岩瀬達哉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【感想】
本書でグリコ森永事件を初めて知ったが、心から驚いた。これほどまで大掛かりな脅迫事件を演出した犯人の知能の高さと、実際に複数の企業から数千万円を奪った実行力の高さ。そして時効まで行方をくらますことに成功した運の良さ。
脅迫企業の裏で警察が動いていることを犯人に悟られてはならないため、警察は表立って活動できない。その状況を逆手に取り、何度も要求を繰り返しては現金受け取りをキャンセルすることで、警察側を焦らして慎重にさせ、捜査を後手に回らせる。その後「約束を破って警察に通報した罰として、毒入りの菓子を置く」と脅し、株価を暴落させる。そして企業や警察の反応を世間に喧伝することで、「かい人21面相から脅迫が来たときは、警察に届け出るよりも、裏取引に応じるほうが損害は少なくて済む」と他企業に思わせ、秘密裏に金をせしめる。
企業、警察、消費者の心理を逆手に取って、ここまで見事な大立ち回りを演じられるのが本当に信じられない。間違いなく日本犯罪史に残る劇場型犯罪であり、その詳細を事細かに知ることができるいい一冊だ。
――グリコ森永事件を担当した元一課長のひとりも、こう言った。「われわれがそれまで相手にしとった粗暴犯には及びもつかん、計画性と知恵のある連中やった。だから、現金を取りに来た者だけを捕まえるという大方針ができた。周辺をウロウロしている者を引っ張っても、結局、警察が捜査しているのがバレるだけで、うまいこといかん。肝心の主犯を捕まえられんかったら、被害企業への報復がものすごいことになるのは、目に見えている。それに」と、一呼吸おいてから語を継いだ。「現場捜査で失敗すると、警察庁から大阪府警に来ている本部長や刑事部長にキズをつけてしまう。自分たちの責任だけですまんから、この事件、勝負をかけられへん苦しさがあった。選択肢は現行犯逮捕だけやった」
官僚機構の弊害が生み出した捜査方針は、信じられないことだが、捜査の基本である証拠の収集と現場検証を犠牲にするという事態も生み出していたのである。 -
ネタバレ 購入済み
未だ事件は終わっていない…。
2021年10月読了。
10年程昔に放送され話題を呼んだNHK の「未解決事件」で、本物の子供の音声テープを聞かされて鳥肌が立った時以来、この事件については継続的に関心を持っている。『塩の声』も面白かったがあれはあくまで創作話。とにかく真実が知りたいのである。
本書は新聞書評にて採り上げられていた為、購入。著者が十年近い歳月を掛けて書いたものだけあって、細部まで綿密に調べ上げられていると思った。脅迫された企業側の声が聞けた事が、何よりの収穫だろう。又、滋賀県警本部長の自殺のくだりは涙が出そうになった。
しかし、本書は肝心の犯人像へ迫っている告発本と云う位置付けではなく、あくまで「当時の、細部まで突き詰めた詳細な調査資料」に過ぎないと感じてしまったのは、著者に対してやや酷だろうか…?
