坂本敏夫のレビュー一覧
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大正12年の関東大震災。甚大な被害を受けた横浜刑務所、火炎の迫る中、所長は囚人たちの安全のため、監獄法で定められた囚人の解放を命ずる。未曾有の大災害下、人の善が問われる感動作。
筆者は元刑務官。囚人を解放したことが流言蜚語を招いたとし、本省から糾弾された所長、事件の真相を長年にわたり探究した結果が本書である。
24時間という区切られた解放。震災の被害は大きく囚人たちに戻れない事情もある。自分の帰還と目の前の被害者を天秤にかける事態。
キャリア官僚の所長への反発、所長の失脚を図る本省職員。職員の反目を図りまた流言で囚人を惑わす。
多くの支援物資。囚人たちは荷役の業務に黙々と従事し、市民の -
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著者は元刑務官なので、刑務官として死刑囚や多くの服役者・被告人
と係わった経験から死刑制度を考えるのが本書だ。
小説風にして登場する人物は仮名で、幾分かの脚色はしてあるのだろう
けれど、何人かの死刑囚が刑場に消えるまでの話はまさに刑務官として
の視点だろう。
このなかでタイトルにもなっている永山則夫の執行当日の様子は実名
であることもあるのだが、あまりにも生々しい。
舎房から呼び出され、執行であることに気が付いた永山は渾身の力で
抵抗する。その永山に「制圧」という名の容赦のない暴行が加えられる。
刑場に立った永山則夫の体には暴行の痕跡が多く残り、意識のない
ままに刑が -
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ネタバレ元刑務官が現在行われている「死刑」に関する全てを赤裸々に語り尽くした、今この時期だからこそ、読まれるべき本である。
死刑囚がその時まで過ごす日々…最も身近にいる看守と刑務官の苦悩…著者が想う「死刑制度」の是非…そして、死刑執行当日の始めから終わりまで…。
特に、本書に収録されている「死刑執行当日」の模様を描いた劇画『死刑執行』は、執行の瞬間を何度も経験した著者ならではのリアリティで描かれている。この劇画を読むだけでも、執行する者と執行される者の心情がひしひしと伝わってくる。
死刑制度を論議するなら、まずは本書を参考資料として読み込んでみては、いかがだろうか。 -
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タイトルに惹かれて古本屋で購入。間違ってなかった。
関東大震災の折、横浜刑務所から24時間の時間指定を設け前代未聞の全囚人開放。これが大きなテーマなのだが、メロスは囚人の妹だった。この妹を軸に、えがかれているのは37歳の若き所長の生きざま。囚人に対し、ただ真摯に、更生を願いためにやっかみを買い果ては戦犯として6年服役することになる人生を読ませて頂いた。
時代だねえ。
「こんなファンタジーある?」と読む人によっては思うだろうし、間違いなく「被害者」を生み出した「加害者」たる囚人に対しここまで美麗に書くことへの嫌悪を感じる人もいるかもしれない。ただ、これをドキュメントとして読むか作家(元刑務官 -
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坂本敏夫『囚人服のメロスたち 関東大震災と二十四時間の解放』集英社文庫。
未曾有の大災害の中、究極の決断と人と人との信頼関係を描いたノンフィクション。
こういう歴史の1ページがあったとは全く知らなかった。冒頭から関東大震災の迫真の描写が続く。当時の刑務所が煉瓦造りであったことを考えれば、如何に刑務所の被災状況が酷かったのかは容易に想像できる。囚人たちの命を守るために若き所長の下した前代未聞の究極の決断とそれに応えた囚人たちの驚きの行動。
1923年9月1日に発生した関東大震災。横浜刑務所の弱冠27歳のキャリア所長・椎名通蔵は倒壊する刑務所を目の当たりにし、囚人たちの安全確保のため、1,0 -
購入済み
悲しい現実
死刑を執行せざるおえない、刑務官の心情が、リアルに描かれています。死刑に反対賛成、賛否両論あるなかで、現場で苦悩している方達の現実に触れ色々と深く考えさせられる内容でした。
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著者は、各地の刑務所及び拘置所に勤務経験のある元刑務官であり、映画「13階段」ではアドバイザーも務めた人物である。
日本では死刑制度は完全秘密主義となっており、死刑囚の拘置所での様子から死刑執行まで、状況が明らかにされることはまずありえない。
そのような状況下で、実際に死刑囚と接触してきた刑務官から語られる言葉は、死刑というものを考えるうえでは非常に重要なものである。
本書では、死刑場がどのような構造になっているか、死刑がどのように執行されるのか、執行官はどのように選ばれどのように執行するのか、そういったことが赤裸々に書かれている。
私が主に考えさせられたのは、以下の点である。
まず、死