森本公誠のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
なぜ日本でほぼ無名なのかが全く分からない…それほどの人物だと思う。
14世紀のイスラーム思想家、イブン=ハルドゥーン。おそらくこの名前を聞いてピンとくる人はほぼいないであろう。あの山川「詳説世界史」ですら1〜2行でサラッと紹介される程度である。しかしその思想の深さは計り知れない。全て読むのがきつい人は本書後半の『歴史序説』まえがきと序論だけでも読んでみよう。それだけでもこの人の凄さが分かる。
本書は前半で彼の生涯について、後半では彼の著書『歴史序説』の抄訳が掲載されている。前半だけでもかなり読み応えがあるのでじっくり読み進めてほしい。世界史の教科書に全く載らない王国が出てくる上、人物名が紛らわしすぎて混乱すると思うが、それだけの価値があると思う。
今年読んだ中で1番を挙げろと言われたら間違いなく本書になる。「歴史序説」の全訳も出ているようなのでいずれ読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
著者森本公誠氏は東大寺別当・華厳宗管長を務められた方。1980年代の日本において、イブン・ハルドゥーン研究がこれだけの水準にあったとは改めて驚かざるを得ない。池内恵氏による巻末解説も素晴らしい。「この本は、学問がまだ全き姿を保っていたころのありかたをよく表すものだ。かつて学問は全人格的営為であった。一つの大きなテーマに、数十年の時をかけて取り組むことこそが学問であって、浮ついたスローガンや理論で手早く巧みに対象を切る取ることを競うものではなかった。」この池内氏の言葉は、ハルドゥーンの、そして森本氏の知的営みを的確に表現している。襟を正して読むべき一冊。
-
Posted by ブクログ
世界史についての本。
興亡の世界史というシリーズの中の最終巻。2007年に出されていたが、文庫化されるにあたって新しく手直しされたもの。
従来の世界史というのは西洋史を中心としたものであったが、本書ではそれに対してもっと多文化的で中立的な世界史を提唱している。
人口問題については、人口バランスとその国の繁栄について書かれており勉強になった。日本は戦後の復興期、高度成長期に人口ボーナス期を迎え、一気に経済繁栄した。これからは急速な高齢化と少子化で人口減少時代を迎える。経済的な縮小はやむを得ないだろうと思う。しかし、世界的には人口増加による環境問題に直面しており、日本の人口減少は今後に必要な世界的人口減少に先駆けたものと考えれば、やむを得ないのかもしれない。
海の歴史についてはインドを中心に西と東がインド洋で交流していたダイナミックな歴史が興味深かった。その後にヨーロッパの産業革命がおこり蒸気機関による船舶が開発され、西洋による世界の植民地化の歴史については、力による支配に辛い気持ちになる部分があった。
アフリカの悲惨な歴史については、最も衝撃的であった。アフリカには部族がいてそれが抗争して未開である、という今日のアフリカ像が西洋的な視点から作られたものであると書かれていた。アフリカの部族という存在は古くからの伝統かと思っていたが、西洋の植民地化で地域ごとに部族を縛り付けて孤立させ固定化した結果であると知った。
さらに、奴隷貿易がアフリカの発展に壊滅的な打撃を与えた。奴隷制度が西洋の発展と自由で民主的な生活スタイルを作ったが、その悪影響をもろにかぶった地域なのだと再認識した。
全体にアンチ西洋の雰囲気を感じたが、日本独自の世界史への関わりを提唱していて面白かった。地域ごとにダイナミックな歴史と異文化交流があったことを知ることができ、他のシリーズも読んでみたいと思った。