【感想・ネタバレ】森林がサルを生んだ 原罪の自然誌のレビュー

あらすじ

霊長類は、食物が豊富な森林という楽園で、進化してきた。この生態的背景が、元来は植物食であった霊長類に、肉食獣的性質をも内包するという、二面性を持たせた。この傾向を強くおし進めたのが人類で、草食獣的性質が善の範疇に入る徳性を生み出し、肉食獣的性質が悪の範疇に入る行動を創造することになった。森林を舞台に進化した霊長類ゆえ、人間がサルから背負ってきた悪の原罪とは? 人間、この不思議な生物の進化の源流!

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Posted by ブクログ

自然人類学の観点から、人間の文化の発祥の秘密にせまる試みです。

著者は人間を「存在自体が不思議な生物」といいます。そのうえで、「人類だけが持っている諸特性、たとえば善と悪、愛と憎しみ、社会を支えるさまざまな高度なしくみ」について、「人類も生物の一種である以上、それらは生物の進化の産物として理解できる性質のもの」だとする立場をとり、その謎を解明することをめざしています。

サルの社会についてフィールド・ワークをおこなってきた著者が、サル学の基本的な知見を紹介しつつ、そうした視点から人間の行動を説明しようとする試みがなされており、おもしろく読みました。本書のような方法によって人間の文化的行動を完全に解き明かすことははたして可能なのかという疑問をいだきながらも、人間と自然との関係について考えるための興味深い議論が提供されており、たのしみながら読むことができました。

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2019年12月18日

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