武田晴人のレビュー一覧
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「頼まれてもいない原稿を書いた」(263頁)という武田先生の勘違いから生まれた本。ただし,2020年という時代に,岩崎小彌太の評伝が新書で刊行された意義は大きい。
小彌太はこれまで,岩崎彌太郎の甥(彌之助の嫡男),三菱財閥最後の社長という捉え方をされていたかもしれないが,彼にとってそれは必ずしも本意ではなかった。むしろ,第一次大戦期から第二次大戦期に及ぶ日本企業の一経営者としてのポリシーに注目すべきであるという。それは,青年期に留学したイギリスで身につけた生活規範から生まれたであろう「社会的に恵まれた地位にある者が果たすべき役割」(250頁)であり,「企業が,その本業において果たすべき社会 -
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ネタバレ【『戦後政治史』→政治潮流を俯瞰的に見る】
『占領と改革』に引き続き、岩波新書の近現代史シリーズを読んだ。
この本は、なぜ日本は高度経済成長を遂げることができたかを追うものである。
論旨は主に以下の3点だ。
・経済成長が求められた理由は、国民の完全雇用を第一義に、同時に生産性の向上も求めていたからだ。
・質的な「経済発展」ではなく、量的な「経済成長」が追求されたので、成長中には様々な弊害が生じ、生活基盤の整備は遅れた。
・経済成長はあくまで手段に過ぎず、経済成長が目的となりえる現代社会の論調には疑問の余地がある。
そして、経済成長が達成された背景として、政治との強い連関が挙げられる。特に、 -
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ネタバレ[ 内容 ]
日本経済の「後進性」が問題にされ、近代化・合理化の必要性が熱心に叫ばれた時代から、「経済大国」としての地位を確立する時代まで。
「経済成長への神話」はどのように浸透し、また「ゆがみ」を生じさせていったのか。
人々の欲求と政治の思惑はいかに寄り添い、あるいはすれ違い続けたのか。
通説に大胆に切り込む意欲作。
[ 目次 ]
第1章 一九五五年と一九六〇年―政治の季節(転機としての一九五五年 独立後の政治不安 保守合同と五五年体制 国際社会への復帰 春闘と三池争議 日米安全保障条約改定問題 五五年体制と戦後民主主義)
第2章 投資競争と技術革新―経済の季節(経済自立から所得倍増へ 投 -
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岩波新書『沖縄現代史』の著者が、その内容を薄めたのがこのリブレット。
サンフランシスコ平和条約第3条によって、日本政府の施政権下から切り離され、本土の日米安保条約・行政協定(1960年以降は地位協定)とともに、サンフランシスコ体制の軍事的負担を強いられた沖縄県の悲痛な叫びが聞こえてくるようである。
戦後の日本本土の人間ははともすれば忘れがちであるが、しかし、日本全体あるいは東アジア全体の軍事バランス・安全保障に多大な影響を及ぼしてきた以前の経緯、また依然として広大な軍用地が存在し、騒音等の公害や米兵による犯罪が根絶されない現状、そして、これからも基地縮小・軍用地返還が漸次進められるで