坂本葵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大学卒業後も司法書士試験を受け続けて5年経ち、断念することに決めて図書司書として母校の小学校に勤務することになった中島まふみ。
実家に帰る気はなく、シェアハウスに住むことになるが、そこの大家が製本家の綺堂瀧子で「ルリユール工房」で孫の由良子と製本をしていた。
小学校で関わったディスレクシアの児童に窓あき文庫のボール紙で由良子が作った世界の覗き窓で本を読めるようにするのには感動した。
由良子がずっと引きこもっていた理由も彼女が相貌失認を患っているからで、だからこそディスレクシアという疾患にも直ぐに対応できたのだろう。
二冊の本を結婚させてほしいという古本カフェの店長の依頼にも戸惑うことなく -
Posted by ブクログ
色々な悩みを持った人達が、とある製本工房と出会い、人生をルリユール(もう一度~し直す)していく物語。
とにかく、何かと足を引っ張ったり、ぐちゃぐちゃに引っ掻き回すような、悪い人がいない!(そりゃお話を進めるうえで多少は「?」って感じる人はいるけども)
そして、表現や描写などの、紡ぎ出す言葉がステキ!
頭の中で、製本される本たちの生き生きとした様子が想像できちゃうし、あの、青のお店、本当にあってほしい。入り浸りたい(笑)
コメントに、流れが予想ついちゃうってのを見かけたけど、それで良いのです!
そこは、予想できてよいのですよ!
その先にある事がもっと大事だから。
温かくて優しい世界で、急 -
Posted by ブクログ
☆3.5 食への執着
著者の坂本葵さんは、小谷野さんの奥さんなので私にはなじみ深いが、今回のこの新書をよんで、小谷野の谷崎伝を思ひ浮かべ、執筆の経緯をおぼろげながら想像した。
食のとりことなった谷崎を、その執着から書いた好著で食とエロスが結びついてゐることがよくわかる。
フロイド分析を持ち出すところは余計だが、後半の食魔の生涯は谷崎の人間性(おもに食へのこだはり)が明白で、おもしろかった。食ひ意地が汚くて、松子いはく、乱杭歯で肉を切り裂くやうな壮烈な食べ方ださうだから驚きである。
なんでも谷崎がはじめて西洋のチーズを知ったのが、一高時代の先生に教へてもらったジェローム・K・ジェロー