ロス・トーマスのレビュー一覧

  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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     新潮文庫は偉い! ここのところ古いロス・トマ作品をチョイスし翻訳し、流行りの時期が過ぎたとは言え、初訳、しかも文庫での出版という、ファンとしては垂涎ものの本を供給してくれているのだ。古い時代の作家なので今更ロス・トマと言ってもわからない人は多いのかもしれないが、かく言うぼくにとっては海外探偵小説及びハードボイルドを語る上での最高レベルの作家の一人がこのロス・トーマスであり、当然ながらぼくは全作読破しており、前作に愛着を覚えている者の一人である。

     ロス・トーマスの全盛期は1980年代(現在70歳のぼくが20~30代の頃)であり、パソコン通信で冒険小説&ハードボイルフォーラムを主宰していた時期に最大級に自信をもっておススメしていた作家の筆頭でもある。MWA最優秀長編賞を獲得した当時の話題作『女刑事の死』以来、邦訳が連続していた時代ということもあるが、何と言っても独特の語り口や、ストーリーテリングの裁き方などに奇妙なユーモアやアイロニーがある上、登場人物の個性が豊か過ぎて好きになってしまうキャラの多さたるや世界トップクラスの筆の冴えとしか言いようがない、等々、褒めちぎり放題の当時の状況であった。

     本書はその『女刑事の死』直前の長編作とあって、ロストマらしさがやたらに発現された作品であるように思う。二人主人公作品というのはこの作家の場合全く珍しいことではないのだが、本書ではその二人の個性が際立っており、国際色も豊かで、見えるものが見えたそのままではないという妖しさや、登場人物の背景に立つ家族や関係者たちの存在までもがどこか胡散臭く見えるところなどは非常にこの作家の天才ぶりを見せてくれるものである。

     語り口の妙は読み易さというところに繋がるし、見えているものが後に異なる光に投影されると全く別のものに変化してしまうというイリュージョニスト的作風もこの作家独特のものである。軽妙な語り口と猫の眼のように変わる視点と、なによりも我らが主人公たちの(本書でも主人公は二人の性格・境遇の異なる男たち)魅力的な行動力学が読書の推進力である。

     ショッキングな冒頭のシーンから、様々な人物の光と影が軽妙に交錯して、ラストのどんでん返しに雪崩れ込むロストマ節をこの時代になってもまだ新作として味わえる奇跡がまさに有難い。新潮社さん、この勢いでどんどん未訳作品を世に出して頂けることを願ってやみませんよ。

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    2026年03月12日
  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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    ネタバレ

    2026年の6冊目は、ロス・トーマスの「悪党たちのシチュー」です。恥ずかしながら、初めて、ロス・トーマスを読みました。1983年の作品ながら、今読んでも面白いのは、傑作の証だと思います。謀略スリラー、コンゲーム、バディ物の要素も有り、1つに括るのは、難しいです。
    冒頭のシトロンの強烈な体験の回顧シーンから、ラストのヘールの場面まで、緩むこと無く進みます。
    トゥカモンドに到着してから、ラストまでが本当に素晴らしいと思います。特にラストの回収シーンが大好きです。脇役の登場人物1人1人まで、きちんとキャラクターが立っているのも、流石だと思います。翌年に発表された「女刑事の死」もぜひとも、読みたい所です。
    ☆5.0

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    2026年02月11日
  • モルディダ・マン

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    締まっています

    訳者さんはサラパレツキー等の翻訳で有名な方。
    ロストーマスには、マイケルパディロやウーのシリーズがあるが
    この主人公はそうしたシリーズとは別物の作品。
    最後に一気にアクションがあって事態を解決するのは、
    ロストーマスのお約束として、事態の説明をするのに
    頭でアクションがあり、うまいこと読者を掴むながれになる。
    この辺の進め方はとても上手い。
    翻訳は割と出てるけど電子化はされてないので、原文でゆきなさいとの思し召しなのか。
    お好みで。

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    2024年11月09日
  • 暗殺のジャムセッション

