谷垣暁美のレビュー一覧

  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    「白い果実」のジェフリー・フォード。なので、短編とはいえ、重層的で目の眩む、読み応えある物語たち。読み始め、あれ?ジェフリー・フォード?と思ったけれど、あ、やっぱりジェフリー・フォード、になっていく、グラデーションある物語の並び。足元がぐらぐらするところに立つような不穏な感じ。熱があるときに見る夢だ。

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    2020年01月23日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    相当長い間、積読していたのだが、東京モーターショウに行った東京のホテルで読んだら、面白すぎて一気に読み終えてしまう。続編を大至急買わないと!
    それにしても、ル=グウィンは、独特の世界観を作るのがうまい、うますぎる。

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    2019年10月29日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    数年前に何冊か読んでとても引き込まれ、SFに触れたいと思ったきっかけになった気がする。その後ディックなど手に取るが実はサッパリ。今回はファンタジーが強く、ほぼSF色は見当たらす、とてもディープな世界に連れていかれた。幾度か寝落ちしながら読み、また再開。ほんとうに夢を見てるような、何か山の一軒家で木の椅子に座らされて、お爺さんがしみじみ本を読んでくれてるような、懐かしいような静かで不思議で美しい時間を過ごした。お爺さんはその後、猟銃で捕らえた動物のシチューを振る舞ってくれるのだった。肉は残すよ。

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    2019年06月04日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ネタバレ

    ファンタジー
    サンリオやハヤカワ文庫で知ったSF作家ル=グウィンと、『ゲド戦記』や『空飛び猫』の作者が一緒と気付いたのは、21世紀になってからだ

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    2019年05月07日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    SFでもなくただ不思議なことが起こるという意味合いの「ファンタジー」でもなく、本当に「幻想文学」という言葉が相応しい作品。ストーリーに時間や空間の捻れが生じ、気がつけばそれに絡め取られているような感覚に陥る。これまで発表されてきた著者の作品を集めた短編集だが、徐々にファンタジー色が強くなっていく構造が見事。個人的には『レパラータ宮殿にて』が一番好み。

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    2019年02月09日
  • 言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    好きだったのは『ファンタジー作家の助手』と『巨人国』の2つ。
    作家になる素質を物語のなかの人たちとファンタジー作家が見いだしてくれるなんて、最高

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    2019年02月08日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    西のはての年代記Ⅱ~南のサル山を望む港町アンサルは東の砂漠から押し寄せたアスダーに占領され,多くの住民が殺され,書かれたものは悪だと多数あった書物を破棄され,17年が経過している。アンサルの実質的中心地のガルヴァマンドの主・道の長は悪魔の穴を教えなかったために拷問にかけられて両足を折られ不自由な生活で,館に住む人間も少ない。メマーはカルヴァ家の女性がオルド兵に乱暴された結果生まれた女の子だが,母から秘密の扉を開けて書庫に入る秘密を伝えられており,この書庫の存在を通じて道の長と館の秘密を共有し,文字の読み書きも習っている。オルドのガンドに招待され高名な詩人であるオレックがアンサルを訪れ,妻のグラ

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    2013年02月05日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    「ゲド戦記」以来のル=グウィン作品。

    彼女は心に闇を抱えた少年を描くのが上手いなぁと思う。ゲドもそうだけど、この本の主人公オレックもまたそんな少年の一人で、家族との関係とか、幼馴染との関係とか、いろいろ自分に関わる人との中で闇を抱えざるを得ない状況になっていく姿が痛々しいながらもそっと後ろから応援したくなるような気持ちになった。

    このオレックと幼馴染のグライがどうなるのか、気になります。

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    2012年06月07日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    子どもの頃から
    ハイファンタジーをあまり好まなかったので、
    児童書の中で、1番、腰の上がらないジャンル。

    読もうと思ってから、数年経過し・・・
    ようやく手に取りました。

    前半の回想部分(というか、すべて回想なのだけど)の、
    部族の名前やら、その力やら、地名やらが、頭に入らず、進まず、
    こんなに読解力なかったっけ?と思いながら、
    読むのをやめなかったのは、ひとえに、ル・グウィンへの信頼ゆえ。

    そうこうしているうちに、半分も過ぎた頃には、
    いつのまにか、ひきこまれ、大きな満足とともに、読み終えました。
    さすが。

    もうちょっと、わかりやすい地図とか
    登場部族の説明とかが、巻頭にあればなあ・・

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    2012年02月22日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ネタバレ

    「ゲド戦記」以降久々に読み応えあるファンタジーに仕上がってると思う。
    「ギフト」に翻弄されるオレックが自らの力を封じるために目隠しをしつつ、それでも冷静な判断と精神的な成長を果たしていくのは読んでてすごく引きこまれた。翻訳もそんなに気にならず、細かい表現部分で却って原書を読みたい気がした

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    2011年09月14日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    原題が、powersであると、訳者のあとがきを読んで知る。
    なるほど、と思う。
    この本は、主人公の力について書かれた本ではなく、世の中に存在するすべての力について書かれたものであったか、と腑に落ちる。

    なかでも物語中、たくさん出てくるのは信頼の力についてだ。
    主人公の少年は、人を信じやすい。そして、裏切られる。何度も。
    今度は気をつけよう、と彼は思うのだが、しかし、やっぱり彼は信じ、そして裏切られる。

    だが、物語の最後、オレック・カスプロに会い、そして、少年は手に入れたかったものを手に入れる。
    自分を信じる、という力を。

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    2011年05月28日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    ネタバレ

