谷垣暁美のレビュー一覧

  • ラウィーニア

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    ウェルギリウスの叙事詩「アエネーイス」にほんの少しだけ触れられているアエネーアスの妻ラウィーニアを語り部として「アエネーイス」の物語を描く。
    といってもウェルギリウスの「アエネーイス」なんて、世界史の知識としてしか知らず、トロイの木馬で有名なあの戦争の負けた方の人の話というぼんやりとした知識のまま読み始めたが、これがまたとても面白い。
    ラウィーニアについてウェルギリウスがほんの一言程度しか触れなかったのを逆手に取り、ラウィーニアは自分の意思のまま語り、行動し、時空を超えてウェルギリウスと語る。自分の運命を知ってもただ流されるのではなく、それとは違う方向に(そして自分の望まない方向に)物事が流れ

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    2020年09月23日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    偉大な作家が晩年に始めたブログの記事集。長い?人生を生きていくのにヒントになることがたくさん得られる。

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    2020年08月03日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    あー!それ言っちゃう!という胸のすくようなエッセイが多くあった。著者の正直さ、誠実さが滲み出ている。

    特にうちなる子どもをカルトと言い、酸素だけを食べる人の話しがお気に入りだ。アンケート、信じること、怒りについても示唆に富む。

    『怒りの葡萄』は読もうと思った。

    2018年に亡くなっていたことを本書で初めて知りました。

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    2020年07月27日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    実は、エッセイなのに、彼女のことをほとんど知りませんでした。
    でも、パラリとめくって読んだ言葉たちから、彼女のウィットに富んでいて、きっと剛毅で、でも軽やかで、年齢と同時に培われた含蓄を感じ、けして安い本ではありませんでしたが、すぐに購入を決めました。

    予想は大当たり!
    クスッと笑えて、ほっこりできて、背筋が伸びて、納得、発見しっぱなし。

    実は、ファンタジー小説にあまり気持ちが動かず、今までほとんど読んでこなかった私です。このまさにファンタジー小説界の大家とも言うべきル=グウィンの言葉から、ファンタジーのもつ力、ファンタジーだからこそできる世界との戦い方(?)を諭されて気がしました。そして

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    2020年07月20日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    出だしからもうおもしろくてこの先に書かれていることであろうことにわくわくしている。
    お気に入りの猫パードについての「パード日記」、自分が書いた文章が誤って引用されていたことから展開する「内なる子どもと裸の政治家」など。

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    2020年05月10日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    まやかしではない本当の自由。しかし、それを得るためには、矛盾した、かりそめの自由、権力をいくつもくぐり抜けなければならなかった。読後、深い深いところからの静かな喜びがこみ上げてきた。

    3部作を通して、本当に多くのものを感じた。主人公と共に生き、私も成長したのだ。物語の力がここにはあった。

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    2013年09月09日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    上巻だけでは何とも言えない。ただ前2作と比べて、奴隷制というさらに難しいテーマをどう料理していくのか興味深く思う。それにしても善悪を完全に二分せず、残酷さも、幸福感も描ける手腕はさすが。

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    2013年09月06日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    前作ギフトと同じく葛藤の中を生き抜く物語。神秘性は少ないが、人間社会に対する深い洞察がある。無血に近い革命、書き言葉の文化性、言葉の了解の深度、憎しみ、ジェンダーと色々なテーマが読み取れた。スリルや躍動感もあった。人に対する信頼を描いたのが名作の所以か。

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    2013年09月01日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    葛藤、試行、対決、触れ合い、悲しみ、悼み。一人の青年の中に嵐が吹き荒れる。それはまさに思春期か。最終盤の引き込みは凄かった。グライがとびきり魅力的だ。

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    2013年08月26日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    ああ読み終わってしまった。またしばらくしたら三部作通して読みなおしたい。幼い頃に姉とともに兵士にさらわれ、エトラという都市の館奴隷として暮らしていた少年、ガヴィアの物語。ゲド戦記では自分自身の内面の葛藤が主に描かれていたのに対し、こちらは自分だけではどうしようもない部分をも含む社会の制度や偏見や価値観を、どう把握してどう消化してどう向き合って乗り越えるのか、、、ということが描かれているように思いました。

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    2012年07月19日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ギフトの物語からだいたい20年後の、アンサルという都市が舞台。交易で栄えたアンサルの人々は、長らく戦争をしておらず文字を持たず唯一神のアッスを信じるオルド人に攻め込まれて久しく、占領下の町で道の長に仕える少女が自分の存在と役割を理解し成長してゆくお話です。一作目『ギフト』に出てきたオレックとグライも出てきます。ルグウィンらしい静かな雰囲気の作品ですが、ダイナミックなドラマもあり、読みやすかったです。何度もじっくり読み込みたいお話。

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    2012年07月12日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    静かで示唆的なお話。自然環境の厳しい高地に住み続け、長(ブランター)の家族に代々受け継がれる異能(ギフト)をもって一族を治める人々は、低地の町で暮らす人たちからは魔法使いと恐れられています。ギフトはその部族ごとに様々な働きをし、父から息子へ、母から娘へと伝わり、部族同士の相性により強く伝わったり弱まったり。これは低地の娘を娶った長の息子、オレックの物語。一族が持つ「もどし」のギフトはその命が無かったことにしてしまう破壊の力。オレックの幼なじみの少女グライがとても魅力的でした。ゲド戦記と同じく、繰り返し何度読んでも面白いと思います。

