あらすじ
―夢を叶えるために生きてきたんだ―
あらゆるメジャー・レコード会社のディレクターやスカウトマンが集まった1990年代後半の下北沢のライブハウス。すべてのミュージシャンの目前に巨大なルーレットが置かれていた。
NONA REEVES 西寺郷太、初の自伝的小説!
僕は相変わらず大学や下北沢から家に帰ると寝る間も惜しんでダビングを繰り返していた。デモテープを配った相手にアンケートを渡し、そこに書かれた住所に美しくデザインされたダイレクト・メールを送る。お金に関して言えばまだすべて持ち出しだ。しかし、そんな日々を繰り返している中で「ファン」と呼べるような何人かが僕の周りに生まれ始めている。ようやく上京してから、いや音楽の道を目指してから永遠に続くかと思われた長い「スランプ」のトンネルを抜け出そうとしている実感が湧いてきた。
「やったるでー!」
ひとり暮らしの東中野ヒルズで布団にくるまりながら、僕は大声で叫ぶ。
(本文より)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
青春ものの少し青くさい感じも90年代後半の空気感にぴったり。時折り差し込まれる時事ネタが、同時代を生きた人達の心をくすぐる。野茂はパイオニアになったし、メジャーでも背番号51はイチローのものに。マイケルも筒美京平もなくなってしまったな。
Posted by ブクログ
・自分はここにいなかった人間だが、確かにこの時代はあった。確かなこの時代の空気がここにあった。
・特にSTARWAGON。インディーズ時代の一枚は自分も心の一枚。繰り返し聞いた。まさか西寺さんとそんな関係にあったとは全然知らなかった。その別れも含めて胸にズシンと来るものがあった。あのアルバムっぽいな、と思った。
・正直、あの頃と自分は全然変わっていない気がしていたけれど、これを読んで90年代って終わったんだな、と思った。(当たり前の事なんだけど)
・しかし、自分とは全然違う場所の話なんだけど、濃厚に自分の「この頃」を思い出した。これ、凄い小説だと思う。(少なくとも僕の様なある種の人達にとっては)
Posted by ブクログ
NONA REEVESのフロントマンであり、優れたポップスメイカーとして作曲家活動も行い、かつマイケル・ジャクソンやプリンスの音楽評論でも知られる著者が、アーティストとしてのデビューを目指してもがいた90年代を描いた自伝的小説。
自らの才能を信じつつ、ひたすらデモテープを作り、信頼できるバンドメンバーと出会ってデビューを果たしていく、という著者の生き様がとてもキラキラしており、音楽を愛する人であれば必ず共感できるシーンばかり。そして、登場人物はほぼ実名であり、当時の日本の音楽シーンを代表する様々なアーティストたちとの交流が描かれており、下北沢を中心とする当時のロックバンドの様子なども知れるのが非常に面白い。
寝る直前に数十ページだけ読もうと思って読み始めたらあまりの面白さに手が止まらず、結局ラストまで一気に読んでしまった。音楽ファンにはおすすめの一冊。