谷垣暁美のレビュー一覧
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ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」にほんの少しだけ触れられているアエネーアスの妻ラウィーニアを語り部として「アエネーイス」の物語を描く。
といってもウェルギリウスの「アエネーイス」なんて、世界史の知識としてしか知らず、トロイの木馬で有名なあの戦争の負けた方の人の話というぼんやりとした知識のまま読み始めたが、これがまたとても面白い。
ラウィーニアについてウェルギリウスがほんの一言程度しか触れなかったのを逆手に取り、ラウィーニアは自分の意思のまま語り、行動し、時空を超えてウェルギリウスと語る。自分の運命を知ってもただ流されるのではなく、それとは違う方向に(そして自分の望まない方向に)物事が流れ -
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実は、エッセイなのに、彼女のことをほとんど知りませんでした。
でも、パラリとめくって読んだ言葉たちから、彼女のウィットに富んでいて、きっと剛毅で、でも軽やかで、年齢と同時に培われた含蓄を感じ、けして安い本ではありませんでしたが、すぐに購入を決めました。
予想は大当たり!
クスッと笑えて、ほっこりできて、背筋が伸びて、納得、発見しっぱなし。
実は、ファンタジー小説にあまり気持ちが動かず、今までほとんど読んでこなかった私です。このまさにファンタジー小説界の大家とも言うべきル=グウィンの言葉から、ファンタジーのもつ力、ファンタジーだからこそできる世界との戦い方(?)を諭されて気がしました。そして -
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ル=グウィンといえばゲド戦記だろうけれど、「ギフト」シリーズも好きです。
「ギフト」と呼ばれる能力を受け継ぐ領主が治める世界。
主人公の少年オレックは領主の跡継ぎでありながら、その能力がなく……。
ル=グウィンの描写にはいつも圧倒されます。
私たちの前に見せてくれる物語の世界もそこに息づく人間も、力強さと確かさを持って現れてきて、引き込まれてしまいます。
自分の存在に苦悩するオレックの幼馴染みの少女グライが、とてもいいキャラクター。彼女の強さに救われるのはオレックだけでなくて読者もそうなんじゃないかと。
物語の世界に酔いたい方にとてもおすすめです。 -
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ハイ・ファンタジー。
三部作です。ギフト、ヴォイス、パワー。ハードカバーでどうだったか確認してませんが、購入した河出文庫版では、パワーだけ上下巻になっていて、合計4冊。
まさにこういうファンタジーを読みたかったのだ、という異世界ファンタジーでした。生きているうちに出会えたことを感謝したい。ル・グウィンはゲド戦記から入って、SF作品を中心に読みすすめてきましたが、この作品がまちがいなくいちばん好きです。
第一部は、西のはての高地を舞台にはじまります。その辺境の地に住む人々がもつ特別な魔法、「ギフト」。誰でもそれがつかえるわけではなくて、その力を持った人々が、そうでない人々を農奴として -
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ネタバレ「西の果ての年代記」の第二部、『ヴォイス』。
これは名作だった。『ゲド戦記』を読んだときの感動がよみがえって、涙が出た。
一神教の軍事国家に侵略された自然崇拝に近い多神教の国が舞台。
文字が邪悪なものとされ、禁書の地となっている。
ル=グウィンは、自身の問題意識をふんだんに盛り込みながら、ファンタジーとしての魅力を損なわずに空想の世界を描き出している。
アンサルという都市で起きていることは、しかし、あきらかに現実の世界に存在する多くの矛盾を意識して書かれている。
軍事に対する弁論の力。
女性に対する理不尽な差別。
一神教の強靭さと、多神教の柔軟さ。
不可思議なものへの畏敬の念と、商業に携わる -
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表題の由来となっている「余暇には何を」「二階のお馬さんたち」がよい
P29 老齢は気の持ちようでどうにかなる問題ではない。それは実存する状況である。【中略】恐怖というものが賢いことはめったにないし、親切であることは決してない。元気づけようとしているのだと言うなら、そもそも誰を元気づけようとしているのか、考えてみるとよい。
P32 老年における生は次第に衰え、縮小する。そんなことはない、と言っても無駄である。実際にそうなのだから。大騒ぎをするのも、怯えるのも、どちらも無駄だ。誰もそれを変えることはできないのだから。【中略】ちゃんと向き合いさえすれば「ザ・ディミニッシュト・シング(衰えて残り少