【感想・ネタバレ】食魔 谷崎潤一郎のレビュー

あらすじ

その食い意地こそが、最大の魅力。「料理は藝術。美食は思想」という哲学を生涯貫き、粋な江戸前料理からハイカラな洋食、京都の割烹、本場の中華まで、この世のうまいものを食べ尽くした谷崎潤一郎。「食魔」とも称された美食経験は数多の名作に昇華され、食を通して人間の業を描いた。「悪い女ほどよく食べる」「蒟蒻とサドマゾ」「東西味くらべ」など、斬新なアングルで新たな魅力を掘り起こす、かつてない谷崎潤一郎論!

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Posted by ブクログ

☆3.5 食への執着
 著者の坂本葵さんは、小谷野さんの奥さんなので私にはなじみ深いが、今回のこの新書をよんで、小谷野の谷崎伝を思ひ浮かべ、執筆の経緯をおぼろげながら想像した。

 食のとりことなった谷崎を、その執着から書いた好著で食とエロスが結びついてゐることがよくわかる。
 フロイド分析を持ち出すところは余計だが、後半の食魔の生涯は谷崎の人間性(おもに食へのこだはり)が明白で、おもしろかった。食ひ意地が汚くて、松子いはく、乱杭歯で肉を切り裂くやうな壮烈な食べ方ださうだから驚きである。

 なんでも谷崎がはじめて西洋のチーズを知ったのが、一高時代の先生に教へてもらったジェローム・K・ジェロームの『ボートの三人男』からといふ蘊蓄も意外である。

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2025年11月08日

Posted by ブクログ

落語が業の肯定なら、文学は倒錯の肯定。このことを執拗に教えてくれたのは谷崎潤一郎。この文豪の描く妖しくも奥深い文学に描かれる食の描写は、小洒落たグルメなんていう生易しいものではなく、まぎれもなく「倒錯した悪食」そのものである。

本書は「痴人の愛」のナオミが日にビフテキ3皿を平気で平らげるように、食欲旺盛な妖艶な悪女たちの食いっぶりから、谷崎自身の「三日に一遍は美食をしないと、とても仕事が手につかない」と語るほど食に取り憑かれ、和洋中の美味珍味を追い求めていく自堕落な美食家の横顔も遺漏なくすくい上げる。

谷崎は美食をこう定義する。
「美食の味は、色気やお洒落をそっちのけにして、牛飲馬食するところにあるのだ」。

多くの女性と情交を結んだ谷崎は食の世界においても、まごうことなき変態であった。尽きることのない食い意地。そこにはグルマンや食通といった気取った姿はなく、まさに全身全霊で貪り食うといった凄まじさ。この食い意地こそが、生涯を文学に駆り立てた原動力であり、料理を通して母の想い出に浸ることのできる記憶装置ようなものでもあった。

多淫と多食。色と食。舌と口を縦横に駆使し貪り食った谷崎潤一郎。千ベロは中島らもの造語だけど、谷崎先生には「全ベロ文豪」という称号を捧げたい。

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2017年09月15日

Posted by ブクログ

谷崎の著書を読んでいると元気がでてくる。食欲、性欲、いろんな欲が刺激され、何かやりたくなってくる。そんな谷崎自身が比類なき快楽主義者だったからこそ、数々の著作物がなまなましく、生き生きとしている。全集が欲しくなった。

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2016年07月28日

Posted by ブクログ

谷崎潤一郎も味の素党の人だったのですね!
食欲と性欲が裏表のように絡み合う谷崎作品、作品への反映っぷりも面白いですが、谷崎本人の戦争中だろうと体を壊そうと、ひたすら食べる事に執着した生き様が凄いです。

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2017年09月29日

Posted by ブクログ

文豪、谷崎潤一郎が、実は自ら”食魔”と名乗っていた、その辺のあれやこれやを1冊の書籍化したもの。
御免なさい、純文学は苦手で殆ど読んでません。
”細雪”くらいしか知りませんでした。
幼少の頃からの食体験・周辺環境の大きな変動から、”グルメ”ではなく、純粋に”食べる”ことに偏執した谷崎に関して、様々な視点から、氏の作品の部分的な引用を多用しつつ説明されている。
この本の作家自身、純文学の人なんでしょうね(済みません、詳しくは知りませんし関心も余り...)。
文体や表現が文学的で、解釈も多分に純文学的なところがあり、面白い本だとは思うのですがちょっと疲れました。

谷崎作品の大ファンの方、自身が”食魔”じゃないか?とお悩みの方には是非にとお勧めします。

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2016年09月16日

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