    ギフト、ヴォイスと言葉の力、本の力にまつわる物語が語られて、そして、最後はパワー。文庫版だと、上下2巻。西の果ての年代記の最終巻。

    奴隷として、幸せな(!)生活を送る少年が、自由と自分に目覚めていく物語。
    西の果ての年代記は、ゲド戦記にくらべると、著者が今の世界の比喩として生み出した世界ということがちょっとわかりやすい気がする。
    『パワー』でも、奴隷制で描かれる世界を読みながら、自分自身の精神の自由について考えてしまって、ときどき苦しい。

    例によって、少年は特別な力を持つが、その力が少年の人生を決定的に助けてくれたり、英雄的行為に導いてくれたりはしない。
    ル=グウィンの物語はいつでもそうだ

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    2011年05月28日
  • パワー 下 西のはての年代記III

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    さまようガヴィア。クーガに拾われ、森の心臓で暮らし、水郷にたどり着く。そこも違う。
    本当の自分の場所を求めて、再び出発する。オレックのいるメサンを目指して。
    居場所が見つかって一安心したけれど、彼の旅はまだまだ続くのだろう。未来へ

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    2011年05月04日
  • パワー 上 西のはての年代記III

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    都市国家でよい待遇とは言え奴隷として育ったガヴィア。
    姉を喪った事がきっかけで、お館を出て行ってしまう。
    心も身体も放浪する彼が、時間によって、出会った人々によって少しずつ癒されていく。
    悲しいことがあったら、ちゃんと泣くんだよガヴィ

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    2011年05月03日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    声の持つ力を感じさせると同時に本の持つ力も考えさせる。
    長い間 書物を、書く事を認めない者にねじ伏せられている町に住むメマー。
    オレックとグライがやってきたことで、転機が訪れる。創り人で語り部であるオレックは朗誦に力を持つけれど、読むことが創ることに繋がっている。読むことも話すことも力になると知っている。

    本が語る声を、どれだけ聞き取ることが出来るだろうか、私は。

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    2011年04月29日
  • ギフト 西のはての年代記I

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    ゲド戦記以来、何年経ったのかわからないけど、ひさびさにル=グウィンの新作が児童書コーナーに並んでいるのを見つけたときは興奮した。
    「早く文庫になれ」と念じてたら、文庫になったので、さっそく購入。
    既存の価値観に立ち向かうル=グウィン。ゲド戦記は、海と島に、黒い肌の人々たちが暮らす世界だった。今回は、「西の果て」が舞台。
    これはヨーロッパがモチーフかなあ。
    『ギフト』では、西の果てのなかでも、「高地」という貧しい場所が舞台になっている。海と島ではなく、陸地を舞台に選びながらも、やはり「辺境」を感じさせる物語は、ル=グウィンだなあと思う。

    「低地」の人々が半ば伝説に「魔法使いの住むところ」と言う

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    2011年04月09日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    まさしく幻想小説。ファンタジーなのか、ホラーなのか、頭が変になりそうな訳のわからない物語の数々。ページを捲る手が止まらない不思議な作品もあれば、悪い意味で早く読み終わりたい奇怪な作品もある。アイスクリーム帝国は切なくも美しい短編だった。

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    2025年09月05日
  • ラウィーニア

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    ウェルギリウスの『アエネーイス』からの着想で、ゲド戦記のル=グウィンによって書かれたもの。

    古代ギリシャの知識があればもう少し楽しめたかもしれない。
    『アエネーイス』で脇役で取り上げられなかったラウィーニアが主人公のアナザーストリーのよう。取り上げられなかったからこそ、ここでは意志を貫いているように思う。
    おもしろいのは作者のウェルギリウスが登場して、自分の作品の登場人物であるラウィーニアと会話をするシーンがあること。あなたの未来、私が書いてますよというような会話で、途中までその通りに進んでいく。最後の数十ページはハラハラしながら読んだけど、ラウィーニアの強さを感じたし、おおむねハッピーエン

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    2024年09月09日
  • 最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選

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    幻想小説というのだろうか、この類は。

    苦手だわ。
    理屈も何もあったもんじゃなく、なぜ、と考え出すと訳がわからなくなる。結局なんなん?

    一つの物語が終わって、その次が始まると、何が起こっているのか理解するのにまた時間がかかる。

    グロもあって気持ちわるいし。

    が。

    読み続けるのが負担だったが、止められなかったのも事実。
    絵画を見たときのような、えも言われぬ感覚に囚われる。
    散文と詩の中間みたいなものか。
    優れた小説だというのは間違いないし、好きな人は好きだろうと分かる。

    読後感は、しんどかった。

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    2024年02月05日
  • ヴォイス 西のはての年代記II

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    ネタバレ

    ・『ゲド戦記』の似姿
     『ギフト』でもうっすらと感じたことだが、『ヴォイス』ではさらに感じた。
     『ヴォイス』に対応する物語は『壊れた腕輪』であろう。喰らわれしものアルハは設定が完璧すぎて、テナーをお姫様にしてしまった。その反動が『帰還』で爆発し、それによって一部の読者はやっつけられてしまった。
     お姫様にならないための背景を与えられたメマーは、元気いっぱいに活躍する。しかし、怒りを秘めた内向的な若者として描写されていたにしては、ややご都合的ではある。

    ・一人称視点
     説明調である。朗読向けなのか。そんな印象を『ギフト』にもった。狙いはどうあれ、一人称視点による事物紹介は説明調になりやすいよ

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    2022年09月27日