岩瀬達哉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2025.03.23
司法、裁判所を取り巻く荒涼とした日本の断面を描いた好著。読む価値あり。文庫化されたものであり、文庫版あとがきがとても良い。
だからこそあえて苦言を呈したい。
第9章と第10章の冤罪に係る部分は「裁判所」にあるいは「裁判官」にその責任を帰するのは少々行き過ぎだと思う。
逆に第11章と第12章に述べられている「司法」と「政治」の関わりや暗闘については物足りない。
冤罪よりこちらを優先して書いて欲しかった。
再度触れる。
文庫版あとがきにある「弾劾裁判所」についてはさらっと紙幅の都合もあるのかもしれないが物足りないし、大問題を含んでいることへの言及が及んでいない。
一気読み -
Posted by ブクログ
パナソニックの社長が松下幸之助から津賀一宏まで特に人間関係の面からどのような経緯で選ばれてきたのか、またそれぞれの社長の功績(書かれてある内容は失敗が多いが)がどのようなものかを取材をもとにまとめられた本。
どこまでが本当の話なのか信憑性が怪しい部分もあるが、本を読む限りは話に説得力があり、こういう面もあるのかなと思わせてくれる。
この本が説明する限りでは、パナソニックの現在の没落は大きく以下の2点が原因となっている
・特に会長になってからの松下正治の暗躍。特に森下洋一によるユニバーサル売却を影から操ったこと
・中村邦夫によるプラズマテレビへの異常な投資
読み物としては非常に読みやすく、 -
Posted by ブクログ
日本の公的年金制度の問題点についてのレポート・ノンフィクション。
日本の公的年金制度は、いわゆる「年金官僚」によって、その掛け金(保険料)を彼らの利益のために使われているというのが筆者の主張であり、その具体的な内容についてレポートしたものである。「年金官僚」たちが、自分たちの利益のために使う方法は、例えば、年金掛け金で一般的には役に立たない、無駄な施設や組織を作り、将来の年金官僚の天下り先を確保する等である。これが事実だとすれば(おそらく、かなりの部分は事実だろうという印象を持つが)、とんでもないことだと思わせる内容だ。
取材・調査は、基本的には各種文献・資料、および、インタビューによってなさ -
Posted by ブクログ
ネタバレグリコ森永事件が起きたときは7歳でなんとなくしか覚えていない。
映画『罪の声』を見て事件について知りたくなり読んだ。2010年から2011年にかけての執筆ということで本書の内容は最新の情報なのだろうか。警察は2度、犯人を逮捕できるチャンスがありながら失敗している。一般人を利用した一度目のすれ違いは運もあるかもしれないが2度目の高速下での取り逃しは捜査情報の秘匿が裏目に出た…というかそもそもすぐ情報を漏らす大阪府警の体質に問題がある。犯人グループは運がよかった。
脅迫文はひらがなを多用していたのは知っていたので無学な人間によるものかと思ったが、本書で多く読むうちに正反対の印象を持った。少なくと -
Posted by ブクログ
すでに何度も書籍化、物語化された「グリコ
森永事件」のノンフィクションです。
あれから40年近く過ぎて、事件は事項を迎え
てしまいましたが、劇場型犯罪と言われてい
ただけに、多くの人に記憶に残っていると思
います。
それゆえ、本書の内容は事件を細かく時系列
で追うのではなく、警察と犯人が最も近づく
機会であった「現金引き渡し」の場面が中心
に描かれています。
そこで知らされる事実に対する率直な感想は
「ここまで犯人に近づいていたのにどうして
警察は捕まえることができなかったのか」と
いう驚きです。
昭和の事件とはいえ、警察の「思い込み」「
準備不足」などの失態がかなり浮き彫りにさ
れて -
Posted by ブクログ
ネタバレ時系列に沿って書かれているので非常にわかりやすい。
文章も、平易でありながら、読みやすく理解しやすくて、面白かった。
サブタイトルにある「全真相」はまあ、言い過ぎだろう。
だって犯人が逮捕どころか、特定もされてないんだもの。
でも、私が社会に出たか出なかったかくらいの頃の大事件。
リアルタイムでニュースを見ていたとはいえ、知らなかったことは多い。
誘拐・脅迫事件のため、犯人に存在を勘づかれないように秘密の保持に力を入れすぎたため、基本の捜査ができなかったり、捜査方針の徹底ができなかったりで、逮捕に至れなかったのは不運というしかない。
それと同時に、警察の捜査がいかに柔軟性に欠けているかが明 -
Posted by ブクログ
残酷な犯罪を扱う刑事裁判や、昨今では飲酒運転での死亡事故などの裁判など新聞紙面で裁判の事を目にする機会は多いです。裁判で判決を書く裁判官とはどのような行動規範を持ち、日々の裁判と向き合っているのか、最高裁判所を頂点とする組織はどのようなヒエラルキーを持つ組織なのか、これらを数多くの裁判官への取材をもとに明らかにしています。
原発の運転可否、一票の格差等々、国の方針が関わる裁判では、最高裁で出された”原発運転認可”や”格差合憲”判決を覆す判決を書いた裁判官は、ほぼ出世の目がなくなるとの事。
1960年代、若手裁判官を中心に「青年法律家協会」という勉強会があったのですが、そこに在籍した裁判官の多 -
Posted by ブクログ
同著者の松下幸之助に関して深掘りした著作の次に読んだ。パナソニックにおける人事に着目し、2代目以降の凋落ぶりが詳細な取材を元に記載されている。
一言で言えば、創業は易く守成は難しということになるものの、本当に後継者を育てるというのは難しいなと感じた。
2代目以降は基本的に創業者の遺産を引き継ぎ、それを持続し、さらに発展させていくプロセスになるので、保守的になるのは致し方ない。しかし、結果的に現状維持に陥ったり、院生を敷かれて雇われ社長になったりと、非常に難しい。
組織の中で優秀な人材が、必ずしもリーダーの器たりえるかとは言えないところにジレンマがあるんだろうなと感じる。
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Posted by ブクログ
新聞の書評で知る。
渾身のノンフィクション。
警察関係者、間接的な被害者、脅迫を受けた企業関係者への取材を通し、「今だから語れる事件」を時系列にまとめてある。
感じたことは
・県をまたがる広域捜査が圧倒的に苦手である
・前例がない犯罪も苦手である
・捜査手法に偉い人が絡むと後手に回る
ことである。
小説「罪の声」でも滋賀県での捕り物が取り上げられ、ここから潮目が変わったとあるが、実際の事件でも滋賀県の1件から潮目が変わる。
また、今まで誰も死んでいないと思っていたが、この件で滋賀県警の本部長が定年間際で焼身自殺という衝撃的な最期を遂げたことは知らなかった。
金の受け渡しで子供の声 -
Posted by ブクログ
この事件については最近、罪の声、真相と読んできて、これで三冊目だが、それぞれの解釈はそれぞれで面白かったのだが、今回のこれが一番リアルだなと思った。他の二つは小説なのに対して、これはドキュメンタリーだから当たり前といえば当たり前なんだけど、事実(だろう、だけど)の積み上げと洞察はより真に迫るものがあったように思う。ただ、犯罪としては時効になり逃げ切れたようには思えても、この本で書いてる通り、ここまで証拠が残っているのだから、(多分、法が変われば)捕まる可能性はあるのだろうし、心に蟠るそれは、一生背負って生きていかなければならないと述べているところについては、少し言葉が足りないように思えたので、