谷垣暁美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
西のはての年代記Ⅱ~南のサル山を望む港町アンサルは東の砂漠から押し寄せたアスダーに占領され,多くの住民が殺され,書かれたものは悪だと多数あった書物を破棄され,17年が経過している。アンサルの実質的中心地のガルヴァマンドの主・道の長は悪魔の穴を教えなかったために拷問にかけられて両足を折られ不自由な生活で,館に住む人間も少ない。メマーはカルヴァ家の女性がオルド兵に乱暴された結果生まれた女の子だが,母から秘密の扉を開けて書庫に入る秘密を伝えられており,この書庫の存在を通じて道の長と館の秘密を共有し,文字の読み書きも習っている。オルドのガンドに招待され高名な詩人であるオレックがアンサルを訪れ,妻のグライが連れ歩くハーフ・ライオンを通じて,二人と一匹を館に宿泊させることになった。オレックは諸国を歩き,埋もれた詩や物語を集めている。文化が華開いたアンサルにも埋もれた書があるはずだとやってきたと打ち明けられるが,秘密は明かすことができない。自由の詩を著したオレックならば,オルドに支配されたアンサル市民を立ち上がらせることができると抵抗勢力があるが,元議事堂の前に設置された大テントに火を放ったが首謀者は殺害される。市民とオルド兵の間に緊張が走り,ガンドの息子はガンドを殺したとガルヴァマンドに兵を進めてきたが,ガンドの実質的妻であるアルサン女性のお付きから,ガンドと妻は大怪我をして息子に幽閉されていることが先に伝えられていた。一度,秘密の書庫に下がった道の長が表玄関に戻ってくると,枯れていたお告げの泉が復活し,お告げの書が人々に示され,幽閉されているガンドを開放するように人々は動く。解放されたガンドは兵に攻撃を禁止する命令を発し兵も従ったが,血気にはやる市民も存在する。解放されるために解放せよとお告げの書は伝えていたのかも知れないが,それは子ども向けの動物絵本だった。兵と市民の緊張が続く中,オルドからの小隊がアンサルに向かってくると聞いて,道の長はメマーを使者に立てて,ガンドと繋ぎをつけた。大王からの使者は,オルドに税を払えばオルドの被保護国にするという内容で,メマーは納得できないが,人々は大いに喜び,周辺からも使者が来て,交易が復活する模様だ。メマーは自分の読む力を超えたと判断した道の長は,読む力を更に身につけるため,オレック・グライと共に旅をすることを勧める~こうやって,第三部に続くんだねぇ。なるほど,なるほど。訳者のあとがきは当にそのことを書いているが,やっぱり読者は本編よりもあとがきを先に読むことを承知して「あとがき」を書いている。「あとがき」で「本編を是非読んで欲しい」って云っているもの。まあ,それは良いとして,このシリーズでこのⅡが平和主義で貫かれていて良い。暗い状況の中で明るい前向きな姿勢が安心させるからだろう。このシリーズは読み終えたが,ル=グウィンのSFも機会があったら読んでみようと思う
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Posted by ブクログ
子どもの頃から
ハイファンタジーをあまり好まなかったので、
児童書の中で、1番、腰の上がらないジャンル。
読もうと思ってから、数年経過し・・・
ようやく手に取りました。
前半の回想部分(というか、すべて回想なのだけど)の、
部族の名前やら、その力やら、地名やらが、頭に入らず、進まず、
こんなに読解力なかったっけ?と思いながら、
読むのをやめなかったのは、ひとえに、ル・グウィンへの信頼ゆえ。
そうこうしているうちに、半分も過ぎた頃には、
いつのまにか、ひきこまれ、大きな満足とともに、読み終えました。
さすが。
もうちょっと、わかりやすい地図とか
登場部族の説明とかが、巻頭にあればなあ・・・
次もおもしろいことはわかっているので、
読みたいのだけど、いったん腰をおろしてしまうと、
また、なかなか上がりません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレギフト、ヴォイスと言葉の力、本の力にまつわる物語が語られて、そして、最後はパワー。文庫版だと、上下2巻。西の果ての年代記の最終巻。
奴隷として、幸せな(!)生活を送る少年が、自由と自分に目覚めていく物語。
西の果ての年代記は、ゲド戦記にくらべると、著者が今の世界の比喩として生み出した世界ということがちょっとわかりやすい気がする。
『パワー』でも、奴隷制で描かれる世界を読みながら、自分自身の精神の自由について考えてしまって、ときどき苦しい。
例によって、少年は特別な力を持つが、その力が少年の人生を決定的に助けてくれたり、英雄的行為に導いてくれたりはしない。
ル=グウィンの物語はいつでもそうだから、今回も「きっとそうなんだろうな」と思い、「でも、もしかして・・・」となぜか期待し、「あ、やっぱりそうなんだ」と思う。 -
Posted by ブクログ
ゲド戦記以来、何年経ったのかわからないけど、ひさびさにル=グウィンの新作が児童書コーナーに並んでいるのを見つけたときは興奮した。
「早く文庫になれ」と念じてたら、文庫になったので、さっそく購入。
既存の価値観に立ち向かうル=グウィン。ゲド戦記は、海と島に、黒い肌の人々たちが暮らす世界だった。今回は、「西の果て」が舞台。
これはヨーロッパがモチーフかなあ。
『ギフト』では、西の果てのなかでも、「高地」という貧しい場所が舞台になっている。海と島ではなく、陸地を舞台に選びながらも、やはり「辺境」を感じさせる物語は、ル=グウィンだなあと思う。
「低地」の人々が半ば伝説に「魔法使いの住むところ」と言う「高地」で、魔法ならぬ『ギフト』を操る人々の物語。
しかし、ギフトを描く物語でありながら、そのギフトが発揮される場面は少なく、そして、最後まで決定的に重要な役目は果たさない。
それでも、緊迫した物語の展開に、一気に読めてしまう。
このあたりは、まことに名手の筆。 -
Posted by ブクログ
ネタバレUrsula.K.Le.Guin(1929-2018)が2010年から始めたブログを抜粋したエッセイ。トランプ支持層は大嫌いだろうし、そもそも手に取らないだろう。
・「衰えて残り少ないものをなんとしよう」ロバート・フロスト
・15歳のとき親友の叔父のスタインベック「怒りの葡萄」に共感を覚えなかったが、読み返すとアメリカの良いところも悪いところも描きすべての登場人物に共感。
・「私たちが考えていたようなあり方とは限らない。」科学もFTも不確実性を許容し答えられていない問を受入れる。
・すべてのユートピアはディストピアを包含し、すべてのディストピアはユートピアを包含する。
・brotherfoodは階層化し排他的な強固な組織をつくり、競争的で目に見える社会を動かす。sisterfoodは流動的、競争的でなく協力し合う
・「成長」は、経済社会に関する今のところ有力なメタファーだが、21世紀は「正しいメタファー」を見つけられないと生死の境目になるおそれ。
・進化論は科学的仮設であり、信じるものではなく受け入れるもの。
・右派は怒りを燃料にし、人種差別、女嫌い、反合理主義による政治的力を発揮。