デイヴィッド・ピリングのレビュー一覧

  • 幻想の経済成長

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    GDPの有用性を認めつつも、人間の幸福度を測るには問題があることを提起しています。筆者は今までの経済記事を、鵜呑みにはしない方がいいよと言っているように思います。すごく乱暴に例えるなら、工場を建てて環境を破壊して、さらにその環境を戻すための施設をつくればGDPは増えるのだろうけど、それでいいですかということかと。国民一人あたりのGDPというワードを少し疑いながら、報道を見ることになりそうです。

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    2021年06月06日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(下)

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    下巻では、高齢化、ロスジェネ、歴史問題、ジェンダー問題と、意見も分かれ且つ非常にデリケートな社会・政治問題へと切り込んでいく。様々な人とのインタビューや論評を元に書いていくが、全体的には中道左派寄りの人々の意見に好意的・近年勃興してきた「ナショナリスト」には手厳しい。著者の日本語版あとがきで書いている通り、「日本の内部から徹底的に調べたり、考察したりしようと努めたが」あくまで本書は「部外者の視点で」「他国の人間の目に日本がどのように映っているか」を表現している。

    だからこそ面白かった。

    ジェンダー問題については他国視点というより「女性視点」が強調されており、そしてちょっと「偏り過ぎじゃ・・

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    2015年11月24日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(下)

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    FTアジア編集長著、原書はBending Adversity - Japan and the art of survival。エコノミストやタイムズ紙などが大絶賛するだけあって、戦前、戦後の歴史、経済、文化、社会などを表面的な事象にとどまらず、ジャーナリストらしいインタビューを踏まえて非常に明快にまとめられている。
    日本人としても、改めて自分の立ち位置について深く考えさせられる素晴らしい一冊。

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    2015年08月02日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(下)

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    上巻からおもしろかったですが、最後まで緩みなくおもしろかったです。政治・行政・経済のトップクラスや文化人から、阪神大震災や東日本大震災で被災した普通の市民、さらにはそういう特別な経験は特にないごく普通の市民まで、実に幅広い日本人にインタビューをしており、しかも多様な意見をバランス良く採り上げてくれており、非常に勉強になるとともに、好感が持てました。
    作者自身の意見もかなりはっきりと述べられており、日本の実情をよく知る外国の知識人にとって、今の日本がどのように見えるのかについて知ることができるのも、日本人として実に参考になります。
    訳も非常にこなれていて読みやすいですし、高校生以上の人には一度は

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    2015年02月12日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    以前から新聞書評で見かけて気になっていた本でしたが、読み始めると期待以上のおもしろさ。フィナンシャル・タイムズの記者による日本論ですが、日本を是々非々で見ていて、非常にバランスの取られた意見で説得力があると思いました。
    引き続き下巻も楽しみです。

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    2015年02月02日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    「日本論の新・決定版」
    書評は偽りでなかった。文句なしにおもしろいの五つ星評価。「災い転じて福となす」のことわざを引用した東日本大震災のレポートから始まり、「島国」「明治維新」「失われた20年」「小泉純一郎」等のキーワードでなぜ今の日本がこうなったかがわかる。しかも無味乾燥でない文で。藤原正彦氏、村上春樹氏、飯島功氏へのインタビュー内容も興味深かった。すぐ下巻を読むつもり。

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    2014年12月31日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(下)

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    2014年112冊目。

    フィナンシャルタイムズの東京支局長であったイギリス人著者による日本像。
    容易に読み入ることのできる良文の中で、日本の歴史解釈や日本人観において偏りが起こらないよう相反する視点をうまく組み入れている。
    それも、本人の解釈以上にインタビューにおける生の声によって語っている箇所が多いところも魅力の一つ。
    自国のことをもっと真剣に知り、考えたいと強く思わせてくれるきっかけの書となった。
    近現代の日本を知るための入門書として強くおすすめしたい。

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    2014年11月18日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    2014年111冊目。

    黒船襲来、第二次世界大戦における敗戦、そして3.11、日本が直面してきた困難と、そこからの再起をフィナンシャルタイムズの東京支局長であった著者が描き出している。
    「日本は言われるほどの停滞をしていない」という意見には励まされ、逆に「期待されていたほどの成果が出せていない」という意見には危機感が生まれ、歴史認識を揺さぶられる。

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    2014年11月14日
  • 幻想の経済成長

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    GDPは第二次世界大戦中のアメリカが国民所得推計を測る為、生み出された。漠然と、戦争能力を査定するための指標が始まりだと認識していた。また、お金でカウントできないものは含まれない。つまり、犯罪率が低く、公共サービスの高い効率性、健康で長い平均寿命など、こうした点はGDPに含まれない。本著は、こうしたGDP信仰に冷や水を浴びせる一冊だ。しかし、こちらはGDPなんて端から絶対視していないため、自ら冷や水を浴びる。まるでアイスバケツチャレンジだ。

    人々の幸福感は絶対的な富の量ではなく、周囲の人間との相対的な差異によって決まる。不平等賃金を拒否する猿の例を引くが、まさに。カウントして、労働を測り、比

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    2023年05月29日
  • 幻想の経済成長

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    週刊東洋経済でインタビューを読み、興味がわいたので書店で購入しました。結果から言うと満足しています。GDPの限界論については以前から一連の議論がなされていたかと思いますが、ここ数年間の議論熱の高まりを見ると、今度こそ本当に変化が起こるのではないかと感じており、その背景や世界中での議論の広がりなどは本書から包括的に理解できました。著者はフィナンシャル・タイムズの記者ということで、現地での取材を前面に打ち出した記述が多いのですが、特に新興国の統計作成官へのインタビューはなかなか興味深く読みました。統計作成は政治に密接に関係していること、それは特に新興国では顕著だということがにじみ出ている内容でした

