谷垣暁美のレビュー一覧

  • 穏やかな死者たち シャーリイ・ジャクスン・トリビュート

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    まさにシャーリイ・ジャクスンが書きそうな話だなってものもあったし、書きそうにはないけどこれはこれで面白いなという話もあった。

    特に好きなのは「パリへの旅」、「抜き足差し足」。
    心がひんやりするシャーリイ・ジャクスンらしさがある話でとても良かった。

    他にも「冥銭」、「鬼女」、「晩餐」も好き。

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    2024年08月14日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    共感覚者、ゾンビ、マッドサイエンティスト、死者、詩人、魔術師……。物質世界と精神世界の境界線上で生きる者たちに取り憑かれた短篇集。


    直前に読んだエリック・マコーマックの『雲』と驚くほど共通要素を感じる作品集だった。マッドサイエンティストの人体実験で女性がめちゃくちゃにされるところをはじめ、「エクソスケルトン・タウン」の愛とセックスの関係性なども近いと思う。フォードなら一つ一つ短篇として結実させるアイデアを、ゆるく繋げて長篇化するのがマコーマックという感じ。以下、印象に残った作品の感想。

    ◆「アイスクリーム帝国」
    カフェインが齎す創作的なインスピレーションを擬人化して、共感覚と結びつけてい

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    2024年07月02日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    大好きジャンルの幻想小説。
    不勉強ながらYahooで書評を読むまで存じ上げませんでしたが、この方は世界幻想文学大賞に7回、シャーリィ・ジャクスン賞に4回、MWA賞、ネビュラ賞など数々の受賞歴を持つ作家さんらしいのです。
    表題作は幻想奇想的でありながら、中盤以降のサスペンス味も楽しい作品。
    個人的に心に残ったのは「ナイト・ウイスキー」。
    この設定からして奇想味満点なんだけど、生物の死骸に生える「死苺」という植物があって、その果実から作られるナイト・ウイスキーは飲むと亡くした大切な人と夢で会えるという不思議なウイスキーなんですよ。
    これを飲むと、なぜか樹に登って眠り、その夜の夢で今は亡き人との逢瀬

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    2024年05月04日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    作品紹介・あらすじ

    魔法は破られるようにできているの。
    でも、約束はそうじゃない。

    世界幻想文学大賞に7回、
    シャーリイ・ジャクスン賞に4回、
    MWA賞、ネビュラ賞など数多の賞に輝く
    現代幻想文学の巨人による
    郷愁と畏怖と偏愛に満ちた14篇

    アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった――コーヒー味を通してのみ互いを認識できる少年と少女の交流を描くネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」、エミリー・ディキンスンが死神の依頼を受けて詩を書くべく奮闘

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    2024年04月17日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    短編集13篇
    幻想妄想、夢といった世界が短編の中にギュッと凝縮され鮮やかな世界を表している。「創造」「熱帯の一夜」の少し不思議な物語や「光の巨匠」「巨人国」の入れ子細工的なこんがらがった面白さ、「夢見る風」「珊瑚の心臓」のどこか教訓めいた物語それぞれ違った味わいがあってジェフリーフォードの世界に堪能した。

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    2024年03月05日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    短編集。ミステリもどきのSFやファンタジー。表題の三角形は素晴らしかったが、私はタイムマニアがすきだった。キングのホラーを思わせる展開もぞくぞくした。

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    2024年01月10日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    〈白い果実〉三部作の著者による、めくるめく奇想とイマジネールに彩られた短篇集。


    ジェフリー・フォードの幻想小説はやっぱり唯一無二のヴィジュアルイメージの強さがある。「創造」の冒頭、どんなに注いでもジョッキから溢れないビールのネオンサインと生命のメタファーにはじまり、「光の巨匠」の首だけが浮かんでいる男の額に嵌め込まれたエメラルドの栓だの、「私の分身の分身は私の分身ではありません」のホワイトチョコに漬けられて姿を表す透明ドッペルゲンガーだの、「レパラータ宮殿にて」の小さな雲が浮かびグラスのなかに天気雨が降る〈プリンセス・チャンの涙〉という名のカクテルだの。緻密で妄執的なリチャード・ダッドの妖

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    2023年12月28日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    ネタバレ

    ジェフリー・フォードの短編を読むのは初めてのはず(長編は『シャルビューク夫人の肖像』を読んだが例によって何も憶えていない)。訳者があとがきに書いているように《現実的なものから幻想的なものへ》と配列された作品のうち、後のほうの「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」や「巨人国」「レパラータ宮殿にて」などが面白かった。より奇想小説ふうの作品群からはエリック・マコーマックを思い出した。いずれにしても、物語は忘れても、特徴あるイメージがきれぎれのままおそらく長く私の頭に残ってときどきよみがえったりするだろう。一冊通して読んで、なんとなくこの著者らしい世界の感じはつかめたと思う。そのうえで、名高い長編三部作な

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    2023年08月22日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ル=グヴィンの生前最後のエッセイ集だと本屋で見て購入。

     でも、最初だけ開いて以降、数年、続きを読む事ができなかった。気力がないという理由で。

     それが久しぶりに開いて見ると、するする読めるようになっているのは、ようやく、人の話をちゃんと聞ける自分になって来たせいなのかもしれない(だといいな)。

     そんな風に、この人のエッセイは軽い話でもどこか「ずん!」としている。読んでいると、エッセイという定義が判らなくなってくる。辛うじて印象でまとめるなら、文学者のというより、それは学者や科学者の書くものの雰囲気がある。それでいて、けして難しい内容で読み手を煙に巻くというところは微塵もない。でも、一