犯人にいきなり捕えられ、運転手役を強要された方等、一生心の傷は癒されないのかと思うと、この極悪事件の首謀者に対して限りなく怒りを憶えると共に、
当時のタテ割り組織丸出しな大阪府警を初めとする警察組織の相次ぐ失態には、何ともやるせない気持ちにさせられてしまう。
オウム事件にしろ、國松長官殺人未遂事件や世田谷一家殺人事件にしろ、警察組織内の意思疏通の悪さが如実に現された事件についての本を読んでいると、「お役所のタテ割り行政の典型」を見せ付けられているようで、本当に心が萎えてしまう。
「今後はもうこんなみっともない事は起こさせませんよ!」と云う、警察側からの何らかの決意表明があって欲しいし、物事をあやふやにしない強固な姿勢こそが、市民からの信頼を勝ち取る最良の手段なのだと、心から警察関係者の皆さんにはお伝えしたい。 -
Posted by ブクログ
小説「罪の声」は以前読んでいて映画も観ていたが、
グリコ森永事件に関しては、当時かなりの割合で新聞でキツネ目の似顔絵を見ていた…の記憶のみ。
紙面をじっくりと読んでなかったのかもしれない。
これは、ジャーナリストが12年もの歳月をかけて取材したもので年表と地図でも詳細に記している。
それだけでも世間をかなり騒がせた事件だとわかる。
そして知らないことも多く、グリコ森永だけではなく、他にも被害にあった企業があったこと。
一般市民が、犯人に拉致されたこと。誤認逮捕されたこと。
そして滋賀県警本部長の悲劇…なんともやるせない気持ちになる。
このような事件は二度と起きてほしくない。
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Posted by ブクログ
松下幸之助の歴史というより、特に戦後の日本の歴史というにふさわしいかも。盛田昭夫もすごいと思ったが、やはりこの人もすごい。やっていることのスケールと次元が違う。野村吉三郎が日本ビクターの社長をやっていたとは知らなかった。しかし、愛人との間に4人も子供がいたとは。。。
「正治さんは、頭はいいが、物づくりの経験や商売の苦労をしていない。人使いも下手。何か問題が発生すると、ただ怒るだけで、しかも居たたまれんぐらい理詰めでやりますからね、重役陣からも事業部長からもいまひとつ信用がなかった。」
<どんなに苦しくても、打つべき手はある。それが発展に結びつくわけです。艱難汝を玉にす、という言葉がありましょう。そのとおりです。投げたらおしまいです。最後の最後までがんばらないといけません>
「幸之助さんの天才たる所以は、いったん取り組んだ仕事は、結果が出るまでやめない。結果が出るまで続けるので、失敗もないというわけです。」
「いまにして思えば、ふたつの理由から怒ったんでしょうな。ひとつは、そんな『金儲け』にもならんことに熱をあげるな。そんな暇があるなら仕事せい、ということでしょう。そしてもうひとつは、幸之助さんの本心は、社員を金太郎飴のように育てたかったんですなあ。個性的な社員がバラバラに動くのではなく、会社が示した方向に向かって結束して働く社員を理想としていた。まさに、松下電器の総合力は、金太郎飴にあると信じていたということです」 -
Posted by ブクログ
言うまでもなく、松下幸之助は、日本における不世出の企業家の一人だろう。
しかし、少なくとも前半部分からは、なぜ、松下幸之助が日本を代表する企業を作ることができたのかが理解できなかった。
典型的なワンマン経営者、というよりもほぼ独裁、無茶なことをしては路頭に迷う寸前まで資金繰りに苦しくなる、とても優れた経営者とはいえないエピソードが多い。
おそらく、松下幸之助があれだけの企業に育て上げたのは、幸之助の異常なまでに鋭敏なビジネスに対する嗅覚があるのだということは、本書からはっきりと読み取れた。
やれAIだビッグデータだともてはやされている現在に松下幸之助がいたら何をしただろうかということには興味がある。 -
Posted by ブクログ
ジャック・ウェルチにしてもスティーブ・ジョブズにしてもイーロン・マスクにしても、そして我が国代表、松下幸之助にしても、経営者はカリスマとして語られ賞賛され誹謗され神なき時代の伝説になっていきますが、彼らが神話化されればされるだけ、その後を継ぐ者の矮小さは避けられないのが必然だと思います。この本は偉大な経営者の後を継ぐものたちの権力闘争とも言えないような感情的ないざこざが会社を危険な水域にまで追い込んでいか過程を赤裸々に描いていく情けないレポートです。登場人物はあまりに嫉妬と無責任にまみれたおっさん達ばっかなので会社帰りの居酒屋トークの延長線として楽しめました。そもそもの原因も松下幸之助が家庭の問題を会社に持ち込んだものだし…(子供を会社に入社させなかった本田宗一郎と違いすぎ!)それでもダメ社長が三代続いても潰れなかった松下という会社は大したもんだ、とも思いました。シャープや三洋のこと考えると。それにしても会社の経営って難しいんですね。