藤井淑禎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
一世を風靡した流行作家でも、亡くなると、手軽に読める作品が少なくなり論じられることも減ってしまうことが普通だが、その数少ない例外が乱歩である。
初期の本格味が強い短編群が好きな読者、「押絵と旅する男」や「パノラマ島綺談」のような変格味を好む読者、少年探偵団シリーズから入門した者たちなど、読者層も様々であろうと思われる。
そのような中で、乱歩自身高い評価をしておらず、これまであまり正面から取り上げられてこなかったのが、「蜘蛛男」以降の通俗長編、創元推理文庫ではスリラーと分類されている作品群である。
本書では、それらの作品の舞台となる同時代東京に焦点を当てて、文化アパート、震災後の帝都復 -
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