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    2022年08月17日
  • いまファンタジーにできること

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    ファンタジーを何らかのメタファーでなくファンタジーそのものとして読むことに意味がある。そのように受け取り、それは日ごろ思い抱いていることなので力強く響いた。
    ファンタジーの魅力を伝えるための大いなる力を得た気分。

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    2022年03月30日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    グウィンの編んだこの物語には、読み終えて符合に気がつき驚くところがいくつもあった。まさに細部に神は宿るといったところか。その人その人でなければ見えないことが語られている、その意味に至って「ああ!」と思うーーその、主人公たるひとりの少年の成長に絡んでいく繰り返しが、かれが決意を定めるシーンに繋がって大いに感嘆してしまった。ドラマ性というものは、派手なところにばかりあるのではないのだろう。それが(今のわたしには)物足りないというだけで……

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    2022年03月26日
  • いまファンタジーにできること

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    ファンタジーを愛するすべての子どもと大人へ。

    ゲド戦記のル=グウィンがファンタジーについて語ったエッセイ集。ファンタジーをよく読む人はぜひ手に取ってもらいたい。なぜ子どもはファンタジーを愛するのか、ファンタジーは子ども向けなのか、ファンタジーとは何か。よくあるファンタジーへの問いかけにル=グウィンが真摯に答えている。

    ハリーポッターから起きたファンタジーブームによってたくさんのファンタジーが手に入るようになったと思う。特にあの頃まさにティーンエイジャーだった自分に、たくさんのファンタジーが流れ込んできたのはよかった。確かにペラペラなものもあったに違いない。けれど自分は力を持ったファンタジー

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    2022年03月22日
  • いまファンタジーにできること

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    ゲド戦記のル=グィンによるファンタジー評。
    寓話やメッセージを分かりやすく伝えるツールとしてのファンタジーではなく、もっと本質的なファンタジーでしか描くことができないことを語るウィットに富んだテキストはとても素晴らしい。
    動物物語について語る章が特に興味深く、いくつかの類型に小説の中の動物の描き方を区分けした上で人間と動物、自然の繋がりを眺めていく。紹介されているどの本も読みたくなってきてしまうこと間違いなしに評されている。

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    2022年03月04日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ゲド戦記の著者という事だが今の時点でゲド戦記は読んだことがなく、ジブリのアニメを一度観ただけで「あらすじ」の様なものしか理解していない自分にとっては、先入観もなくタイトルが気になって手に取った。
    いろんな事に触れている。この人のきっぱりした口調が好きだ。経済の成長については全く同意見で、同じ意見がある事に安心もし、ウルフが好きだというのを読んで嬉しく思う。ヘミングウェイは私は嫌いではないけどね。

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    2021年05月29日
  • ラウィーニア

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    ネタバレ

    ローマの詩人、ウェルギリウスの『アエイーネス』に発想を得た作品。トロイアから逃れたアエイーネスがローマの建国の前史に関わったというが、本作のタイトルとなっているラウィーニアという女性については詩人ウェルギリウスの言及は少ないという。ラティウムの王女のラウィーニアは兄弟を失い、否が応でも王国の後継者としての役割が期待され、あまた求婚者が現れるなか、お告げによってアエイーネスと結ばれる。男優位の社会の中での彼女の主体的な選択の模索が未来につながるという物語となっている。
    そのきっかけになったのが、ラティウム王家の神託の森でラウィーニアがウェルギリウスの死ぬ間際の霊魂に出会ったことにあった。というこ

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    2021年05月29日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ひさびさに骨太なエッセイを
    読みました。

    高校生の頃ゲド戦記を読み、
    作者が作り上げる世界や
    言葉遣いに感銘を受けたことを
    おぼえています。

    今回のエッセイを読んでいても
    付箋を貼りたい箇所が、たくさんあり
    手元に置いて何回も読み返したい
    一冊になりました。

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    2020年10月19日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ジブリアニメとして制作された『ゲド戦記』の著者として有名な、K・ル=グウィンさんのエッセイ。猫との生活(バード日記)や、年齢を重ねてたどり着いた生活について、作家としての思いや、人生の一コマについてだったり、様々なテーマで語っている。
    一番印象に残ったエッセイが『ファーストコンタクト』という題名のもの。
    ガラガラヘビとの緊張感ある対峙で共有した瞬間を語った一編。
    彼女の作品を未だに読んでいない。読むとすればヒューゴー賞、ネビュラ賞を取った『闇の左手』から、続いて『ゲド戦記』へと歩みたいと思っている。

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    2020年10月12日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    ゲド戦記はわが青春の愛読書だが、エッセーは初読。
    彼女の作品に出てくる、老いた聡明な龍のような
    鋭い言葉が印象的。

    余暇という言葉の裏にうかがえる
    「大切なもの」が見えない愚か者(現代の大多数の大人)への辛辣な批判、ファンタジーの意味が「そのありかたでなくてもいい」ことを問いかけること、など卓見に富む。

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    2020年10月10日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    格調高い文章で、脳細胞が刺激されました。老いや怒り、といった身近なトピックでもルグウィンにかかると哲学チックです。噛み締めて読みました。

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    2020年08月16日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    言葉の使い方にとても厳格で大切にしているのが心に残る.ル・グウィンに言葉にしてもらうと今まで何となく感じてたことがクリアに整理されて目の前が広がっていくような気がする.時々挿まれる猫との風景にも,生きる姿勢のようなものが見えて,ただ微笑ましいエピソード以上のものがある.私も「本当に大切な本を読むのに忙しくて暇なんてないわ」だ.

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    2020年08月14日