天野頌子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
“「三井が気づいていたかどうかはともかく、とりあえず第一段階をクリアしたってことが重要なんじゃないか。次はいよいよ、好きです、付き合ってください、の方の告白だな。がんばれよ!」
江本はパンパンと瞬太の肩をたたいた。
これまでも瞬太は何度か三井と二人きりになったことはあったのだが、ドキドキすると耳や目がむずむずしてキツネに変化しそうになってしまい、恋の告白どころではなかったのである。
「え、でも、化けギツネだって告白したばっかりだし……」
「今のおまえの勢いなら大丈夫だよ」
江本はニカッと笑って右手の親指をたてた。
「そうかな?」
「そうそう」
「もたもたしてたら、三井を他の男にとられちゃうぜ」
満足そうなゲップをしながら岡島が言う。
「うっ」
「さっさとあたって砕けてこい!」
江本にガシッと両手で肩をつかまれ、瞬太は思わずうなずいてしまった。
「わかった!」
「砕けるのはどうなのかなぁ」
高坂が首をかしげるのを横目に見つつも、江本にのせられ、すっかり舞い上がってしまった九月の昼さがりであった。”[P.13]
4巻目。
今回も面白かった。
瞬太君次巻では頑張ってよ!頑張って告白しちゃえ!
“授業が終わった後、瞬太はふらふらしながら陰陽屋へたどりついた。
休憩室のベッドで漫画を読んでいる祥明に、うらみがましい視線をむける。
「おやキツネ君、まだアルバイト許可が取り消されていないということは、今日は起きていられたようだな」
「……委員長たちに見張りを頼むなんて卑怯だぞ……」
「おまえだってアルバイトの許可を取り消されたら困るだろう?」
「そりゃそうなんだけどさ。うう……寝不足と自分の顔に残った湿布の臭いとでくらくらする……」
「湿布?」
祥明はおきあがって、すっきりと高い鼻を瞬太の顔に近づけた。
「たしかに臭うな。一体何があったんだ?」
「委員長たちが、おれが居眠りしないようにって、湿布をはったりわさびをぬったりしたんだよ!」
瞬太が訴えると、祥明は腹をかかえて笑いだした。
「やるな、あいつら」”[P.233] -
Posted by ブクログ
“「じいちゃん、これどのくらい読んだの?」
「ほとんど読んだよ」
「まじか、すごいな」
漫画以外の本をまったく読まない瞬太は、感嘆と驚愕のまじった声をあげた。
「もしかして祥明も?」
「ヨシアキも子供の頃から、よくここにこもって本を読んでいたけど、せいぜい半分か三分の一だね」
「子供の頃から?」
「普通の男の子がやるような、サッカーやキャッチボールはあんまり好きじゃなくてね。雨の日はもちろん、晴れた日にも一人で本を読んでいたよ」
だから陰陽屋なんて妙な商売をはじめる大人になったのか、と、瞬太は納得する。
「そういえば、最近、ヨシアキの様子はどうかな?」
「あいかわらずだよ。面倒くさがりだし、子供には冷たいし、祭文は二つしか覚えてないし」
「ほほう」
愉快そうな笑みがこぼれる。
「あ、ごめん、じいちゃんの孫だった」
瞬太は慌てて謝った。”[P.117]
恋のお話短編集的な。
瞬太君もう一押し頑張って。
“「でもおまえ、ドキドキすると必ず耳がキツネにかわっちゃうんだろ?」
「うっ」
「手を握ろうとしたところで、耳がキツネになっちゃって、三井に、きゃー沢崎君その耳なに!?やっぱりあの記事本当だったのね!?なんて騒がれてみろ。雰囲気ぶちこわしだぜ?」
「ううっ」
「話しとけ。きっちり事情を説明しとけ。でないと一生三井とキスできないぞ」
「その前に、好きだって告白すらできないとか言ってなかったっけ?」
高坂からも追い討ちがかかる。
「そ、そうだった……」
「ずっとこのままただの同級生でいるのなら、なあなあでもいいんじゃないのか?」
岡島が、優しいのかそうでないのかわからない見解をのべた。
「でも三井ってけっこうかわいいから、沢崎がもたもたしているうちに、他の男子にとられちゃったりするかもしれないけどな」
江本がニヤッと笑う。
「ううう……わ、わかった。三井に話すよ。話せばいいんだろ?」
瞬太は自分でももういったい何度目だかわからない決意表明をした。”[P.244] -
Posted by ブクログ
“「あ、そうだ。おれ、どうせ授業中も寝てばっかりだし、高校やめちゃうっていうのはどうかな?」
「「絶対だめ!」」
みどりと吾郎は同時に言った。
「えー……いいと思ったんだけど……」
「あたりまえでしょ!せっかく奇跡的に都立に合格したのよ」
「陰陽屋さんに就職するっていうならまだしも、一日二、三時間のアルバイトのために高校をやめてどうするんだ。ちゃんと将来のことも考えなさい」
「うん……」
両親に異口同音で反対され、高校中退案はひっこめざるをえなかった。
「それに、高校をやめたら、もう三井さんにも会えなくなるわよ。いいの?三井さんと一緒の高校に通いたくて、飛鳥高校を受験したんでしょ?」
「か、母さん、なんでそれを!?」
瞬太は真っ赤になってうろたえた。三井春菜は中学からの同級生で、瞬太が常々、いいなぁ、と、ひそかに思っている女の子である。小柄できゃしゃでかわいくて、その上、いつもシャンプーのいい匂いがするのだ。”
今回も面白かったー。
高坂くんがなかなかお気に入り。
toi8さんの表紙も素敵。
“「もういいわ、ショウがそうやって逃げまわるつもりなら、あたしは一生、あなたの責任を追求し続けるから!」
高らかに呪いの言葉を吐くと、季実子はくるりときびすを返し、陰陽屋をかけだしていった。
祥明は、倒れるように椅子にへたりこむと、大きくため息をついた。
「悪かったな……」
珍しく槙原に謝る。
「びっくりした。最短失恋記録だ」
槙原は頭をかきながら苦笑した。
「すごく結婚したがってるから、相手を紹介してやったのに、なんだって彼女があんなに激怒したのか、さっぱりわからん」
「要するに、おまえにぞっこんってことじゃないのか?」
「そういう雰囲気は感じないんだが……」
「じゃあ、ただの面くいか?」
「結婚相手を顔で選ぶ女なんていまどきいるのか?」
「顔じゃなければ何だろう?陰陽師好き?貧乏好き?それとも逃げられれば逃げられるほど追いかけずにはいられない、ハンター体質なのか?」
「おいおい」
祥明は頭をかかえる。
瞬太は、季実子にだしそびれたお茶を槙原の前に置く。
「あの調子だと、祥明が結婚届、じゃなくて、婚姻届だっけ?にサインするまで、季実子さん、毎日来るかもな」
瞬太の不吉な予言に、祥明は肩をビクッと震わせた。
「キツネ君、なんて恐ろしいことを言うんだ!言霊って日本語を知らないのか?」”