「セブンプレミアム」誕生の背景から、差別化に向けたポイント(開発体制、
商品力の検証・改良体制)と今後の展望までをまとめた良書。
第1章にある鈴木会長のインタビューは読みごたえがあり、
「お客さまの立場に立った質的追求に限界はない」「お客さまの飽きとの戦い」など、
具体的なセブンの対応事例と併せる
...続きを読むと、非常に考えさせられる内容。
(金融業界に当て嵌めるとどうか?)
具体事例も豊富に入っており、大変勉強になる内容だが、競争力の源泉と
言える商品開発における手順「マーチャンダイジング・プロセスシート」は、
(当り前だが)ややぼかした記述になっているのはもどかしい。
また、商品の具体事例は「どれだけ成功しているか」だけではなく、
「どうやって成功に持って行ったのか」「何が成功の鍵となったのか」を
掘り下げてもらえると読み応えが増す印象。
最後に、セブンプレミアムの質重視を示す指標を、本書から抜粋。
2012年度
セブンプレミアム
・総額:4,900億円
・単品:約3億円/単品(※)
※10億円以上の販売アイテムが92種類
トップバリュ
・総額:記載なし
・単品:約1億円
①セブンプレミアム誕生の背景
・価格以前に、心動かされるようなもの、欲しくなるようなものがないことが
問題なのだ。そのような状況のなかで、安く売ることは大きな有効需要の
創出にはならず、安く売った分だけ経済を縮め、デフレスパイラルへ
直結していくという状況が現実に起こっている。
(P45-46)
・商品開発は、これまでにどこにもない、見たこともないものを
発明するのではないのです。うどんやラーメン、おにぎりといった
すでに存在するものについて、極端に言えば、レストランで食べる
以上のものができるかどうか、それが我々の商品開発なのです。
(鈴木氏インタビューP34)
②質を追求する開発体制
・原点1:絶えることのない商品の質的革新
~1年間に70%以上の商品が入れ替わる
・原点2:商品の圧倒的な差別化を支える事業インフラ
~セブンの専用工場比率は97%、L社:30%、F社:4%
・原点3:企業の垣根を超えたチーム・マーチャンダイジング
~グループ各社の商品開発部の人間が組織横断的に取り組み
(独立した専門会社にすると、サプライヤーが1つ増えただけの印象)
~外部のメーカー・ベンダーを集めた任意組織「日本デリカフーズ協同組合」
~「メーカーのポテンシャル」をカルテ化し、製品毎に最適な提携
~流通が販売をコミットすることで、メーカーが蓄積する開発力・技術力を
引き出す
・原点4:仮説・実践・検証に基づいたマーチャンダイジング・プロセス
③絶えざる商品革新 ~ 商品力を検証する仕組み
・「プレミアルライフ向上委員会」によるチェック
~1万7千人が登録するインターネットを活用したモニター組織
・OFC(Operation Field Counseler)による試食
~購入費用は会社が負担
・セブンイレブン1万5000の店頭
~セブプレミアムの75%はセブンイレブンで売上
~加盟店は売れる/儲かるもの以外は購入しない
⇒上記にPOS調査を加えて、商品を徹底改良。
(発売後、90日後には、仮説検証を義務付け)
④セブンプレミアムの今後
・2015年度に売上1兆円
・ゴールド比率を2%→15%、アイテム数も26→300
・セブンイレブンでの販売シェアを9%→12%
(平均日販67万円を5~8万円引き上げる武器に)