グリコ森永事件が起きたときは7歳でなんとなくしか覚えていない。
映画『罪の声』を見て事件について知りたくなり読んだ。2010年から2011年にかけての執筆ということで本書の内容は最新の情報なのだろうか。警察は2度、犯人を逮捕できるチャンスがありながら失敗している。一般人を利用した一度目のすれ違いは運
...続きを読むもあるかもしれないが2度目の高速下での取り逃しは捜査情報の秘匿が裏目に出た…というかそもそもすぐ情報を漏らす大阪府警の体質に問題がある。犯人グループは運がよかった。
脅迫文はひらがなを多用していたのは知っていたので無学な人間によるものかと思ったが、本書で多く読むうちに正反対の印象を持った。少なくとも無学ではない。金を運ぶ時間を計算していたり用意周到でかつ慎重、かなりの頭脳犯だろう。そして金を欲していながら金に困っていない、だから少しでも異変を感じたらサッと手を引ける。
しかし本書ではキツネ目がリーダーとされているのには根拠があるのだろうか。犯人はキツネ目と、脅迫電話をかけてきた35歳前後の女性、二人の男児、ビデオに映った男、運転手の少なくとも6人と見ている。そもそも本当にキツネ目の男が犯人で合っているのか。女の似顔絵はどうか。また、本書では犯人グループが裏取引によってどこかの企業から金を脅し取ったのが事実なようにも書かれているが、その根拠について書かれていないのはなぜか。書けないのか。『罪の声』で動機としていた株価操作については否定されている。
日本の犯罪史上初の劇場型犯罪といわれる。失態を繰り返し一向に成果を挙げられない警察と、それを揶揄する犯人グループ。当時、後者に肩入れするような庶民がいたとしてもおかしくないが、マスコミが脅迫文を取り上げ過ぎたことで、陽性な、義賊的な犯人像を作ってしまった部分もありそう。キツネ目の男は今も生きていれば70代。生きているのだろうか。
裏取引で1億払って解決、ただし露見したら社会的信用を失うリスクを取るか、正道を行って100億の損失を出すか、企業経営者としては苦しすぎる選択。事件の概要は掴めたので他の関連書籍も読んでみたくなった。