坂井克之のレビュー一覧
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脳科学の最新知見を、実際の研究結果に基づいてわかりやすく解説されている。
内容と分厚さのわりには、読んでいて重さを感じさせないのですごいと思った。
・意図的な注意(あれが気になる)が生じるときというのは、その場所に対応した神経細胞活動が増加している
・「もの」をみるときは、それをどのように認識するかという過程が大事
(一度顔に見えてしまったらそれにしか見えない、とかそういうの)
・他人の気持ちを思いやる行為には、ミラー・ニューロンが関わっている
著者は、現時点でわかっていることとその限界、すべてが明らかになればいいというわけでもないこと、を最後の章で書いている。
研究者として、得られた知見とその限界、知見がどのように応用されるかという見通しを書く姿勢にとても好感が持てた。
ちなみに、東大文学部で行った講義を書籍化したものらしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
ふと何かを思いつき、考えた末に決断する。
結果、喜んだり後悔したり…。
これらはすべて、脳の働きのおかげである。
そうだとすると、脳活動を読み解くことができれば、その脳の持ち主の思考や感情を読み取れるのでは?
そして、思考や感情の主体である「わたし」とは何かについても明らかにできるかもしれない。
本書は、脳画像研究の方法から最新の成果までを紹介。
脳科学によって、未来はどう変わりうるのだろうか。
[ 目次 ]
第1章 外の世界、内の世界(未来の脳社会 脳の中の世界地図 脳のアナリスト 見ることと、見えること)
第2章 「わたし」と「あなた」(時間を越えて存在する「わたし」 知性を制御する仕組み 社会的な脳)
第3章 物質としての脳と心(遺伝子によって左右される脳 脳はここまで変わる 二一世紀の読心術)
終章 物質現象の結果として「わたし」が生まれる
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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[ 内容 ]
「脳科学者」の活躍や脳画像技術の進歩もあって、急速に一般社会に浸透した「脳科学」。
医療、教育、司法、マーケティングなどさまざまな分野で研究成果の応用を期待されてもいるが、その過熱ぶりに危うさはないのか―。
第一線の研究者が脳科学ブームを批判的に検証。
研究現場の現状もフェアに見つめながら、いま求められる科学と社会の関係を問う。
[ 目次 ]
はじめに メジャー化した脳科学
第1章 脳科学ブームの立役者
第2章 未来技術としての読脳術
第3章 リアリティーのある研究成果
第4章 脳科学のレトリック
第5章 研究者のダークサイド
第6章 ちいさなマニフェスト
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[ 内容 ]
知性を司り、人を人たらしめているといわれる前頭葉は本当に脳の中でいちばん大事な領域なのか。
脳の中に住んでいて意思決定を行うと考えられている小人=ホムンクルスの正体は前頭葉なのか?
最新の研究成果から前頭葉神話を検証し、私たちの「意思」の脳内メカニズムに迫る。
[ 目次 ]
第1章 前頭葉は脳の最高経営責任者
第2章 前頭葉損傷による症状
第3章 前頭前野は脳の重役室
第4章 企画担当重役-クールな外側前頭前野
第5章 営業担当重役-儲かって何ぼの底部前頭前野
第6章 総務担当重役ー調整役の内側前頭前野
第7章 特別仕様の前頭前野
第8章 前頭葉から意思は生まれるのか
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Posted by ブクログ
ここ数年、脳の機能画像を用いた研究はスピードも量もベラボウになっているが、この本ぐらい新しく、読みやすく、まとまっているのはすごい。脳の神話ともいうべき過度の脳科学信奉をいましめつつ、道徳、ブレイン・デコーディング、無意識、ミラーニューロン、可塑性の問題、知能などのトピックについて、オリジナルの文献にあたりながらカバーされている。・網膜の細胞が一億個、というのはどこかで読んだことがあったが、視神経の線維は八十万本なので、八十万画素と考えるべきなんだろう。最近のデジカメよりも劣っている。・顔領域の活動は、車好きの人であれば車種の違いにも反応するなど、顔に特化しているというよりも個別化を司るにすぎないという議論もある。・一次視覚野レベルの活動性も意識によって左右される
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Posted by ブクログ
ネタバレ「わたし」は、どこにいるのか
『心の脳科学』という題名から想像していたのは、脳の仕組みを知れば心の正体が分かる、という話だった。ところが読み進めるうちに、むしろ逆の問いが浮かんできた。脳という物質的な装置が、視覚、運動、記憶、注意、感情、社会性などのさまざまな機能を働かせた結果として、「わたし」という感覚が立ち上がってくるのではないか、という問いである。
世界は「そのまま」見えているのか
私たちは外界を直接見ているわけではない。感覚器官から入った情報は脳で処理され、過去の経験や身体の状態などと結びつき、「これは何か」「自分にとってどういうものか」という世界の見立てになる。私たちは世界そのものではなく、脳によって構成された世界に対して行動しているのではないか。
そう考えると、自分自身もまた世界の一部である。自分の身体の位置や動き、感覚、記憶などを含めて、自分についてのモデルもまた脳の中に形成されている。
「高い高い」が教えてくれること
幼児を抱き上げて「高い高い」をすると、子どもは喜ぶ。そこでは視覚的な変化、眼球の動き、前庭感覚、身体感覚、身体の運動、そして抱いている他者との関係が、一つの経験の中で結びついている。
これは単なる刺激ではなく、「自分が動くと世界の見え方が変わる」「世界が変化すると自分の身体にもこうした感覚が生じる」という対応関係を学ぶ経験とも考えられる。世界のモデルと自己のモデルが、相互作用のなかで少しずつ整合していく。その積み重ねの先に「わたし」があるのかもしれない。
知性とは何か
ここから、知性についても考え直したくなった。知性は、単に頭が良いことでも、知識が多いことでもない。世界を見立て、その見立てから何かを識別し、行動につなげ、結果を受け取って見立てを更新する。その循環を成立させる能力なのではないか。
ダニエル・カーネマンのいうシステム1とシステム2も、この文脈で捉えると興味深い。過去の経験からパターンを素早く取り出す処理と、必要に応じて立ち止まり、複雑に考え直す処理。その使い分け自体が、限られた脳の資源のなかで世界と関わるための仕組みなのだろう。
生存と効率を万能原理にしない
当初は、知性を「生存戦略としての便益を最適化する能力」と考えていた。しかし、この説明を何にでも適用するのは危険だと思う。進化も、環境に対する完全な最適化ではない。偶然生じた変化のなかで、たまたま残ったものもある。現在うまく機能しているからといって、それがその目的のために存在するとは限らない。
同じことは、効率や美しさについても言える。「無駄がないものは美しい」という仮説も、まず疑ってみる必要がある。効率的なのに美しくないもの、美しいのに非効率なものは存在する。仮説は、うまく説明できる事例を集めるのではなく、反例によって一つずつ引き算していくほうがよい。
脳という装置を眺めながら
本書は、私にとって脳科学の知識を得る本というより、自分の仮説を検証するための装置のように感じられた。視覚、身体、記憶、社会性など、一見すると個別の機能について丹念に説明される。それら一つひとつは、いわば「雪片」のようなものだ。しかし、それらが相互に結びつくことで、「世界」と「自分」と「行動」の関係が形づくられていく。
そして最後に残るのは、「これだけの機能が相互作用したとき、なぜそこに『わたし』という一つのまとまりが生まれるのか」という問いである。
答えを得たというより、問いの立て方が変わった。そのこと自体が、この本を読んだ一番の収穫だった。