中村真一郎のレビュー一覧

  • 頼山陽とその時代 上

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    ☆4.5 頼山陽は精神病だった
     吉田松陰を知るにあたり、松蔭が影響を受けた頼山陽の伝記を読まうとおもった。

     精神病視点で頼山陽を捉へるこころみで、中村自身の鬱病的経験を踏まへてゐる。さう照し合はせてみると、かなり的を射てゐる。そして精神病にもとづく推測が剴切に思はれてくる。

     徳川期の遠い時代といふ印象の人物が、いつのまにかわれわれに卑近に迫ってくる感じだ。両親の厳しさと甘やかしは、いまと変らない。

     徳川期になかった概念(当時は狂人扱ひしたもの)を、近代の精神病として捉へることで、頼山陽の実像が理解できる。
     私としては、頼山陽は発達障害をかかへてゐたのではないかとおもった。

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    2024年01月14日
  • 堀辰雄/福永武彦/中村真一郎

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    同名のアニメですっかり有名になってしまった『風立ちぬ』でなく、「かげろうの日記」とその続篇「ほととぎす」を採ったのは、大胆な新訳が売りの日本文学全集という編者の意図するところだろう。解説で全集を編む方針を丸谷才一の提唱するモダニズムの原理に負うていることを明かしている。丸谷のいうモダニズム文学とは、
    1 伝統を重視しながらも
    2 大胆な実験を試み
    3 都会的でしゃれている
    ということだが、堀辰雄の「かげろうの日記」は、「蜻蛉日記」の現代語訳ではなく歴とした小説である。言葉遣いこそ王朝物語にふさわしい雅やかな雅文体をなぞっているが、主人公の女性心理はまぎれもなく近代人のそれであり、自意識が強く、

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    2015年04月13日
  • 堀辰雄/福永武彦/中村真一郎

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    堀辰雄の「かげろうの日記」と「ほととぎす」。
    ここにはヨーロッパ仕込みの見事な「平安文学の心理小説化」がある。前回配本の森鴎外からもう一歩進んでいる?

    平安貴族の生活が生き生きと描写されて、物忌みや、待っていることしか出来ない貴族女性の立場、子供のような道綱(藤原道綱)の振る舞い、揺れ動きながらたまに男を手玉にとる道綱母の行動など、なかなか興味深い。

    道綱も成人したころに、夫は他の女に産ませた「撫子」という少女を連れてくる。次第に情が移ってきちんと育て始めたころに、頭の君が撫子を求めてひつこいぐらいに道綱に連絡する。「まだほんの子供ですから」と「いや一目だけでも」何度も何度も同じやりとりを

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    2017年12月23日
  • 堀辰雄/福永武彦/中村真一郎

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    高校時代に、図書同好会というサークルに入っていたが、1級上の先輩が福永武彦を愛読していた。当時は特に惹かれるものはなかったのだが、今読んでみると、意識の流れの描写が洗練されていて上手いと思う。
    堀辰雄のかげろうの日記も楽しく読んだ。中村真一郎もそうだが、昔の作家はきちんと古典に学び、吸収していたのだなと感心する。

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    2016年06月12日
  • 堀辰雄/福永武彦/中村真一郎

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    長編というか、いろいろなタイトルがおさまっていて
    500P弱を読み終わりました。
    堀辰雄氏・福永武彦氏(池澤夏樹氏の父)・中村真一郎氏
    3人の作品。
    堀辰雄氏の「かげろうの日記」「ほととぎす」は
    いまいちわかりませんでした。
    福永武彦氏の「深淵」「世界の終り」「廃市」は
    3作品ともとてもよかったと思います。
    狂気・退廃・情念などがにじみ出ていたと思います。
    中村真一郎氏の「雲のゆき来」は漢文や漢詩
    古文詩などが多くあって、読みづらい部分が多く
    ありましたが、それを差し引いてもとてもよかった
    と思いました。
    やっぱり自分の知らない作品それも古典的な作品
    に出逢える機会は大切だと思います。
    この全

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    2015年05月17日