高木久史のレビュー一覧

  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    まず目を引くのは前書きにもある「予定調和的な歴史観は廃するべきである」という主張である、呉座勇一『一揆の原理』でも、戦後の日本史学界がややもすると進歩史観的な見方から脱することができず、歴史を特定のイデオロギーから捉えることが多かった反省が述べられていたが、貨幣研究においてもそのような傾向はあるらしい。

    江戸時代の三貨制度を知っている時代の人間からすると、金/銀/銭の交換比率を定め、高額~少額取引に柔軟に対応した銭制度を用意するというグランドデザインを持って時の支配者は銭制度を設計したように見えるが、実際にはその時の課題にある意味で場当たり的に対応したことの積み重ねが結果的に三貨制度を生み出

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    2021年02月21日
  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    『通貨の日本史』(中公新書)の筆者による銭(銅銭)に関する歴史書。中世から近世にかけて、常に日本では庶民にとって必要な少額貨幣である銭が不足しており、宋や明からの銭の輸入でも賄いきれなかった。それを補うために模造銭が大量に作られ、また銭不足ゆえに割符と祠堂銭預状といった紙媒体の通貨の出現や掛け取引といった信用取引が成立した。

    売買や納税などで銭を受け渡すときに、特定の銭を排除したり、受け取りを拒む行為である撰銭が十五世紀後半から頻発しており、旧銭(宋銭)は人々に受け入れられたが、新銭(明銭)は嫌われた。また銭の好みに地域差があり、九州では洪武通宝が好まれて、永楽通宝は、畿内では嫌われ、畿内を

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    2019年03月26日
  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    ネタバレ

    「平清盛の頃から、銭を中国から輸入した」
    「銭形平次が寛永通宝を投げてた」:銭形平次
    「織田信長は永楽通宝の旗を掲げていた」
    「秀吉の大きな、大きすぎる大判」
    「仕事人に依頼する時の小判」:必殺仕事人

    このくらいの基礎知識(知識?で読み始めたのだが、文体も読みやすく、とても興味深く読めた。

    しかし、貨幣(特に少額貨幣)について、権力が自分で発効する気が長らく無かったという驚き。中国から輸入していたけれど、貨幣経済の発達と、輸入の途絶から銭が不足してきたなら、自分で発行すれば良いのに?ってついつい思うのだが、権力者的には特に自分(と、その権力基盤)に関係なかったのね。
    信長の「永楽通宝」の旗

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    2019年01月14日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    お金に視点を置いて日本史を見るという本は読んだことがなかったので楽しんで読めた。通貨は政府や中央銀行が発行して統制するってのは近代以降のことで、昔から民間の需要から生まれるってのを改めて学べた。お金の話だけではなく、その時代時代の気候から生産高や人口の増減についても触れていて、歴史の流れの底流にあるそういったものの変化を知れて面白い。間に孔を開けた硬貨が材料節約のためだったり、円の語源だったり、トリビアとして人に話したくなる話題も多い。

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    2017年02月17日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    奈良時代から現代までの我が国の貨幣に関する通史。

    漠然と江戸時代は統一された貨幣制度があったように思ってきたが、日本史の教科書にあるような貨幣の金比率の改定だけではなく、実際には多くの制度の設計に見直しや変更が成されていたこと、それが明治期の日本圓の誕生と切り替えがスムーズに行われる原因となったことが判った。

    また、占領期の台湾、朝鮮、その他占領地での貨幣制度についても触れられており参考になった。

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    2016年08月21日
  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    中世から近世への移行期を舞台に、貨幣、主に銭がどのように使われ、また為政者に影響を及ぼしてきたかを追う内容。通貨統合にいたる紆余曲折を見る事で、単線的な歴史ではない社会経済のダイナミズムが感じられて面白かった。

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    2024年01月30日
  • 戦国日本の生態系 庶民の生存戦略を復元する

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    越前国極西部に視軸を置き、動植物が織りなす生態系とそこに生きる人々の社会を一つの系として捉え、庶民の立場から戦国時代を描き出そうとする内容。海・山の資源利用、窯業の展開、それらを結ぶ物流の詳細な実態がとても面白い。

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    2023年10月14日
  • 戦国日本の生態系 庶民の生存戦略を復元する

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    『生存戦略』本作の最重要キーワード。決してピングドラムでは無い♪
    さて本書の語る、天然資源の利用と再生を巡る、庶民の生業と戦国大名政府と領主層の、相剋と依存と均衡を頭に入れて歴史小説(戦国に限らず)を読むと、お馴染みの英雄史観と少し違う世界が広がります。
    とにかく庶民がしぶとい。
    納税と労役を人質にとり、地元の領主や大名政府とハードなネゴを押し引きして、支援を引き出したり権威を利用したり、必要ならネゴならぬコネを駆使して、己の既得権益守り他人の権利を侵しと、もう庶民やりたい放題。
    騙されイビられ、場合によっては棄てられかねないご領主さまが可哀想になるほど。
    小氷期のもたらす天候不順が飢饉と兵乱

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    2023年05月10日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    私は、物々交換が通貨に転じる歴史的過程が理解できていない。なぜ魚と米の交換の仲介として「きれいな貝殻」(や「貴金属」)を使うことが人々に是認されて、しかもそれが後に硬貨に替わるのかが、どうしても理解できない。そこで本書を入手。

    正直に言って、本書を読んでも、よくわからなかった。本書が力作なのだろうことは、わからないなりにも、わかった。

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    2020年11月20日
  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    中国(宋・明)から輸入した銭貨やその日本での模造銭が雑多に存在する中世において、発展する経済に見合わないほど銭が不足する中で庶民は銭を質により階層化させたりして独自の運用してきたことに対して、大名のような権力者は後手に回ってそれを追認する事しかしなかった。江戸幕府の金・銀・銭貨による三貨制度に収斂したのもそんな追認の帰結に過ぎない。

