デニス・ケアリーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【Talent/Strategy/Risk 人材・戦略・リスク 長期的な価値創造を担う取締役会の仕事】
【本書の概要】
本書は、資産運用会社の元CEO、経営アドバイザー、HRコンサルの3名が執筆したものである。
彼らは、取締役会が企業の長期的な価値創造に貢献するためには、人材、戦略、リスクの3つの視点を重視すべきだと主張する。本書では、それぞれの視点について、著者たちの考え方と、彼らがインタビューした著名企業の実例を紹介する。
【人材の視点】
人材は、企業が中長期的に価値を増やしていくための最も重要な要素である。そのためには、採用、教育、評価、ローテーションなどの人材管理を効果的に行う必要がある。
(採用)
自社のニーズと競合他社の状況を把握し、優秀な幹部候補を確保することが重要である。
(教育)
将来の事業機会に対応できる能力開発を行うこと。すなわち、まず自社の将来の事業機会とはなにか?を定義しておくことが重要である。そのうえでそれに合致しトレーニングであること。
(評価)
従来の360度評価(社内完結)に加えて、社外の多角的な評価(+90度)の450度評価であること推奨する。なぜならば、外部評価を取り入れることにおいて、強みと弱みを明確にしたうえで「育成」「機会」を考察することができるからである。
(ローテーション)
特に、離脱してほしくない、育成したい幹部社員に対して、計画的に実施することが望ましい。会社が強化したい事業領域、それに該当する部署を中心に、1部署において3年から4年かけて必要な能力、技術習得に集中してもらうイメージである。
ーーーーーーーー
【戦略の視点】
戦略は、企業がどのように収益を生み出すかを定義するものである。そのためには、自社の顧客と提供価値を明確にし、競合他社との差別化を図ることが重要である。
(脅威の把握)
新興企業や既存の競合企業の動向を常に把握し、脅威に対応することも必要である。
(戦略の評価、選定)
長期的な企業価値につながるかどうかを基準にし、その根拠を明確にすることが望ましい。また、戦略の評価においては、賛成派と反対派の意見を聞き、やりたいこと、勝てること、儲かることの3つの論点を検討することが有効である。
ーーーーーーーー
【リスクの視点】
リスクは、企業が目標を達成する際に直面する不確実性や障害である。
(重要度と発生頻度)
コンプライアンスを守ることはもちろんのこと、守りづらいリスクを特定し、重要度と発生頻度に応じて対策を講じることが重要である。
(考慮する2つリスク)
オペレーションリスクとレピュテーションリスクの2つの側面があり、それぞれに注意を払う必要がある。レピュテーションリスクも、社外の専門家をいれたうえで、半期に1回、すくなくても1年に1回を実施することが望ましい。
(リスク管理)
リスク管理委員会などの専門的な委員会を設置し、取締役会に対して補完的な役割を果たすことが望ましい。
(業績予想)
変化の激しい環境に対応するために、バッファを持ったガイダンスを出すことが推奨される。資本市場に対しては、ガイダンスを設けた理由を説明することで一定の理解は得られるだろう。
(株主対応)
短期的なアクティビストの意見も聞くことは大切であるが、長期的な大口投資家の意見と比較し、評価することも必要である。 -
Posted by ブクログ
CEOに向けて書かれているが、ヒエラルキーに生きるビジネスマンが、人材ファーストの変化を知るための良書。
ヒエラルキーからの脱却がテーマとしてある。これは今まで確立したやり方を手放す必要がある。確立しているやり方を手放すのは多くの場合、恐怖を伴うが、変化するためには必要。
まず人材ファーストと聞いて、そらそうでしょ。と思うが、今まで人材ファーストだと思っていたものが、全然違っていたことを思い知らされた。
現実とのギャップとして‥
ヒエラルキー型組織に依存している時点で変化の早い時代に対応できない(誰もが感じているが‥)。CEOは、クリティカル2%人材に、「自ら」かかわる(重要案件として時間を割く)。人事を財務の視点より下に組織するのではなく、対等に置く(人材ファーストだから)。人事は管理や手続き業務とは別に戦略にフォーカスした人材活用で会社の価値創出にかかわる(戦略のためデータアナリティクスも必要となる)。トップダウンではなく、ステップ・バイ・ステップで段階的にコンロールする。
人材が戦略を主導する。
戦略より、数字より、他の何よりも、まず人材。
イメージとしては‥
人材主導型組織のCEOは、バスケットチームのコーチになることと似ている。もっとも有能な人材が創造性を十二分に発揮し成功できるように支援すること。
これはCEOがどれだけ賢明でも、勝利を保証することはできない。トップ人材が勝利を掴み取らなければならない、ということ。
いよいよ、フリーエージェントの要素が強く、従来の終身雇用は、当てはまらない。
このような変化に対して、これから先何を準備すべきか?
