細川義洋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
発注者から眺めた、IT関連のプロジェクトの怖さ、難しさを言語化した問題提起の書。
情報システムの構築にあたっての最上流 要件定義の以降の工程をとらえて、しかも発注者の立場からシステム開発を論ずる書です
プロジェクト中に発生するさまざまな問題に対して、ベンダと一緒に対応したり、ベンダの作成したシステムをテストするなど、発注者にもたくさんの役割を果たす義務があります。
これを、「ユーザの協力義務」といい、その義務を果たさない発注者は、使えないシステムに膨大なお金を払った上に、損害賠償まで請求される危険すらあります。
プロジェクトの失敗とは、「納期オーバ」、「コストオーバ」、「完成したシステムに当初望んだ通りの機能が備わっていない」という3つのいずれかに当てはまるケースです。
本書の目的は、「本当に役に立つシステム」を完成させるための最低限の知識をお伝えすることです。
著者は、ソフトウエア開発会社にて、プロマネを経験し、ITコンサルとなり、経産省にて政府CIO補佐官として政府の基幹系システムに従事した経験をお持ちです。
システム開発プロジェクトは発注者が構想し、リードする時代に入ったといっています。
気になったのは、以下です。
・いきなり要件定義書を造ってはいけない。
・まずは、社内全体の業務を俯瞰して、全体最適の視点から業務の問題点や新しいシステムが実現することで改善される点、全社的なメリットなどがひと目でわかる資料を作成します。
・そのためには、まずは、業務フローを作成します。そして、その中にさまざまなことをメモ書きしていきます。
・ベンダーにどんな機能や性能をもつシステムがほしいかを決めて、ベンダに伝えることは発注者の役割になります。
・そのためには、2つの業務フローを作成します。AsIs:現在の業務の流れ、ToBe:現在の問題点を解決して実現する新しい業務の流れ
・システム化を行うのは、効果が明確に説明できるところのみを対象とします。そのために、システム化する範囲は何度も考えて決定します。
・業務フローをつくっていい点は、会社の各部門が有機的につながってこそ機能するということが、1枚の図でよくわかることです。
・次に業務フローに合わせて、社内の発注者の役割を付していきます。①エンドユーザの責任者、②プロジェクト承認者(社長など)、③プロジェクトマネージャー、④システム担当者
・そしておもな作業は、さらに工程別にブレークダウンします。①要件定義、②委託先選定、③プロジェクト計画、④設計・要件変更、⑤受け入れ試験、⑥移管・サービスイン
・システム開発成功のキモは、受託ベンダーの「リスク管理」にある
・ベンダーの能力は「プロジェクト管理計画」で評価できる
・プロジェクトを管理するためのツール、プロジェクト計画書、プロジェクト管理計画書、WBS,リスク管理票、課題管理表、故障管理表、
・プロジェクト管理工数は、全体工数の10%前後、プロジェクトの進捗遅れは、5日以上遅れたらアラートを上げる
・ITシステムは、ビジネスの主役になりつつあり、本業と同様重要な課題になっている。
・各部からは、多忙を理由に要望の取りまとめに協力してくれないケースが多い システム担当者が孤立してしまいがち。
・ユーザからは、ベンダー自体のリスクは見えにくい。いわば盲点となっている。
・ベンダーのリスクもユーザと共有すべき リスクチェックポイント、リスク管理表
・ベンダが勝手に作業を進めても、黙認すると「合意」したとみなされる
・要件定義終了時に宿題と、方針をチェックポイント会議で確認する
・技術的な話は、最終的にベンダが責任をもつが、それを決める過程では発注者だって口出ししてかまわない
・気になることがあれば、何度でもエンジニアに質問したり設計のやり直しを依頼する
・もやもやが消えるまで質問や注文を繰り返すことで、発注者もベンダも、今のやり方の正しさに自信が持てる
・業務フロー図に、現状の問題だけでなく、自分たちのいいところ、残したい業務も書いて貼っておく
目次
はじめに 発注者は「お客様」ではなく「プロジェクトメンバー」
第1章 システム作りは業務フロー図から
第2章 発注者がこれだけは知っておくべき最低限のこと
第3章 失敗しないベンダの選び方
第4章 社内の強力を得るために
第5章 リスク管理で大切なこと
第6章 ベンダとの適切な役割分担
第7章 情報漏えいを起こしてしまったら
エピローグ
ISBN:9784478065792
出版社:ダイヤモンド社
判型:A5変
ページ数:336ページ
定価:1980円(本体)
発売日:2017年06月14日第1刷 -
Posted by ブクログ
ネタバレ物語形式で話が進んでいく&1章ごとにテーマが分かれているため
非常に読みやすい。
ただ、読みやすいが故に読み終わった後にしっかり振り返らないと
ビジネス小説を読んだだけ、になってしまう。
というわけで振り返り。
1章:主人公(白瀬)が社内システムを作ることになり、
システム要件定義作成に四苦八苦する。
→業務フロー図には目的・理想・懸念を書く
自社の強みを活かすことを忘れない
2章:ベンダが途中で撤退。その途中まで開発した分の費用を請求してくることに
→要件の必要性・十分性をチェック
フィーリングマップを作る(どの部署のどの役職が笑顔or不機嫌?)
