宮田雄吾のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
10年以上前の本になるのだが、いまだに虐待の被害を受けている子供がいる以上は、この本に描かれている事もまだまだリアルな話なのだろう。
冒頭から残酷すぎる虐待の事例から始まる。それから身体的虐待、重度なネグレクト、性的虐待、心理的虐待で心身ともに大きく傷つけられた子供の事例が描かれている。どれも残酷すぎて現実なのかと目を逸らしたくなるようなものばかり。そして傷ついた子供だちの異常な行動(奇声を上げる、暴力、自傷行為)を目の当たりにすると、虐待さえ受けていなければこうならなかったのにと心が痛む。虐待が子供を変えてしまったのだ。そしてその子供達と必死で向き合う著者をはじめ施設の職員の方々には頭が下がる思いだ。夜逃げや暴力、時には自殺を試みる子供達に対して子供も職員も毎日命をかけて生活している。回復に向かった子供もいれば、半ば途中で施設を出てしまった子もいる。施設の基準上、いずれは子供も社会に出なければならない。そのためにも自力で生きていけるような先を見据えた支援をしている。傷ついた子供達にどのような支援をしているのかも具体的に書かれていた。
そして、後半はなぜ虐待を起こしてしまうのかについて書かれている。虐待する親のタイプの分析もついている。虐待は特別な人がするのではなく一見普通の人や誰でも引き起こす可能性がある。今後虐待を引き起こさないためにどうしたら良いか書かれていて、自分も気をつけなければならないと気付かされた。
しかし、この本を読み終わって何より切ないのは、治療が終わっても終わらなくても、心身に大きな傷を抱えながら社会に出て自分でどうにかしていかなければならないと言う事だ。本人は何も悪くないのに生きづらさを持ったまま残りの人生を送る事になる。もちろん支援先はあるだろうが施設のような所はないだろう。もちろん虐待がなくなる事が先決なのだが、『サバイバー』にこの先も救いがあるような社会になって欲しい。
子供に関わる人だけでなく、多くの人に読んでもらいたい本だった。 -
Posted by ブクログ
子どもを巡る、保育、養護、療育、貧困対策、性の多様性、居場所作りなどについて各テーマごとにコンパクトにまとめられており、第一線で活躍しマスコミにもよく登場する筆者たちが現場発の生の声で語っている。
今保育士の受験勉強の途中で、児童養護や福祉について学んでいるので、乳児院や養護施設、里親、虐待からの保護などいろいろディープな環境にある子どもたちの事情に興味があって読んでみた。
正直読んでいて辛くなる。
一般人に縁がありそうなのは保育園の待機児童問題くらいで、その他は不幸にして家庭や親に恵まれなかった子たち、または、生まれつきの障害や性的マイノリティーなどの苦労を負った子たちだ。
しかしその子たちに罪はないわけで、より傷つかず幸せな人生が送れるよう周りの大人や社会が配慮してあげる他ない。
家庭というスタッフ差し替え不可能な閉鎖環境での子育てではなく、スペシャリストの介入を受け入れながら幅広い人たちに見まもられる成長が、普通の子にも苦境にある子にも与えられるとよい。
江戸や明治の頃のように養子や里子が一般的だったり、住み込みのねえやや下働きなど家族と従業員の中間みたいな人がいた方が豊かだった気がする。
夫婦を超えていく逃げ恥ではないが、もっと気楽に血縁を超えていけないものか。
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Posted by ブクログ
筆者は、長崎の情緒障害児短期治療施設「大村椿の森学園」園長かつ子どもたちの治療にあたる主任医師である。
この、略して情短という施設は、虐待などにより親と暮らせない子どもが共同生活をおくる児童養護施設に、治療という機能を加えた施設である。なんとなく児童養護施設にその機能があるものと思っていたのだが、明確に違うらしい。
筆者が勤務するこの施設に入所してきた子どもたちの実例を紹介しながら、虐待がいかに子どもの心身を深く傷つけ、治療に困難が伴うかを訴えたのが本書だ。
登場する子どもたちは、どの子もあまりにいたいけで不憫。このような状況で生きてこなければならなかった彼らを思うと心底胸が痛むが、実はこの学園に入所できただけでも運が良かったといえるのかもしれない。発見されずに、今も生死をかけたギリギリの暮らしを余儀なくさせられている子どもが、もっといるに違いない。
虐待の最も厄介なところは、その発見されにくさ、介入の難しさだろう。
それでも、たとえ一部であったとしても、こうして専門家の治療を受け、時間がかかっても少しずつ良くなっている事例を知ると、少し心が救われる。諦めなくていいんだと思えるのが嬉しい。
必ずしも登場する全ての子どもが、筆者の下で改善を見せて退所していくわけではないのが切ないが。
退所後の子どもたちのその後がわかるともっとよかったとは思うが、致し方ないのだろう。
情短のような施設がもっとできて、発見されずに苦しむ子どもたちが減って、ひとりでも多くの子どもが辛い壮絶な生活から抜け出し、当たり前に得るべき幸せな毎日を手に入れることを願ってやまない。 -
Posted by ブクログ
子どもの人権をまもるというテーマに沿って……かな? けっこうそうそうたる人々が稿を寄せている。宮田雄吾(大阪共立病院・大村椿の森学園)、山野良一(名寄市立大学・専門社会調査士)、駒崎弘樹(認定NPO法人フローレンス代表)、仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)、熊谷晋一郎(東京大学・当事者研究)、大塚玲子(編集者・ライター)、内田良(名古屋大学・教育社会学)、大貫隆志(「指導死」親の会共同代表)、大原榮子(「メンタルフレンド東海」世話人代表・名古屋学芸大学)、前川喜平(元文部科学省事務次官)、白濵洋子(佐賀女子短期大学・学校保健)、内藤朝雄(明治大学・社会学)、山下敏雄(弁護士)、村田和木(ライター・社会福祉士)、南和行(弁護士)、土井香苗(国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表)といった方々。
一方で、どこか子どもの立場に立った活動なのだろうかと思わせもする。子どものためを思って考えての活動ではあるだろうけど、子どもの思いに直結できているだろうか。ほんとにほんとに子どもの人権をまもる活動といえるだろうか。厳密にいえば、たとえとして、大人が余裕をもって子どもを育てられるまちづくりのような活動は、子ども第一ではないと思う。そんなことを気にしながら、各人の稿を流し読んだ。
なぜ木村草太氏が編集になっているのかちょっと疑問。それらしい人ではあるけど、これまた厳密にいえばそのものズバリな人って感じがせず、彼の知名度に頼って編者にしたのかなって勘ぐってしまう。