鬼頭宏のレビュー一覧
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歴史人口学、はじめて本書で知りました。正式な国勢調査が実施される以前の時代の人口動態について、様々な書物やもっと昔であれば遺跡などから大きな絵を描いていくという領域です。縄文時代や弥生時代についての推計は、「地頭力」という本で話題になった「フェルミ推定」という手法が用いられていると理解しました。例えば「日本に電柱は何本ある?」という質問について、正確な答えを知っている人など存在しない中で、ロジックを組立ながらそれらしい答えを導く、そのプロセス、ロジック作りが重要ということでこの作業自体は面白いと感じました。
本書で一番面白かったのは江戸時代でしょうか。江戸時代の日本は豊富な記録があったとい -
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ネタバレ歴史というと政治史ばかりを追うようになりがちであるが、そうではなく人口などの統計資料から歴史を見る本である。
海外では信徒名簿、日本では宗門改帳が人口統計をするための台帳となる。
日本は縄文時代からずっと人口増加の一途を辿ったわけではないが、そのウラには経済構造の変革やそもそもの生産力の影がある。農業革命が起きれば人口は増加するし、産業革命が起きても人口は増加する。
また江戸時代には、困窮から間引きが発生したようである。
この本には、「ある経済構造・社会体制が爛熟してくると人口増加が緩慢になってくる」とある。
人口増加とか現象とかは結果に過ぎず、人間一人一人が子供を産み育てることへの意欲 -
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ネタバレ・日本人口が増えるのは、例外なく外部の文明を取り込んでいった時代。
・「年齢構成」と「地理的分布」の変化による不均衡の拡大。
・一人暮らしの老人が劇的に増え、2030年には700万人に達する。
・日本政府は1974年に「出生を抑制すべき」と明言していた。
・同質化した社会を変え、外に出よう。
・今後、食糧需要を補うための農業開発には常に環境問題がセットになる。
・地球が支えられる人口は多くて100億人。
・21世紀中に世界中で人口増加が止まると予想されているが、問題はそれまでに人口が膨大な数に膨れあがること。
・結婚した夫婦の出生行動は、ほとんど変わっていない、本当に大事なのは、未婚者への政策 -
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20年前の本だが、縄文期からの日本の人口動態を追ったものなので、まず持って全く陳腐感はない。
一万年前に列島に2万人いた人口は、漁労・採取を生業とする狩猟民であった。縄文期の温暖な気候を背景に人口は4000年で10倍以上の26万人程度にまで達する。この頃は、北・東日本に人口が偏在していた。サケ・ナッツ型と言われる狩猟・採取形態でサケなどの大型魚・シカなどの大型動物・ナッツが取れる落葉広葉樹林に恵まれた東日本の方が資源豊富ということらしい。(縄文システム)
しかし、5000年前までに寒冷化によって北・東日本の人口は大打撃。この後、稲作文化の流入による弥生時代の到来で、3800年前頃までに人口 -
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以前速水融さんの『大正デモグラフィ』を、興味深く読んだ。
そこで歴史人口学なる学問領域があることを知った。
この本の著者鬼頭さんは、その速水門下の人だそうだ。
単にいつの時代の、どの場所に、どれだけの人口があったかを推定するだけの学問ではないとのこと。
人々が、だいたい何歳くらいで結婚し、何人くらい子供をもうけ、いくつくらいで死んでいくのかを割り出していくのだとか。
推定の方法については、専門的な統計処理などを駆使するため、そのあたりは詳しくは書かれていない。
ただ、その結果として出てくる、例えば「貧乏人の子だくさん」といった俗説は正しくないことなんかが分かってくる。
むしろ、余裕のある階層 -
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日本の人口史には4つの波があったと説明する。第1は縄文時代で、中期に最盛期を迎えるが、後期、晩期には気候変動などによって減少する。第2は弥生時代〜中世で、農耕の広がりや大陸からの移民によって人口は増大するが、耕作適地の限界や荘園制度によって横ばいとなる。第3の波は14〜15世紀から江戸時代にかけてで、市場経済の発展や婚姻革命があったと説明されている。第4の波は明治以降の産業革命によるものである。
人口の推移がわかるだけでなく、日本社会の移り変わりとともに説明されているという点では、とても明快で、日本史の大きな流れをつかむこともできる。人口が環境の支持力の上限に達し、生活に困難が生じると、より -
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・石油ショックの時、石油が全く輸入できなくなった場合の養える人口の試算結果は、4000〜5000万人だった。
・18世紀初頭から1世紀半にわたって人口は停滞していたが、民衆の生活は着実に向上していた。
・18世紀の農業は、乾田化による裏作とともに、し尿、大豆や菜種の油粕、魚の〆粕、イワシやニシンの肥料としての利用によって発展した。10人が1年間に排泄するし尿は、米100kgに相当する金額に値する商品だった。
・文化期以降は、中流平野や三角州の用水路開削、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海沿岸、有明海、八代湾などの干潟干拓によって耕地面積を拡大した。
・享保、天明、天保の3大飢饉はいずれも冷夏多雨によるも -
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歴史人口学者による、これからの少子高齢化社会の日本の姿。予測では、2100年には四千万人になると…。確かに、どれだけ出生率を増加させようとしても、すぐに変わるものではないしなあ。さらに2055年には国民の40%が高齢者に。
ただ、この本はいたずらに不安を煽るのではなく、希望のある未来のために現実を正しく受け入れそのためにこうしていこう、という提言がある。
そのために、日本だけでなく、世界の人口がどうなるか、経済はどうなるのか、労働環境はどうなるのか、俯瞰して将来の姿が見えるように細かく書かれている。
そもそも文化に伴い人口は比例するものではなく、少子高齢化は日本特有の問題ではない。日本が -
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なんで購入したか失念。なぜか家にあった。
圧巻は、縄文時代からの日本列島のブロック別の人口推計。あたっているかどうかは自分に判断できないが、千人単位で推計している。
例えば、縄文は、東日本が人口が多い、南関東の人口が畿内を抜くのは江戸時代に入ってからなど、当たり前かもしれが、数字で示されると、すごい。
(1)西暦4から7世紀の古墳時代は寒冷期だったが、奈良時代になって温暖化が進み、人口が一気に増えた。(p64)
(2)江戸時代、都市は高い死亡率と低い出生率で、人口減少要因だった。(p104)
(3)江戸時代の平均寿命は30年、50年を越えたのは、戦後の1947年。(p174)
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津波のように日本社会の在り方―経済成長から地域コミュニティー、国民意識までを変えてしまう。それが人口減少の持つ力の大きさである。本書では現在の出生率が続けば2050年には日本の人口は8900万人と1億人を切り、2100年には4000万人を切ってしまうという恐るべき推計が示されている。現状のままでは確実にこれらの推計は現実のものとなろう。
その時、日本の経済、国土形成、家族には大きな変化が訪れる。倍増する現役世代の社会保障負担、縮小する一方の市場規模、次々と消えていく地方の集落と増え続ける老人世帯・・・。
もはやこれらは従来の公共概念を超えた問題だ。筆者は海外との交流を通して新たな文明を構