“「あ、そうだ。おれ、どうせ授業中も寝てばっかりだし、高校やめちゃうっていうのはどうかな?」
「「絶対だめ!」」
みどりと吾郎は同時に言った。
「えー……いいと思ったんだけど……」
「あたりまえでしょ!せっかく奇跡的に都立に合格したのよ」
「陰陽屋さんに就職するっていうならまだしも、一日二、三時間のアルバイトのために高校をやめてどうするんだ。ちゃんと将来のことも考えなさい」
「うん……」
両親に異口同音で反対され、高校中退案はひっこめざるをえなかった。
「それに、高校をやめたら、もう三井さんにも会えなくなるわよ。いいの?三井さんと一緒の高校に通いたくて、飛鳥高校を受験したんでしょ?」
「か、母さん、なんでそれを!?」
瞬太は真っ赤になってうろたえた。三井春菜は中学からの同級生で、瞬太が常々、いいなぁ、と、ひそかに思っている女の子である。小柄できゃしゃでかわいくて、その上、いつもシャンプーのいい匂いがするのだ。”
今回も面白かったー。
高坂くんがなかなかお気に入り。
toi8さんの表紙も素敵。
“「もういいわ、ショウがそうやって逃げまわるつもりなら、あたしは一生、あなたの責任を追求し続けるから!」
高らかに呪いの言葉を吐くと、季実子はくるりときびすを返し、陰陽屋をかけだしていった。
祥明は、倒れるように椅子にへたりこむと、大きくため息をついた。
「悪かったな……」
珍しく槙原に謝る。
「びっくりした。最短失恋記録だ」
槙原は頭をかきながら苦笑した。
「すごく結婚したがってるから、相手を紹介してやったのに、なんだって彼女があんなに激怒したのか、さっぱりわからん」
「要するに、おまえにぞっこんってことじゃないのか?」
「そういう雰囲気は感じないんだが……」
「じゃあ、ただの面くいか?」
「結婚相手を顔で選ぶ女なんていまどきいるのか?」
「顔じゃなければ何だろう?陰陽師好き?貧乏好き?それとも逃げられれば逃げられるほど追いかけずにはいられない、ハンター体質なのか?」
「おいおい」
祥明は頭をかかえる。
瞬太は、季実子にだしそびれたお茶を槙原の前に置く。
「あの調子だと、祥明が結婚届、じゃなくて、婚姻届だっけ?にサインするまで、季実子さん、毎日来るかもな」
瞬太の不吉な予言に、祥明は肩をビクッと震わせた。
「キツネ君、なんて恐ろしいことを言うんだ!言霊って日本語を知らないのか?」”