西寺郷太のレビュー一覧
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買ってから12年も経ってしまったが、読み始めると面白すぎて2日で読み終えてしまった。
「ノンフィクション風小説」と、執念を感じさせる緻密な取材内容、さらに楽曲や作風に対するミュージシャンならではの視点による考察。
この3つが絶妙なバランスで支え合い、この作品を充実させている。
この作品の舞台となる1980年代には生まれていない私にも手に取るように伝わってくる、当時の音楽業界の勢いやムード、日本における熱狂についても描き切る、情報量・表現力ともに見事というほかない仕上がり。
ミュージシャンとしての筆者のファンである私には、主人公(筆者)を取り巻く登場人物が知っている人々ばかりで笑ってしまったが、人物描写も素晴らしい。
なによりプロミュージシャンだからこそ書ける言葉の使い方や語り口の心地よさ、リズムのよさは他の著者には真似できないものである。
まさかこの本の出版から数年後にジョージ、マイケルが亡くなってしまうとは…。当時の筆者の心情を思いやると胸が痛む。 -
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西寺郷太氏が影響を受けたマイケル・ジャクソン、ワム、そして今回のテーマであるプリンスについて彼の圧倒的な知識と自らミュージシャンであるという同業種であることからわかる凄さを名前しか知らないような(音楽はなんとなく聴いたことはあるが詳しくない)人たちでも生まれてからデビューし現在に至るまでをわかりやすく、そして彼らのファンでも納得のいくものを書き続けているのは本当に頭がさがるというか素晴らしい仕事をされているといつも思う。
郷太さん自身もかつてはリスナーだった。そして今はプロのミュージシャンになった。小説で言えば作家は読者の成れの果てというようなところだろうか。でも、作る側になっても自身はほかの作り手の受け手でももちろんある。
プリンスのゼロ年代以降の復活について今作の中で時代が一回りしたという指摘がある。これはずっと追いかけ続けてきた郷太さん自身にも当てはまる部分はあるはずだ。
幼少期から追いかけ続けているアーティストたちへの尊敬と敬意、好奇心を持ち続けて彼らのことを伝えたい、もっと多くの人に知ってほしいと思っていた郷太さんが今の年齢になってプロのミュージシャンとして第一線に居続けてことでこれらの本が書かれるきっかけが生まれて同世代の出版人たちももっと一般の人に読まれるべきだし彼によって書かれて届くべきだと思ったのだと僕は感じている。
だけど好きだからと言ってなにかについて書くのは難しい。バランスが必要になる。僕のようにプリンスって名前ぐらいしか知らなかった人間が読んでもすげえなプリンスと思わせて引き込むことはマニアックになりすぎに時代ごとに書かれているからだろう。
プリンスという存在の生きてきた時間、歴史を郷太先生によって教えてもらっているという感覚、アーティストがファンを育てるように。郷太さんは書籍によって自分が好きなアーティストについて興味ある人間を育ている、知識を増やそうとしている感じがある。
それらもプリンスをはじめとする郷太さんが影響を受けてきたアーティストからファンとして受け継いだものをさらに下の世代に引き継いで残していこうという郷太さんの想いが伝わってくる。 -
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音楽フリークのみならず、80年代カルチャーの洗礼を受けた人たちすべてに読んで欲しい佳作。文句のない5ツ星。
まさかあのヒットチューンに日本のゴーストライターが存在していたとは。その真偽を追う旅の長さと興味深さに何度も感嘆してしまいそうになった。
ポップすぎるゆえ少し軽んじていた印象のあった「ワム!」だけれど(とはいえずっとiPodに入り続けていたが)、あの短い活動期間でこんなにも様々なエピソードと奇跡が生まれていたとはまったく思いもよらなかった。
マイケル・ジャクソン同様、ジョージ・マイケルはもっと評価されていいとすら思った。アンドリュー・リッジリーもしかりである。雰囲気を作る相棒が如何に大切かということだ。
ちょっと違うかもしれないが、この関係性は現在の電気グルーヴにも通じるものがあるような気がしたのは余談である。 -
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メルマ旬報の連載で毎号読んでいたものが一冊に綴られている。連載から郷太さんが削りさらに増やしたこの完全版というべきこの小説はノンフィクション的なものをあえて小説として描くことで多重性を持ちえている。この多重性≒多層であることとは郷太さん自身が主人公でありワムのゴーストライターをしていた日本人がいるという話からその人物に迫っていくノンフィクションとメタフィクションが混ざり合うよう、そこにあるのは真実なのか虚実なのか。
小説として書く事でしか書けないものがあるからこの小説として書かれているのだと読めばわかる。
ワムのゴーストライターをしていた日本人がいるという切り口から郷太さんが取材をして小説という物語に落とし込む事でその時代や人物を知らない人にも通じてわかるものにしている。物語とは現実をよりよく理解するためのモデルであるのだ。
80年代という時代や音楽業界で働いていた人たち、そこにいた人たちはもう定年退職をされていたり現場からは第一線から消えている。歴史を再検証するようにあの時何があったのか誰が何をしていたのかを含めて文章にして残すという郷太さんの熱意が感じられる。と同時にそれがいまできるのは自分しかいないという使命感も持っていたはずだ。でなければ、このスタイル(小説)にはなっていなかっただろう。
郷太さんはこのゴーストライター説を巡る関係者の方々に取材をして当時の資料も読みあさり徹底して調べ上げたはずだ。そして知れば知るほどに書けないことが出てきているだろう、調べれば調べるほどに表には出せない事情を郷太さんは知ってしまったはずだ。書けないことが。知っているが書かない事で先に進めたのかもしれない。それは徹底的に調べたという行為の先にあるものだろうし、だからこそ最後のラストシーンに繋がったのではないかと僕は想像する。海に投げられたのはそんな語る事ができないなにかなのかもしれない。