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    冷戦交換ゲームの続編。
    最高に面白い。クールで酒好きのおっさんがFBI、米国財務省、MI6、ギャング、某国首脳を巻き込んだ陰謀に巻き込まれる。
    幾人かの死者は有るが陰惨なものではない。日本のハードボイルドもこんな作品を生み出せるようになって欲しいな。

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    2022年11月03日
  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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    アフリカ某独裁国家の刑務所で食人という悪夢を経験したことでトラウマを抱えて帰国し、落ちぶれていた辣腕ジャーナリストのシトロンは、くせ者政治屋ヘールに雇われる。現政権の大きな弱みともなるスキャンダル情報を入手すべく、協力を求められたのだった。勇躍、中米の軍事国家へと調査に向かったシトロンは、隠蔽されていた同国での過去の不祥事の内実を探りにかかるが……。思わぬ展開、魅力的な人物造型にも磨きがかかった、悪だくみと騙し合いの極旨ごった煮【シチュー】は、1980年代を代表する巨匠の大傑作。

    痛快な小説。ロス・トーマスをまだまだ読みたい!

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    2026年03月19日
  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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    唯一無二のシブさに痺れちゃう!政治の裏側で生きる悪党たちの犯罪&政治諜報小説 #悪党たちのシチュー

    ■あらすじ
    アフリカの刑務所に収監されていたジャーナリストのシトロン、帰国後に政治家の資金調達係であるヘールに雇われる。ライバル政治家が不利になるゴシップ情報を収集すべく行動するも、様々な利害関係者がふたりを襲う… 国をつかさどる悪党たちの犯罪&政治諜報小説。

    ■きっと読みたくなるレビュー
    この唯一無二な感じ、さすがロス・トーマスですよ。古き良きアメリカンクライムムービーを観てるみたい。

    まず物語の冒頭、最初のシーンで一気にストーリーに引き込まれますよね。主人公のひとり、ジャーナリストのシトロンがアフリカの刑務所で強烈な体験をするのです。

    めっちゃ不愉快なプロットなんだけど、緊迫感やカッコよさも同時にあるという不思議さ。これから何がおこるか分からないというワクワク感も押し寄せてくる。いやー、さすがですね。

    このシトロンは無茶で退廃的な人生を歩んできた影のある人物なんです。謎の男っぽさがモテる秘訣なんだよなー。しかもまた母親も実力者らしく、裏社会では暗躍してそう。でも親子関係には暗い過去があって… といったように、人間性に厚みがあり過ぎんのよね。

    もうひとりの主人公、政治屋のヘールもシブイ。狡猾で抜け目ないイメージ、彼もきっとモテるに違いない。この二人がどう絡み合うかってところが読みどころなんすよ。そんなモテそうな二人には当然イイ感じの女性がいる。もちろんロマンスの描き方も小綺麗でセンス抜群でした。

    物語の筋としては、政治的ライバルを陥れるためにゴシップ情報を手に入れようとする前半。中盤以降は、様々な権力者が登場して犯罪もスケールアップ。さらには中南米の政治家、将軍との駆け引きが拡大していく。

    正直なところ途中途中のディティールはよくわからなくなるんだけど、丁寧に説明しないところが魅力なんだよね。本筋は犯罪&政治諜報小説だと思うんだけど、冒険小説でもあり、人間ドラマでもあり、まさしくシチューのごった煮です。でも終盤にかけてはちゃんと清々しさもあって、長い映画を楽しんだような気分を味わえますよ。

    偉大な小説家ロス・トーマスの新翻訳、1983年の作品。もちろんクラシックな作品ではありますが、無類の独自性があって、いつも新しさを感じさせてくれるんすよね。さらに混沌とした政治の裏側を描くところなんか、まさに現代こそ読んでおきたいですね。

    ■ぜっさん推しポイント
    めっちゃシブい作品でしたね~。背中で魅せるカッコ良さがあるんですよ。あと洋画のラブシーンって、やたらカッコイイじゃないですか。あんなのを文字で楽しめるってのがイイすよね~

