坂本葵のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
落語が業の肯定なら、文学は倒錯の肯定。このことを執拗に教えてくれたのは谷崎潤一郎。この文豪の描く妖しくも奥深い文学に描かれる食の描写は、小洒落たグルメなんていう生易しいものではなく、まぎれもなく「倒錯した悪食」そのものである。
本書は「痴人の愛」のナオミが日にビフテキ3皿を平気で平らげるように、食欲旺盛な妖艶な悪女たちの食いっぶりから、谷崎自身の「三日に一遍は美食をしないと、とても仕事が手につかない」と語るほど食に取り憑かれ、和洋中の美味珍味を追い求めていく自堕落な美食家の横顔も遺漏なくすくい上げる。
谷崎は美食をこう定義する。
「美食の味は、色気やお洒落をそっちのけにして、牛飲馬食すると -
Posted by ブクログ
『ダ・ヴィンチ』2025年6月号のプラチナ本。
ということで。
司法書士になる夢をあきらめ、母校である花園小学校の図書室の司書として働き始めた主人公まふみ。赴任するために引っ越してきた釣り堀近くのアパートには、『ルリユール工房』という製本所が併設されていた。アパートの大家さん兼製本所の親方である瀧子(たきこ)と孫の由良子(ゆらこ)を通じて、手仕事の製本(ルリユール)の世界に魅せられていき…
図書室に来る小学生が起こす、ちょっとしたトラブル。そのやり取りがとても可愛らしく、優しい気持ちになる。
心にしみたフレーズを1つ。
ディスクレシア(識字障害)の子に由良子が作ってあげた窓あきの装置に記 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み終わった第一の感想は「絵本の雰囲気を纏った小説だなぁ」
文章はかなり読みやすく、地の文による感情・思考の描写が少なめで、その分場面・場所の雰囲気には力を入れているのかな。
また、登場人物の口調や行動がなんとなく劇の台詞のようなこと、出てくる製本の描写が童話のような雰囲気を纏っているため、現代日本が舞台ですがファンタジー味、絵本味を感じました。
上記のこれらがハマらなかったこと、山場が感じられなかったこと、小説内の描写に対し「あれ何のためだったんだ?」と多々感じることがあるのが少しネック
最後の点に関しては
・主人公の「製本酔い」「文字が踊りだす」などの描写がどこにも生きてない(主人公 -
Posted by ブクログ
文豪、谷崎潤一郎が、実は自ら”食魔”と名乗っていた、その辺のあれやこれやを1冊の書籍化したもの。
御免なさい、純文学は苦手で殆ど読んでません。
”細雪”くらいしか知りませんでした。
幼少の頃からの食体験・周辺環境の大きな変動から、”グルメ”ではなく、純粋に”食べる”ことに偏執した谷崎に関して、様々な視点から、氏の作品の部分的な引用を多用しつつ説明されている。
この本の作家自身、純文学の人なんでしょうね(済みません、詳しくは知りませんし関心も余り...)。
文体や表現が文学的で、解釈も多分に純文学的なところがあり、面白い本だとは思うのですがちょっと疲れました。
谷崎作品の大ファンの方、自身が”