本。敬愛する本好きの方から、最近読んで面白かった本としておすすめいただいた。

    本書解説から拾うと、「自発的隷従」とは、「強いられもしないのに、自ら進んで奴隷になる」ということ。ラ・ボエシは自身が生きる時代までに起こった数々の圧政・独裁に対して、それは民衆が加担しているから起こると説く。

    この本を読むまで、ラ・ボエシという人物を全く知らなかったが、彼は16世紀のフランスの知識人で、この「自発的隷従論」をなんと16か18歳(!?)で書き上げたとされる、驚くべき天才。

    ラ・ボエシは日本ではあまり知られていないと思われ、ちくま学芸文庫のこの本自体、初版が20

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    2025年11月24日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュの友人ラ・ボエシが10代で書き上げた短い論考が400年以上も読み継がれるとは、書いた本人も想像していなかったことだろう。
    自発的隷従、つまり自由に選択して奴隷になるという矛盾した言葉は、当時はモンテーニュをして世に出すのは危険と捉えられたようだが、他方、現代においては非常に納得しやすいものなのではないだろうか。
    スマホを弄り、グローバル企業にせっせと情報提供しながらも、その支配を嘆く我々はまさに自発的隷従をしているとしか言いようがない。(とこれを書く私もまた自発的に隷従するのだ)
    これは社会を構成する人間の「自然」なのだろうか?

    本書は革命を語る本かと思いきや、それはよくある誤解

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    2025年03月22日
  • 自発的隷従論

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    ちくま学芸文庫 ラボエシ 「 自発的隷従論 」 訳 山上浩嗣 監修 西谷修


    自由を放棄し、圧政者に隷従する人間の行動を紐解いた本。著者が伝えたいのは、習慣としての隷従を戒め、人間の「自由」を復権すること


    「愚かな民衆は、いつも自ら嘘をこしらえては、のちにそれを信じるようになる」は 名言


    自由とは 権利や権力であるように感じた。共同体のなかで 権利は調整されるべきもので、隷従は 権利を放棄した結果ではなく、権利を調整した結果なのではないかと思った



    「人間は自由を失うことで、人間性を失った。人間であることは自由であることであり、人間は自由を志向する存在である」


    「人間が

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    2025年02月15日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    1.著者;西谷氏は哲学者。東大卒業後にパリ第8大学で学ぶ。フランス現代思想を学び、世界のグローバル化によって起こる諸問題を研究。テーマは、戦争論・世界史論・メディア論・身体・医療思想論・芸術論と幅広い。戦争論については、世界戦争と死の意義を考察。「産業の軍事進出には経済の健全化の為に警戒が必要」と主張。
    2.本書;「はじめに」から抜粋。私達の今生きている世界の動態をどのように捉えるかという事を、ここ200年程を振返りながら考察。世界は、近代のもたらした自由を解消するような方向に進化している。政治社会的開放の成果が、テクノロジー経済の自立的発展によって、❝新世界❞という新たな身分制社会になだれ込

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    2024年06月30日
  • 自発的隷従論

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    モンテーニュがその才能を賞賛していたラ・ボエシの本を読む。なんか時代的に意外なタイトル。
    色んな時代の色んな党派がこの小論を基にアジテートしてきたというのも頷ける、汎用性が高い内容。自分だったら、今の職場に当てはめて読んだ。
    議論の出発点の、自由は人間の本性が求めるものということの根拠として、人間が同じ形をしていて、能力に差があるのは、互いに助け合うためであり、隷従状態はその対極にあるということを挙げている。これをさらっと前提にしているの、良いな。

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    2024年02月23日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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    非常に日本に、そして民主主義に厳しい本だった。
    からなずしも全てに賛成ではないが、概ねその通りだと言える内容。日本はこのままアメリカに隷属して進むのか?それとも自立した骨太の国になれるのか?
    これからの国のリーダーには重い命題が課される。でも日本のリーダーは、そんなことに悩まず今までどおりを貫くのだろうな……

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    2022年12月18日
  • 私たちはどんな世界を生きているか

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     表題の通り、「私たちがどんな世界を生きているか」をフランス革命から200年、明治150年という2つの時間軸で考えていく。その際のキーワードとしては、「国、政治、経済」「民主、自由、平等」が挙げられる。
     新自由主義とは、何でも経済(市場)に委ねてしまおうという政策だったのだということが分かる。そういった中で、「政治」から「経済」へと社会のメカニズムの中心が動いて行ったのである。
     小泉政権や安倍政権の問題点、そして様々な社会問題や国際問題をその起源から理解させてくれる一冊である。
     ただ、時に著者の用いる言葉には、理解しにくいものもあり、読みにくい箇所も散見されたので、★4つとする。
     また

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    2022年08月14日
  • 「改憲」の論点

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    やや難しいなと思った章は読み飛ばし。
    第一章 木村草太氏の論旨が秀逸。
    その他読みやすいところだけでも、十分に自分で思考するベースができる。

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    2022年04月26日
  • 自発的隷従論

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    自発的に隷従とは?という疑念にかられその内容について知りたく購入。
    人類には本性が2パターンあり、本来の自由であること、そして習慣的に自由から自発的隷従であること、と述べられており納得がいった。人類史を振り返ると教皇や王、独裁者等多くの圧政者が必ず存在する。圧政者はその下につく民衆が自発的に隷従することで成立し、単独では成立しない。つまり民衆が圧政者を生み出しているのに他ならないというのは、現代社会でも言えると感じた。

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    2021年09月03日