1. CEO、CFO、CHROからなる「G3(Group of 3)」を形成し、財務と人材両方の視点から意思決定を行う
2. 「クリティカル2%人材」を特定して最重要なポジションへ配置する
3. 最新のHRテクノロジーを用いてデータに基づいた人事施策を実行する
これを行動に移すには、CEOの力は必須。そして目的を理解し、実行できる人材が必要。
人材ファースト、おもしろい。
選択と集中の対象が変わったということですね。
-
Posted by ブクログ
事例が盛りだくさん。それも、殆どが著者達自ら当事者らにインタビューした内容で構成されているだけあって、よくあるちょこちょこっと調べたような上部だけの浅い紹介でなく、現場の空気感まで伝わってくるような、リアルなストーリーを感じられるしっかりとした記述が良かった。
さらに、これら膨大な事例から、取締役会のあるべき姿、リーダーシップのあり方を、チェックリストという形に落とし込むことで上手く纏めている。忙しい人は取り敢えずこの部分だけ読むというのも良いかも。
日本のプライム市場の一般的な水準が本書のレベルに到達するのはまだまだ遠い未来だろうから、正直、いち実務担当者である自分には、本書から得た知見を今すぐ活用する機会はなかなかないのだが、こうした先進的な企業の教訓を今知っておくのは、決して無駄ではないと信じている…。
-
Posted by ブクログ
21世紀に勝ち残るカギは、戦略ではなく「人材」。世界屈指の企業経営のアドバイザー3人が、人材を最大限に活用し、成功するための企業戦略を説いた書籍。
人が価値を生みだす“人材ファースト”の組織へと変革する上で、基盤となるのは、次の3つ。
① G3を創る:
人事と財務を適切に連動させられるよう、CEO、CFO(最高財務責任者)、CHRO(最高人事責任者)から成るG3体制を確立する。
②〈クリティカル2%〉を特定し、育てる:
平均的な社員の何倍もの価値を生みだす社員を見極め、スキルを向上させる。
③人事をデジタル化する:
最先端の、人材志向の、データに基づくテクノロジーを活用する。
変革の基盤が整えば、職場を人材ファーストへ変革する。そのために必要なのは、次の3つの要素。
①アジリティ(機敏性)を備える:
大半の意思決定をチームや個人に任せ、社員全員が自発的に動けるようにする。
②「プラットフォーム」を考える:
小規模なユニットに意思決定や人事の決定などを委ね、社員の創造性を引き出す。
③仕事を意義あるものにする:
社員を変革の中心に据え、仕事の意義を探究する。
人材主導型企業は、万人向けではなく、個々に応じて人材開発を行わねばならない。そのためのステップは、次の3つ。
①デジタルツールを活用して、〈クリティカル2%人材〉を最適な仕事に配置し、成果をモニタリングする。
②社員に対し、年に一度の年次評価ではなく、適宜、複数の方面から効果的なフィードバックを行う。
③全社員が、継続的に学習し、スキルを向上させられるよう人材開発のシステムを改造する。 -
Posted by ブクログ
時代の変遷とともに多様化・複雑化する企業の経営環境にあわせて役割が変化しつつある「取締役会」に着目し、そのあるべき姿や課題と解決策について論じたビジネス書。
著者は、取締役会が単なる形式的な役職だった時代から、機関投資家の台頭と圧力によって経営の監視役としてコーポレートガバナンスの担い手となり、さらに今日では経営者とともにリーダーシップを発揮することが求められていると主張し、経営理念やCEOの選解任にように取締役会が責任をもつべきことと、資本配分やリスクマネジメント等の経営幹部と協力すべきこと、さらには業務遂行等取締役会が関与すべきでないことを明確化し、経営幹部と適切なコミュニケーションをとることで、取締役会がうまく機能すると説く。
著者の主張の裏付けとして、過去に実在の企業の取締役会が行った数々の成功・失敗事例も紹介され、アップルにおけるスティーブ・ジョブズのCEO復帰は「史上最高の決断」と評されるが、確かに取締役会の果たすべき役割が変化していることは理解できるものの、結果論に過ぎないのではという気もする。また著者自身が述べているとおり、取締役会自体のあるべきコミュニケーションも容易ではなく、絵に描いた餅になりかねない。「言うは易く行うは難し」という身も蓋もない感想を持ってしまった。