【感想・ネタバレ】イブン=ハルドゥーンのレビュー

あらすじ

十四世紀のチュニスに生まれ、政治家として栄達と失脚を繰り返すなかで独自の「文明の学問」を拓いたイブン=ハルドゥーン。文明と王権はいかにして崩壊するのか、都会と田舎の格差はなぜ広がるのか、歴史の動因となる「連帯意識」とは――。イスラーム世界にとどまらない普遍性と警句に満ちた主著『歴史序説』の抄訳と、波瀾の生涯。(講談社学術文庫)

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Posted by ブクログ

なぜ日本でほぼ無名なのかが全く分からない…それほどの人物だと思う。
14世紀のイスラーム思想家、イブン=ハルドゥーン。おそらくこの名前を聞いてピンとくる人はほぼいないであろう。あの山川「詳説世界史」ですら1〜2行でサラッと紹介される程度である。しかしその思想の深さは計り知れない。全て読むのがきつい人は本書後半の『歴史序説』まえがきと序論だけでも読んでみよう。それだけでもこの人の凄さが分かる。
本書は前半で彼の生涯について、後半では彼の著書『歴史序説』の抄訳が掲載されている。前半だけでもかなり読み応えがあるのでじっくり読み進めてほしい。世界史の教科書に全く載らない王国が出てくる上、人物名が紛らわしすぎて混乱すると思うが、それだけの価値があると思う。
今年読んだ中で1番を挙げろと言われたら間違いなく本書になる。「歴史序説」の全訳も出ているようなのでいずれ読んでみたい。

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2024年12月03日

Posted by ブクログ

著者森本公誠氏は東大寺別当・華厳宗管長を務められた方。1980年代の日本において、イブン・ハルドゥーン研究がこれだけの水準にあったとは改めて驚かざるを得ない。池内恵氏による巻末解説も素晴らしい。「この本は、学問がまだ全き姿を保っていたころのありかたをよく表すものだ。かつて学問は全人格的営為であった。一つの大きなテーマに、数十年の時をかけて取り組むことこそが学問であって、浮ついたスローガンや理論で手早く巧みに対象を切る取ることを競うものではなかった。」この池内氏の言葉は、ハルドゥーンの、そして森本氏の知的営みを的確に表現している。襟を正して読むべき一冊。

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2011年07月17日

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