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    2020年11月07日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    古代から現代日本にかけての日本の貨幣史を述べたのが本書である。冒頭で、貨幣の定義として経済学の教科書でお馴染みの「交換手段」、「価値尺度」、「価値貯蔵手段」に加えて、債務決済や贈与、納税など社会的義務に基づく「支払手段」が挙げられている。(P.4)

    天武朝の時代に、日本最古の国産銅銭である富本銭が鋳造された。富本銭発行の目的の一つとして、藤原京建設のための物質購入と労賃の支払が挙げられている。つまり「国家支払手段」として発行された。上に挙げた貨幣の定義の「支払手段」である。奈良時代に発行された皇朝十二銭の多くがそうした「国家支払手段」として発行された。古代朝廷の通貨政策は「総じて、朝廷が財

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    2019年05月15日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    古代の無文銀銭、富本銭から現代の電子マネーまで、「通貨」を通して日本の歴史を振り返っている。中世の輸入銭をはじめ、民間での通貨創造の動きを政府が追認し採用するということが繰り返されてきたということが理解できた。
    鎌倉の大仏の原料は宋銭であったであるとか、江戸時代に四文銭の発行に合わせて「四文屋」というワンコインショップが登場したであるとか、通貨をめぐる興味深い豆知識も多く、知的好奇心をくすぐられる面白い一冊だった。

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    2017年10月23日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    通貨から見た日本の通史。当時の経済状況を通貨の需給状況の関係から説明している点がよい。現在の日本の通貨をめぐる状況は整理されすぎているため、過去の複雑な通貨の状況を我々は理解できなくなっているのではないか。通貨とは、貨幣とは何か、という点については数百年前の日本人のほうがよく理解しているように思える。

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    2017年06月29日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    通貨とは一般的に「政府の独占事業」と言われているが、古来永劫的にそうであったわけではない。むしろ通貨制度の黎明期は大衆先行型で、政府はそれを追認するケースが多かった。これは意外である。なにしろ、天皇支配、武家社会という専制君主的時代に、政府機能が大衆をコントロールできなかったということを意味するからだ。プロセスが異なれど、西洋のように金銀を基軸に通貨を考える時代を経てきているのも面白い。結局人間、考えることは同じ。

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    2017年01月15日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    <目次>
    第1章  銭の登場~古代から中世
    第2章  三貨制度の形成~戦国から江戸前期
    第3章  江戸の財政再建と通貨政策~江戸中期から後期
    第4章  円の時代へ~幕末維新から現代

    <内容>
    通貨の視点から日本の経済史を追っかける本。入り色と教えていて疑問だったところなどが解明したり、かなりの雑学的知識が盛り込まれていたり(江戸時代の銀貨ははさみで切って使っていたなど)、予想以上に面白かったし、授業で使える。明治以降の金本位制と銀本位制の関係(東アジアは銀本位制だから銀兌換だったとか)、日清戦争の賠償金はロンドンに送られ、日本は「金貨流通のない金本位制」だったとか…。

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    2016年12月11日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    今まで学んできた日本の歴史の中で、その姿は見えてはいましたが(両や小判などの言葉で)、それがどのように使われていて、どこが管理と発行をしていたのかについては置き去りにされていたように感じます。日本始めあたりに使われていたという和同開珎については教科書では知ってはいたものの、その使われ方については書かれてはいなかったように思います。本書はそのような謎(?)とも言える日本の通貨について、時期を追って丁寧に解説されています。なるほど、この時代はこのようにお金が流通していたのかということが整理して学ぶことができました。どのようにして今の円ができたのかなど、興味深く読むことができました。

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    2016年12月03日
  • 撰銭とビタ一文の戦国史

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    お金というものに、どれだけの信用があったかわからない時代に、今ならニセ札と呼ばれるような、明らかにだれかが作った銭も流通していた。当然、そんなややこしいやつを掴まされたくないけど、千枚も取引された日にゃ、これは1/5、これは1/4なんて、電卓もないのにやってられない。でも、みすみす損もしたくない。ビタ銭1枚に、庶民の怨念が感じられるようになる一冊です。

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    2025年06月28日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    古代以来の通貨の歴史を俯瞰している。かつては輸入銭に依存していた時代もあったなど、紆余曲折が面白い。

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    2023年06月28日
  • 戦国日本の生態系 庶民の生存戦略を復元する

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    戦国の庶民は、ただ、英雄たちに支配され、かつ自給自足であったと言う、旧来の見方はちゃうんちゃうと言うことを、納税記録などから読み解く。
    領主とは結構ギブアンドテイクだし、生産品を販売、流通させてんだよと、むっちゃ当たり前にしか思えない結果。
    確かに歴史の授業とかだと庶民の生活なんか殆ど見えないが、逆に、聞いてみれば当たり前なんだが、研究者の中では当たり前でなかったことが驚き。

    納税品から見えてくるところは、研究としては面白いんだろうが、結果としては、そうなのとしか思わんかったなあ。

    研究者として興味のある人には面白のではないか。

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    2023年05月16日
  • 通貨の日本史 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで

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    通貨の通史。だいぶ前に読み終わっていたが、レビューを書き忘れていたようだ。しかし、思い出そうとしてもほとんど印象に残ってない。近代以降が薄いような印象。さらに電子マネーまでとうたっているが、そちらも同様。

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    2017年03月02日