3章:規模の小さいベンダに大きなPJを任せたくないが・・・
失敗しないベンダの選び方
→リスク管理ができているか。ベンダ内部の問題も発注者に開示しているか。
発注者はベンダの問題を取り込もうとしているか。
4章:社員がシステム要件作成に協力してくれない
→社員の意識を変えるため、経営トップが人事権を使う
PJオーナーは社長。
5章:ベンダの選定はばくちのようなもの?
→ベンダが悪い、といっても得られるものはない。
ベンダのリスクも共有する。3章同様。
6章:発注者はどこまでわがままを言えるのか
→モヤモヤが消えるまで質問や注文を繰り返す。双方ともやり方の正しさに自信が持てる
7章:情報漏洩への対応
→事前対策、事後対策を立ち上げ段階から考えておく。 -
Posted by ブクログ
これは名著!
この本に書かれていること、全てが重要で付箋だらけになってしまった。
タイトルに引かれて手に取ったが、
書かれているのは、システム開発の流れの中で何に気をつけて進めていくのか、どういう箇所が後々問題のポイントとなるのかを説明している。
・何度も要件を追加するユーザ
・ベンダ任せにするユーザ
・ユーザの参加意識をどう高めるか
・プロジェクト完了は何を基準に判断すればよいのか
・・・など、耳は痛いが重要なことばかり。
しかも、これは解説書ではなく、小説形式で物語が進行していくので、
ユーザ・ベンダの立場を理解しやすい。
小説形式だが、トピックは見開きというわかりやすさ。
章末、巻末に収められているチェックリストは、実務に大いに役立ちそうだ。
たぶんこれは後日購入するだろう、
プロジェクト管理の基本として自分の会社でも広めたい本。
【ココメモポイント】
<要件定義>
・定期的に要件変更に関する会議を開く
P.20
・その場しのぎで取り繕って、問題先送りにする態度こそ、不誠実この上ない
P.21
・業務フローに載る人の意見をすべて収集する必要がある。
(中略)失敗プロジェクトの9割は、要件定義が関連してる
P.29
・要件はお客さんの責任って風潮が最近は強すぎる
P.40
・トレーサビリティマトリクス
要件定義、設計項目などにIDを振って、1つの表にまとめる
P.48
・ユーザの業界における“常識”は無視できない
P.60
<プロジェクト計画と管理>
・定量的なプロジェクト管理方法をユーザにもしっかり理解してもらって、定例会の場で認識を共有すること
P.83
・“紙芝居”をつくってユーザに触ってもらったり、(中略)
ユーザの興味や参加意識を継続させる
P.90
<設計>
・困ったときには、周りの人と会話したり、考えていることを口に出したり、書いてみるだけでも頭は回転し出すもの
P.121
・システムで大切なのは、それを使った業務がつつがなく行えることであって、中身じゃないって考え方が一般的
P.133
<テスト>
・システムの品質を守る最後の砦は受入テストではなく、それに向けたテストケースやテストデータのレビューだと思ってる
P.178
・IT紛争は、そのすべてが開発中にユーザがベンダに不信を募らせることが土台になってる
P.186
<契約と仕事の完成>
・ベンダは契約書に書いてある事柄を全うするギリギリの作業をして引き揚げる
P.210
・メンバの机がいつもより乱雑になっていることに気づく細かい神経も求められます
P.213
・プロジェクト計画をユーザと検討する際には、実力以上の役割を負わず、双方がある程度妥協もしながら役割分担を決めていくことが紛争に発展しないポイント
P.258 -
Posted by ブクログ
ネタバレシステム開発のもめるポイントを主に法律的観点から見て注意点や意識することがわかる本。
システム開発の経験がない人が読んでもハテナとなるかもしれないけど、経験ある人が読んだら納得できることが多い。
そして、訴訟の時に問題になるポイントはそのまま円滑なシステム開発成功の鍵にも当然つながっていくので、法律的観点とはいったら、システム開発に携わる人ならぜひ読んだほうが良い本。
敏腕女性弁護士、中小ベンダ女性SE,ユーザー企業の御曹司、大手ベンダの男性PMを中心としたストーリー仕立て。
「要件定義」「プロジェクト管理」「設計」「プログラミング」「テスト」「契約終了」の章立て。
「要件定義」「プロジェクト管理」のところが個人的には興味をもった。
というか筆者がだんだん疲れてきたのか後半は登場人物のストーリー展開の割合が増えてきた気がする(それはそれで面白かったが)