あらすじ
失われた年金財源は9兆円超、紛失した年金記録は5000万件……私たちの老後を支えてくれるはずの年金制度は、なぜかくも破綻したのか。年金問題を世に知らしめた2004年講談社ノンフィクション賞受賞作に、大幅改訂&加筆した完全版。本書は2003年9月刊行された『年金大崩壊』及び2004年4月に刊行された『年金の悲劇 老後の安心はなぜ消えたか』を大幅に加筆・改編したものです。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
日本の公的年金制度の問題点についてのレポート・ノンフィクション。
日本の公的年金制度は、いわゆる「年金官僚」によって、その掛け金(保険料)を彼らの利益のために使われているというのが筆者の主張であり、その具体的な内容についてレポートしたものである。「年金官僚」たちが、自分たちの利益のために使う方法は、例えば、年金掛け金で一般的には役に立たない、無駄な施設や組織を作り、将来の年金官僚の天下り先を確保する等である。これが事実だとすれば(おそらく、かなりの部分は事実だろうという印象を持つが)、とんでもないことだと思わせる内容だ。
取材・調査は、基本的には各種文献・資料、および、インタビューによってなされているが、筆者の取材力と、この取材・調査に割いたであろう労力と時間に脱帽する。
この問題を解決するには、年金制度およびその運用に係る全ての情報を、分かりやすい形でガラス張りにすることが必要、と筆者は提言している。それはその通りだと思うし、なお、それに加えて、そういった情報をもとに内容を監査・監督する独立機関も必要なのだろうと思う。
本書(文庫版)は、2007年に発行されている。今から15年以上前の話である。2000年代前半には、年金記録データが消える、あるいは、国会議員が保険料を未納である、等、年金制度の信頼性を損なうような出来事が多発していた。そこに切れ味鋭くメスを入れたのが本書ということになるだろう。懸念事項は、では、15年後の現在、こういったことはどの程度、改善されているのだろうか?ということだ。是非、「続編」を読んでみたい。
Posted by ブクログ
2004年以降、社会保険庁の不祥事や元職員の犯行が相次いで発覚し、社会から批判が集中。昨年の参議院選挙で、自民党が歴史的大敗となった最大の要因とされた年金問題が、本当によくわかる本。
2003年9月に刊行された書に大幅加筆・改編されたものだそうで、最近のマスコミを通して何度も聞かされたお話ですが、これだけずっしりと、まとまった書になって改めて思うに、やつらの悪事もひどかったし、ここまでのさばらせてきた政治家や国民性の問題は、どげんとせんといかん、、、と思った次第。
(2008/2/16)
Posted by ブクログ
とにかく強制加入の年金システムへの依存度を減らすしか解決策はないと10年以上前から思ってきたが、それを確信に変える本である。厚生年金の方が手厚いセーフティネットというイメージがあるが、むしろ多くを搾取される道具になっているととらえる方が実態に近いかもしれない。国民年金は、頼りがいはないが、掛金が少ない分だけ被害が少ないと割り切り、自己責任に基づく戦略を独自に進める方が正解のような気がする。国外移住もまじめに考えようという気にもなってくる書籍だ。