河合雅雄のレビュー一覧
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会社で斡旋されていたので買ってみた。
燃料・食料・肥料などの供給地としての里山が利用されなくなり、人の世界と動物の世界の間で「人と動物の入会地」が崩壊することで、それまでの人と動物の関係性が失われてしまった。
人を恐れなくなった動物の中に里山を拠点にして人里へ下りるものが現れ、農作物などに害を及ぼす。
上質な餌を手に入れた動物は数を増やして山や森林の環境に圧力を加え、生態系のバランスさえ脅かしてしまう。
そうして崩れてしまった人と動物の関係を“正常な”形に戻し、生態系の保護によって生物多様性の保全を目指そうというのが、本書のテーマでもある「ワイルドライフ・マネジメント」だ。
本書は主に兵庫 -
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[ 内容 ]
国の森林皆伐計画によって繁殖力が強化され、森林の土壌に大きな影響を与えるまでに増えたシカ。
数年に一度大量出没するクマ。
食物だと認識していなかった人間の農作物を、採食し始めたニホンザル。
神戸市内でゴミをあさるイノシシ…。
かつて人と動物の“入会地”であった日本の里山は、今や野生動物の領有地となっている。
その原因は何か?
人と動物と森のあるべき姿とは?世界的サル学者と専門家たちが、日本の動物の現実に迫る。
[ 目次 ]
野生動物の反乱
里山とは何か
ワイルドライフ・マネジメント
ニホンザルの被害はなぜ起こるのか
シカと向き合う
ツキノワグマ―絶滅の危機からの脱却
イノシシ― -
Posted by ブクログ
自然人類学の観点から、人間の文化の発祥の秘密にせまる試みです。
著者は人間を「存在自体が不思議な生物」といいます。そのうえで、「人類だけが持っている諸特性、たとえば善と悪、愛と憎しみ、社会を支えるさまざまな高度なしくみ」について、「人類も生物の一種である以上、それらは生物の進化の産物として理解できる性質のもの」だとする立場をとり、その謎を解明することをめざしています。
サルの社会についてフィールド・ワークをおこなってきた著者が、サル学の基本的な知見を紹介しつつ、そうした視点から人間の行動を説明しようとする試みがなされており、おもしろく読みました。本書のような方法によって人間の文化的行動を完 -
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読書録「小さな博物誌」3
著者 河合雅雄
出版 小学館
p202より引用
“ 百万年に百キロしか移動しないアオイの
船に乗り、ギフチョウは中部以西の日本一帯
にすみついた。その無量の進化の営為が、珍
物漁りの文明人に今、無残に狩り獲られよう
としている。”
目次から抜粋引用
“漆の名刀
すももとゴリラ
子猫を育てる猿
一万年に一キロの旅
枯木立の中の緑の灯”
霊長類研究の第一人者である著者による、
生物との思い出等を記したエッセイ集。
過去他社刊行、「小さな博物誌」と「森の歳
時記」加筆・訂正・文庫版。
子供の頃の生き物との出来事から四季を彩
る動植物の生態についてまで、情 -
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縄文時代の遺跡調査によると、狩猟対象の8割はイノシシとシカだった。牛と馬は5世紀頃に渡来したが、乗り物、運搬、耕作に用いられ、食用にはされなかった。日本で牧畜が発展しなかったのは、雨量が多いため牧草地をつくることが難しかったことが大きな要因。鶏は時告げ鳥として神聖視されていたため食用にされず、江戸時代になってから鶏卵食が始まった。綱吉の生類憐みの令は、兵農分離を進めるために、農民から鉄砲を取り上げることが目的だったとの説も出されている。
戦前から生後しばらくにかけては、ヨトウムシ、ウンカ、イナゴ等の昆虫、ヒヨドリ、スズメ、カラスなどの鳥、ウサギ、ネズミ、モグラ等の獣による害が多かった。
明