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    2023年05月02日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    外国人の目で、分かりやすく日本の近代、戦前、戦後を総ざらい。
    第4章、「なぜ日本は戦争に向かったか」は、日本が戦争に至った(至らされた?)状況がよくわかる。
    欧米に肩を並べたいが、認めてもらえず、劣等感が不満に変わる。日本ばかりが牽制されると思い込み、暴発し、ついには太平洋戦争に至る。
    アジア侵攻も当初は解放戦争かもと思われていたが、実際は露骨な人種差別政策をとり、近隣諸国から失望された。

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    2020年10月06日
  • 幻想の経済成長

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    GDPの有効性は認めつつは万能ではないと説き、政治においてあまりにも重きを置かれすぎていることを批判する本。
    例えば、穴ほって埋めるを繰り返すとGDPは上がるが、そういうものを排除した指標が必要である。
    しかし指標というのは常に恣意的なものであり、であるならば国民の価値観が反映されたものであることが望ましい。

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    2019年06月19日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    ネタバレ

    日本史のおさらいとしてとてもよくまとまっていたのがありがたかった。英語でなく日本語で読めるのは楽でよい。

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    2019年06月01日
  • 幻想の経済成長

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    読むのにとっても時間がかかった。理由は、この本は学術書や実用書の類ではなく、「面白いノンフィクション、ルポタージュ」の体裁だから。

    いつものようにビジネス書を読んでいる時ならば、マーカーと付箋を片手に「読み返した時に拾うところ」を残していく感覚で読み進めるのだけども、今回は実に時間がかかった。エキサイティングな小説を読んでいるように活字を追ったし、適度に難解なので読み返すこともしばしば。

    読書感としては「フラット化する世界」(トーマス・フリードマン)とよく似ている。ジャーナリスト特有の時折ユーモアや皮肉を交えた饒舌な筆致。貨幣価値に交換可能な尺度ばかりに注目すると本来的な幸福観を歪めたり見

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    2019年05月13日
  • 幻想の経済成長

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    日常で数多く耳にするGDPには、1つの数値で簡潔に経済を示せる利点がある一方で、その簡潔さゆえに家事などの仕事量は示すことができない。
    GDPは便利なものであるが、過信は良くなく、多面的な見方が必要であると思う。

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    2019年05月11日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    Financial Timesのアジア編集長にして元日本特派員のDavid Pilling氏、日本を巡る渾身の論考、世界的にもかなり売れているらしい。

    第1章、津波の章だけでも読む価値があるが、本書のもっとも魅力的な点は、日本という類まれなる秩序と繁栄を手にした国に対する最大限の敬意を表明しつつも、根拠のない「日本特殊論」には一切くみせず、他の多くの国と同じように、多くの悩みを抱えた不完全な存在として描いていることだ。
    「・・・日本人は自国がほかに例のない調和の取れた社会であると考えたがる傾向があるが、他国と同様、この国にも階級、地域、性差、年齢などによる対立があるし、主流派の文化に対抗する

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    2019年01月02日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    著者は、フィナンシャル・タイムズの元東京支局長。東日本大震災の体験をきっかけとして、この本を執筆した。
    主なテーマとしては津波と東日本大震災、著者が考える日本の歴史、現在の日本について考察している。震災以降、日本に対する海外の見方は悲観的だが、日本は決して衰退していないと説く。日本はこれまで、何度も厳しい危機的状況に陥っているが、その度に復興する力を示してきた。だから様々な議論はあるが、今後も上手くやっていけると考察している。但し、現代の日本人に対しては手厳しい意見もあり、特に日本の政治家の右傾化には不信感を持っているようだ。
    ジャーナリストらしい視点で多くの日本人にインタビューし、現代の日本

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    2016年08月15日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    わかりやすくまとまっています。
    取材先の人物について著者の好き嫌いが如実に文章に現れていて、個人的には面白かったです。人によっては不快に感じるでしょう。

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    2016年01月17日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    英・フィナンシャルタイムズ記者による、反「日本論」的、日本論。つまりステレオタイプな日本論に属することを良しとしない、現代日本論。よい意味で、見たこと・聞いたことがあくまで中心。ちゃんと外から見た日本って感じ。下巻と合わせて、時代を振り返る一冊として。

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    2015年06月10日
  • 日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)

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    黒船、敗戦、バブル崩壊、3.11と多くの国難に見舞われながら、その度に立ち上がってきた日本という国と日本人の物語である。上下巻に分かれている。原題は『Bending Adversity: Japan and the Art of Survival』そのまま訳すと「災い転じて福となす:日本とその生き残りの芸術」といったところか。英語の他にも独、伊、仏、中国語などに翻訳されるようである。上巻では、3.11の地震と津波に襲われた被災地から物語ははじまる。そして、震災の時に日本人が見せた規範意識の高さから、話は「日本論」へと移っていく。本書の第一の特徴は著者が直接インタビューするなどして得てきた情報が

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    2015年03月22日