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    2012年07月10日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    魔法の存在する世界を描きながら、不思議な力よりも言葉の力に重きがおかれている。西のはて3部作の中でも特にこのヴォイスがいい。女の子が主人公だからか‥それにしてもオレックとグライがでてくるとなんとも言えない安心感。

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    2012年08月13日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    物語の持つ力、そして詩や物語を語ることの持つ力についてル=グウィンが精緻な筆で語っている。

    大いなる変革は言葉によって可能である。それも勇ましい言葉やわかりやすい言葉ではなく、人々が自分で考えてそれぞれの言葉で語り、互いの意思の疎通をはかっていくことで可能になる。と伝えたいようだ。

    アンサルやオルドを現実の世界の特定の国や宗教と結びつけて考えることは容易いが、それはこの物語の世界を矮小化するだけだ。

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    2011年11月20日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ル=グウィンといえばゲド戦記だろうけれど、「ギフト」シリーズも好きです。

    「ギフト」と呼ばれる能力を受け継ぐ領主が治める世界。
    主人公の少年オレックは領主の跡継ぎでありながら、その能力がなく……。

    ル=グウィンの描写にはいつも圧倒されます。
    私たちの前に見せてくれる物語の世界もそこに息づく人間も、力強さと確かさを持って現れてきて、引き込まれてしまいます。
    自分の存在に苦悩するオレックの幼馴染みの少女グライが、とてもいいキャラクター。彼女の強さに救われるのはオレックだけでなくて読者もそうなんじゃないかと。

    物語の世界に酔いたい方にとてもおすすめです。

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    2011年11月03日
  • ギフト 西のはての年代記I

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     ハイ・ファンタジー。
     三部作です。ギフト、ヴォイス、パワー。ハードカバーでどうだったか確認してませんが、購入した河出文庫版では、パワーだけ上下巻になっていて、合計4冊。

     まさにこういうファンタジーを読みたかったのだ、という異世界ファンタジーでした。生きているうちに出会えたことを感謝したい。ル・グウィンはゲド戦記から入って、SF作品を中心に読みすすめてきましたが、この作品がまちがいなくいちばん好きです。

     第一部は、西のはての高地を舞台にはじまります。その辺境の地に住む人々がもつ特別な魔法、「ギフト」。誰でもそれがつかえるわけではなくて、その力を持った人々が、そうでない人々を農奴として

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    2011年08月12日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ネタバレ

    「西の果ての年代記」の第二部、『ヴォイス』。
    これは名作だった。『ゲド戦記』を読んだときの感動がよみがえって、涙が出た。
    一神教の軍事国家に侵略された自然崇拝に近い多神教の国が舞台。
    文字が邪悪なものとされ、禁書の地となっている。

    ル=グウィンは、自身の問題意識をふんだんに盛り込みながら、ファンタジーとしての魅力を損なわずに空想の世界を描き出している。
    アンサルという都市で起きていることは、しかし、あきらかに現実の世界に存在する多くの矛盾を意識して書かれている。
    軍事に対する弁論の力。
    女性に対する理不尽な差別。
    一神教の強靭さと、多神教の柔軟さ。
    不可思議なものへの畏敬の念と、商業に携わる

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    2011年04月15日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    奇妙で幻想的なお話の短編集。
    どの登場人物もどんな世界もとても丁寧に描出されていて、引き込まれてしまう。
    「創造」が沁みた。
    「夢見る風」も丁度夏から秋に移り変わっていくざわつき感がリアルだった。

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    2025年10月05日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    ネタバレ

    〇アイスクリーム帝国 共感覚者が女の子を感じる「胡蝶の夢」
    〇マルシュージアンのゾンビ」二分心仮説により集団意識に支配されるゾンビを作り出す
    トレンティーノさんの息子
    タイムマニア 1915年のオハイオの農場の香り
    恐怖譚
    本棚遠征隊
    〇最後の三角形 田舎町で薬中の男が老女により更生されるが、老女の目的は呪文をかけること
    ナイト・ウィスキー」
    星椋鳥(ほしむくどり)の群翔
    ダルサリー
    エクソスケルトン・タウン
    ロボット将軍の第七の表情
    ばらばらになった運命機械
    イーリン=オク年代記

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    2025年05月22日
  • 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィンのエッセイ

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    表題の由来となっている「余暇には何を」「二階のお馬さんたち」がよい

    P29 老齢は気の持ちようでどうにかなる問題ではない。それは実存する状況である。【中略】恐怖というものが賢いことはめったにないし、親切であることは決してない。元気づけようとしているのだと言うなら、そもそも誰を元気づけようとしているのか、考えてみるとよい。

    P32 老年における生は次第に衰え、縮小する。そんなことはない、と言っても無駄である。実際にそうなのだから。大騒ぎをするのも、怯えるのも、どちらも無駄だ。誰もそれを変えることはできないのだから。【中略】ちゃんと向き合いさえすれば「ザ・ディミニッシュト・シング(衰えて残り少

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    2025年01月02日