小説というフィクションの中に様々なノンフィクションを取り込みながら完成した作品だが、ここに至るまでの流れは郷太さん自身が好きだからこそ好きだと言って動き続けた結果、自身の音楽活動を通じてそこから派生したものが結果繋がっているのはまぎれもない事実だ。
以前、郷太さんにツイートしてもらった
「あるで!しつこくまっすぐ進んだら、ある時から自分が吸盤になったみたいに好きなもんばっかりひっついてくるでー!」という言葉、先日ツイートしてもらった
「あるで。まじであるでーーー!三十代前半で一個ずつ穴あけたビンゴ。四十前後でなんか急に色々並んでビンゴ連呼する感じ。ちょっと若い君ら、あるでーーー!!」
ということの具現化のひとつがこの『噂のメロディ・メイカー』である。
ワムが日本でライブを再びする日はいつか来るのだろうと来てほしいと最後まで読むと思う。その時郷太さんはまたビンゴの穴を一つ推してビンゴを連呼しているはずだ。 -
ネタバレ 購入済み
連載の時から読んでました
noteに連載されていた時に読んでました。
サニーデイ登場のあたりで存在を知り、掲載されている分を一気に読んで、だんだん更新間隔が空いていき、
書籍化いつになるんだろう……とぼんやり待っていました。
90年代は10代として過ごしていた自分には
こういう下北沢の風景はいつか見てみたいものだったなあ。
サニーデイやらPENPALSやらたくさんの固有名詞を楽しく拾い集める過程も楽しかったのですが
新井仁人気をこうやって書き残してくれたのが
当時在宅新井ギャルだったので特に嬉しかったです。
NORTHERN BRIGHTより断然RON RON CLOU派でした……(もはや誰にもわからない話)。
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ネタバレ・自分はここにいなかった人間だが、確かにこの時代はあった。確かなこの時代の空気がここにあった。
・特にSTARWAGON。インディーズ時代の一枚は自分も心の一枚。繰り返し聞いた。まさか西寺さんとそんな関係にあったとは全然知らなかった。その別れも含めて胸にズシンと来るものがあった。あのアルバムっぽいな、と思った。
・正直、あの頃と自分は全然変わっていない気がしていたけれど、これを読んで90年代って終わったんだな、と思った。(当たり前の事なんだけど)
・しかし、自分とは全然違う場所の話なんだけど、濃厚に自分の「この頃」を思い出した。これ、凄い小説だと思う。(少なくとも僕の様なある種の人達にとっては) -
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NONA REEVESのフロントマンであり、かつ作曲家・プロデューサーとしても活躍するポップス職人の西寺郷太が、80年代アメリカ音楽に関する愛情と優れた批評眼をもとに書き下ろしたプリンスの生涯とその音楽性についての論考。
基本はクロノロジカルにデビュー時から2015年(この本が出た翌年、プリンスは死去するため、実質的にはほぼラストアルバムまで)を振り返っていくスタイル。プリンスはとにかく多作であり、80年代の作品を愛好する自身にとっても(特に極彩色に溢れるポップ絵巻、『Around The World in a Day 』がマイベスト)、90年代以降の作品はちゃんと聞けていないものが多く、解説と共にSpotifyで聴くと発見ばかり。
自身が音楽家でもある著者の分析は非常に面白い箇所が多いのだが、中でもBPMに関する指摘は非常に興味深い。
一般的に70年代のディスコミュージック、ディスコファンクと呼ばれる曲は、BPM 110-120前後(このくらいのBPMだと気持ちよくノレる感じ)であるが、プリンスにとっての大ヒットアルバムである『Purple Rain』ではBPM135くらいから最も高速な曲では190台と、高速化を遂げる。高速化される曲はロック的なダイナミズムを持ち、アリーナなどの大会場でもわかりやすく盛り上がれることから、これが大ヒットを生んだ1つの音楽的背景ではないか、というのが本書での指摘である。
この流れでもっと興味深いのは、日本においては特にBPM 110-120の曲はヒットしにくい、という指摘である。それは例えば、
・AKB48のヒット曲の多くのBPMが150-180台のかなりの高速であること(唯一の例外としてBPMが122の「恋するフォーチュンクッキー」が言及されているが)
・アメリカではどちらも爆発的ヒットしたものの日本でもヒットしたファレル・ウィリアムズの「Happy」がBPM160であったのに対して、日本ではそこまでのヒットに及ばなかったマーク・ロンソンとブルーノ・マーズの「Uptown Funk」がBPM 116の典型的なディスコファンクであったこと
などを証左として挙げているが、この指摘は感覚的に非常にうなづけるところがあった。
しばらくこれを片手に殿下の豊富な音楽世界に浸りたいと思う。 -
Posted by ブクログ
NONA REEVESのフロントマンであり、優れたポップスメイカーとして作曲家活動も行い、かつマイケル・ジャクソンやプリンスの音楽評論でも知られる著者が、アーティストとしてのデビューを目指してもがいた90年代を描いた自伝的小説。
自らの才能を信じつつ、ひたすらデモテープを作り、信頼できるバンドメンバーと出会ってデビューを果たしていく、という著者の生き様がとてもキラキラしており、音楽を愛する人であれば必ず共感できるシーンばかり。そして、登場人物はほぼ実名であり、当時の日本の音楽シーンを代表する様々なアーティストたちとの交流が描かれており、下北沢を中心とする当時のロックバンドの様子なども知れるのが非常に面白い。
寝る直前に数十ページだけ読もうと思って読み始めたらあまりの面白さに手が止まらず、結局ラストまで一気に読んでしまった。音楽ファンにはおすすめの一冊。