    以下、本文引用 110頁。こんなクールな文章は、他ではなかなか味わえないと思うの。

    ――魅力的で身なりのいい女とひどく悲し気な顔の男を眺めた。ただの政治関係の仲間というだけじゃない。たぶんベッドもともにしている仲だ。そう思いながら、自分のことを認めているのに気づいて少し驚いた。何かを認めたり、認めなかったりするのは、少なくとも二年ぶりのことだった。

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    2026年02月08日
  • 暗殺のジャムセッション

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    久しぶりにロス・トーマスの新作が出た。しかも、「冷戦交換ゲーム」の続編。私はあいにく前作を読んでいないが、単体としても十分楽しめます。この際、絶版になっている立風書房刊の作品群も、早川で出しなおしてほしい!ということで次は、「冷戦交換ゲーム」を読むことにします。

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    2011年12月31日
  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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    『あらゆる面白さをごった煮(シチュー)に』
    の言葉通り、本当にたくさんの個性やハードボイルドとコミカルが混ぜ合わさっていて、でもお腹いっぱいになる事は無く、最後までスピーディーに読ませられた。

    残酷さも節々で見られるのに、何故か鬱々としない。
    時代は80年代と古いのに、それをあまり感じさせない。
    不思議な作家さん。
    映像化した物を見たくなった。

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    2026年05月15日
  • 悪党たちのシチュー(新潮文庫)

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    昔懐かしいハードボイルドの筆致で物語が展開されて行く
    面白かったが80年代の小説、いかにも古い
    懐古趣味の方はどうぞ

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    2026年03月04日
  • 暗殺のジャムセッション

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    とても久しぶりのロス・トーマス。その昔に文庫で読んだ「女刑事の死」とか、あらすじは忘れてしまったけど、いかにもアメリカンな書きっぷりを堪能した記憶がある。そして突如来たブーム(愚者の街)に乗る前に読んでみたが、やはり面白いね。3.8

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    2023年12月22日
  • 暗殺のジャムセッション

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    人の信用・信頼は付き合った年月ではなく、金次第、というのがこの世界の慣わしだ。目の前に大金が積まれれば誰もが多い方に賛同したがる。人の浮気心は見た目以上に軽い。現実、誰もが選択の間違いから罪を犯すのだ。

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    2021年10月11日
  • 暗殺のジャムセッション

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    主人公のマックは外国の要人暗殺を相棒が実行しなければ、人質となっている自分の妻が殺されてしまう、相棒が暗殺を引き受けたとしても、いずれ口封じで妻も相棒も自分も殺されるだろうという絶望的な状況に置かれながら、冷静に淡々とやるべきことをこなしている。主導権や決定権が相手方や相棒にあって、自分にないからかな。不眠や悪夢に悩まされながら驚くほど平静だ。アクションよりも策謀や取引や相手の裏をかくことが主の、これも一種のスパイ小説か?

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    2016年06月25日
  • 暗殺のジャムセッション

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    ジャムセッション=レギュラー・メンバーでないミュージシャンが寄り集まって自由に、そして互いに刺激し合って演奏すること。原題とはかけ離れているが、作品をわかりやすく表現したいいタイトルだと思う。
    つかみどころのない飄々としたキャラが登場し、どこまで嘘か本気かわからないことを平気で口走る。この辺りの軽さが何となく心地よい。緊迫したシーンでも行間から伝わってくる雰囲気は実にゆるく、自然と力の抜けた曖昧さにハマっていた。
    ストーリーはいたって単純なのだが、次から次へと増える登場人物に多少戸惑うことがあるかもしれない。敵なのか見方なのかわからない怪しげなキャラとの騙し合い。この相手の裏をかく策略戦がストーリーの見どころ。平坦な筆致の割りに実はかなりのスピード感があるので、気がつけば終盤に差し掛かっていた。マニアが多いのも頷ける作家である。

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    2010年01月24日