谷垣暁美のレビュー一覧
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共感覚者、ゾンビ、マッドサイエンティスト、死者、詩人、魔術師……。物質世界と精神世界の境界線上で生きる者たちに取り憑かれた短篇集。
直前に読んだエリック・マコーマックの『雲』と驚くほど共通要素を感じる作品集だった。マッドサイエンティストの人体実験で女性がめちゃくちゃにされるところをはじめ、「エクソスケルトン・タウン」の愛とセックスの関係性なども近いと思う。フォードなら一つ一つ短篇として結実させるアイデアを、ゆるく繋げて長篇化するのがマコーマックという感じ。以下、印象に残った作品の感想。
◆「アイスクリーム帝国」
カフェインが齎す創作的なインスピレーションを擬人化して、共感覚と結びつけてい -
Posted by ブクログ
大好きジャンルの幻想小説。
不勉強ながらYahooで書評を読むまで存じ上げませんでしたが、この方は世界幻想文学大賞に7回、シャーリィ・ジャクスン賞に4回、MWA賞、ネビュラ賞など数々の受賞歴を持つ作家さんらしいのです。
表題作は幻想奇想的でありながら、中盤以降のサスペンス味も楽しい作品。
個人的に心に残ったのは「ナイト・ウイスキー」。
この設定からして奇想味満点なんだけど、生物の死骸に生える「死苺」という植物があって、その果実から作られるナイト・ウイスキーは飲むと亡くした大切な人と夢で会えるという不思議なウイスキーなんですよ。
これを飲むと、なぜか樹に登って眠り、その夜の夢で今は亡き人との逢瀬 -
Posted by ブクログ
作品紹介・あらすじ
魔法は破られるようにできているの。
でも、約束はそうじゃない。
世界幻想文学大賞に7回、
シャーリイ・ジャクスン賞に4回、
MWA賞、ネビュラ賞など数多の賞に輝く
現代幻想文学の巨人による
郷愁と畏怖と偏愛に満ちた14篇
アコースティックギターの調べは、ぼくの目の前に金色の雨として現われる。指で絹をなでたときには、レモンメレンゲの風味とねっとりした感触を舌に感じる。ぼくは「共感覚」と呼ばれるものの持ち主だった――コーヒー味を通してのみ互いを認識できる少年と少女の交流を描くネビュラ賞受賞作「アイスクリーム帝国」、エミリー・ディキンスンが死神の依頼を受けて詩を書くべく奮闘 -
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〈白い果実〉三部作の著者による、めくるめく奇想とイマジネールに彩られた短篇集。
ジェフリー・フォードの幻想小説はやっぱり唯一無二のヴィジュアルイメージの強さがある。「創造」の冒頭、どんなに注いでもジョッキから溢れないビールのネオンサインと生命のメタファーにはじまり、「光の巨匠」の首だけが浮かんでいる男の額に嵌め込まれたエメラルドの栓だの、「私の分身の分身は私の分身ではありません」のホワイトチョコに漬けられて姿を表す透明ドッペルゲンガーだの、「レパラータ宮殿にて」の小さな雲が浮かびグラスのなかに天気雨が降る〈プリンセス・チャンの涙〉という名のカクテルだの。緻密で妄執的なリチャード・ダッドの妖 -
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ネタバレジェフリー・フォードの短編を読むのは初めてのはず(長編は『シャルビューク夫人の肖像』を読んだが例によって何も憶えていない)。訳者があとがきに書いているように《現実的なものから幻想的なものへ》と配列された作品のうち、後のほうの「珊瑚の心臓(コーラル・ハート)」や「巨人国」「レパラータ宮殿にて」などが面白かった。より奇想小説ふうの作品群からはエリック・マコーマックを思い出した。いずれにしても、物語は忘れても、特徴あるイメージがきれぎれのままおそらく長く私の頭に残ってときどきよみがえったりするだろう。一冊通して読んで、なんとなくこの著者らしい世界の感じはつかめたと思う。そのうえで、名高い長編三部作な
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ル=グヴィンの生前最後のエッセイ集だと本屋で見て購入。
でも、最初だけ開いて以降、数年、続きを読む事ができなかった。気力がないという理由で。
それが久しぶりに開いて見ると、するする読めるようになっているのは、ようやく、人の話をちゃんと聞ける自分になって来たせいなのかもしれない(だといいな)。
そんな風に、この人のエッセイは軽い話でもどこか「ずん!」としている。読んでいると、エッセイという定義が判らなくなってくる。辛うじて印象でまとめるなら、文学者のというより、それは学者や科学者の書くものの雰囲気がある。それでいて、けして難しい内容で読み手を煙に巻くというところは微塵もない。でも、一 -
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ファンタジーを愛するすべての子どもと大人へ。
ゲド戦記のル=グウィンがファンタジーについて語ったエッセイ集。ファンタジーをよく読む人はぜひ手に取ってもらいたい。なぜ子どもはファンタジーを愛するのか、ファンタジーは子ども向けなのか、ファンタジーとは何か。よくあるファンタジーへの問いかけにル=グウィンが真摯に答えている。
ハリーポッターから起きたファンタジーブームによってたくさんのファンタジーが手に入るようになったと思う。特にあの頃まさにティーンエイジャーだった自分に、たくさんのファンタジーが流れ込んできたのはよかった。確かにペラペラなものもあったに違いない。けれど自分は力を持ったファンタジー -
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ネタバレローマの詩人、ウェルギリウスの『アエイーネス』に発想を得た作品。トロイアから逃れたアエイーネスがローマの建国の前史に関わったというが、本作のタイトルとなっているラウィーニアという女性については詩人ウェルギリウスの言及は少ないという。ラティウムの王女のラウィーニアは兄弟を失い、否が応でも王国の後継者としての役割が期待され、あまた求婚者が現れるなか、お告げによってアエイーネスと結ばれる。男優位の社会の中での彼女の主体的な選択の模索が未来につながるという物語となっている。
そのきっかけになったのが、ラティウム王家の神託の森でラウィーニアがウェルギリウスの死ぬ間際の霊魂に出会ったことにあった。というこ