藤井淑禎のレビュー一覧
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「満韓ところどころ」「倫敦消息」など、紀行文集
岩波文庫 夏目漱石
秀逸な写生文。面白エピソードはないが、描写が 素晴らしい
講演が出来ない訳を講演したり、最後に「まだ書く事があるがもう大晦日だから一先やめる」と加えたり、洒落もきいている。このへんは 内田百閒に継がれている
「倫敦消息」
ロシアと日本は争わんとして争わざらんとしつつある。支那は天子蒙塵の辱めを受けつつある。英国はトランスバールのダイアモンドを掘り出して軍費の穴をうめんとしつつある。
「病院の春」
余は白い病床の上に寝ては、自分と病院と来たるべき春とをかくの如く一所に結びつける運命の酔興さ加減をねんごろに商量した
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初めに、両作家の推理小説を未読の読者はネタバレ注意である。
タイトルをみると松本清張と水上勉の間に深い因縁や影響関係がありそうした関係に切り込む本かと思ってしまうが、特にそんなわけではない。単に活躍した時代が重なり、推理小説から純文学、ノンフィクションとジャンル横断的に活動したところが似通っているにとどまる。清張と水上勉、二人それぞれの評伝を並行して読むという趣。
清張と乱歩の論争や、『伊豆の踊り子』を巡る『天城越え』での川端康成への当てつけ(?)辺りは文壇ゴシップ的に興趣がそそられるが、『砂の器』での江藤淳批判(?)となると少し首を傾げてしまう。犯人に目星をつける経緯が抜け落ちているとの指摘も、テレビの2時間ドラマ等ではおなじみの展開であるし、むしろ雰囲気優先で理詰めでないところがこの手の社会派推理小説の良さではないかと感じる所もある。 -
Posted by ブクログ
一世を風靡した流行作家でも、亡くなると、手軽に読める作品が少なくなり論じられることも減ってしまうことが普通だが、その数少ない例外が乱歩である。
初期の本格味が強い短編群が好きな読者、「押絵と旅する男」や「パノラマ島綺談」のような変格味を好む読者、少年探偵団シリーズから入門した者たちなど、読者層も様々であろうと思われる。
そのような中で、乱歩自身高い評価をしておらず、これまであまり正面から取り上げられてこなかったのが、「蜘蛛男」以降の通俗長編、創元推理文庫ではスリラーと分類されている作品群である。
本書では、それらの作品の舞台となる同時代東京に焦点を当てて、文化アパート、震災後の帝都復興事業たる道路整備、遊園地、国技館、ホテル、文化住宅等、当時の流行、先端の事象が、いかに作品で描写され、読者大衆の憧れに共鳴したかを論じていく。
ストーリー展開にばかり関心が向かい、こうした時代性を現す描写は読み飛ばしてしまっていたが、本書を参照しながら、都市小説という視点からの読み方、楽しみ方もしてみたい。