坂井克之のレビュー一覧
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2000年代の研究を中心にまとめられた入門書。真面目に書かれているのは分かりますが,脳科学においては何ができたらメカニズムが分かったと言えるのだろうか。例えば,まえがきに次のように書かれている。
ですが,私たちがこのようなことを感じ,考え,行動しているときに脳の土の部分が働いている,という実験結果は単なる豆知識に過ぎません。脳研究が本当に目指しているのは,脳がこのような仕組みになっているから私たちはこのように感じ,考え,行動するのだ,というメカニズムを明らかにすることです。このためには私たちの心の動きの結果として脳活動があるのではなく,脳活動の結果として心が生まれてくるのだということを明 -
Posted by ブクログ
世は「脳科学」ブームだが、一般にもてはやされる脳科学と実際の脳研究がいかに違うか、一見わかりやすい話がいかに科学的でないかを述べつつ、あらさがしに留まらず、「脳科学」がなぜお茶の間でもてはやされるのかを考察しようとした本。
「科学っぽく」わかりやすいストーリー(脳に関する「仮説」)に異を唱え、一方で、それを糾弾するだけではなく、なぜ巷で「脳ブーム」とも言える様相を呈しているのかを考えようとした姿勢は、単に「トンデモ科学」を糾弾する本とは一線を画すものだと思う。
また、実際に脳研究に携わる立場から、脳の画像解析の実情を語る部分はおもしろく読めた。特に、1)ある場合に脳のある部分が活動していたと -
Posted by ブクログ
今、心の中で「右手を動かそう」と考えて実際に右手を動かす。実はこの瞬間の8秒(!)も前に、右手を動かすための情報が脳内で表現されているらしい。では「わたし」に向かって「『右手を動かそう』と考えろ」と命令しているのはいったい誰なのか?またある実験では、画面の右あるいは左だけに一瞬だけヌード写真を提示し、その直後の判断の反応速度を調べている。すると意識には関知できないほどの短時間であるにも関わらず、ヌード写真を提示した側の反応が早いことがわかっている。ではヌード写真を「見た」のは誰なのか?この本を読むとこの「わたし」の意識は、臓器である脳の物理的情報処理による仮象的現象であることがよくわかる。著