谷垣暁美のレビュー一覧
-
-
-
Posted by ブクログ
西のはての年代記Ⅱ~南のサル山を望む港町アンサルは東の砂漠から押し寄せたアスダーに占領され,多くの住民が殺され,書かれたものは悪だと多数あった書物を破棄され,17年が経過している。アンサルの実質的中心地のガルヴァマンドの主・道の長は悪魔の穴を教えなかったために拷問にかけられて両足を折られ不自由な生活で,館に住む人間も少ない。メマーはカルヴァ家の女性がオルド兵に乱暴された結果生まれた女の子だが,母から秘密の扉を開けて書庫に入る秘密を伝えられており,この書庫の存在を通じて道の長と館の秘密を共有し,文字の読み書きも習っている。オルドのガンドに招待され高名な詩人であるオレックがアンサルを訪れ,妻のグラ
-
-
Posted by ブクログ
子どもの頃から
ハイファンタジーをあまり好まなかったので、
児童書の中で、1番、腰の上がらないジャンル。
読もうと思ってから、数年経過し・・・
ようやく手に取りました。
前半の回想部分(というか、すべて回想なのだけど)の、
部族の名前やら、その力やら、地名やらが、頭に入らず、進まず、
こんなに読解力なかったっけ?と思いながら、
読むのをやめなかったのは、ひとえに、ル・グウィンへの信頼ゆえ。
そうこうしているうちに、半分も過ぎた頃には、
いつのまにか、ひきこまれ、大きな満足とともに、読み終えました。
さすが。
もうちょっと、わかりやすい地図とか
登場部族の説明とかが、巻頭にあればなあ・・ -
-
Posted by ブクログ
ネタバレギフト、ヴォイスと言葉の力、本の力にまつわる物語が語られて、そして、最後はパワー。文庫版だと、上下2巻。西の果ての年代記の最終巻。
奴隷として、幸せな(!)生活を送る少年が、自由と自分に目覚めていく物語。
西の果ての年代記は、ゲド戦記にくらべると、著者が今の世界の比喩として生み出した世界ということがちょっとわかりやすい気がする。
『パワー』でも、奴隷制で描かれる世界を読みながら、自分自身の精神の自由について考えてしまって、ときどき苦しい。
例によって、少年は特別な力を持つが、その力が少年の人生を決定的に助けてくれたり、英雄的行為に導いてくれたりはしない。
ル=グウィンの物語はいつでもそうだ -
-
Posted by ブクログ
ゲド戦記以来、何年経ったのかわからないけど、ひさびさにル=グウィンの新作が児童書コーナーに並んでいるのを見つけたときは興奮した。
「早く文庫になれ」と念じてたら、文庫になったので、さっそく購入。
既存の価値観に立ち向かうル=グウィン。ゲド戦記は、海と島に、黒い肌の人々たちが暮らす世界だった。今回は、「西の果て」が舞台。
これはヨーロッパがモチーフかなあ。
『ギフト』では、西の果てのなかでも、「高地」という貧しい場所が舞台になっている。海と島ではなく、陸地を舞台に選びながらも、やはり「辺境」を感じさせる物語は、ル=グウィンだなあと思う。
「低地」の人々が半ば伝説に「魔法使いの住むところ」と言う -
Posted by ブクログ
ウェルギリウスの『アエネーイス』からの着想で、ゲド戦記のル=グウィンによって書かれたもの。
古代ギリシャの知識があればもう少し楽しめたかもしれない。
『アエネーイス』で脇役で取り上げられなかったラウィーニアが主人公のアナザーストリーのよう。取り上げられなかったからこそ、ここでは意志を貫いているように思う。
おもしろいのは作者のウェルギリウスが登場して、自分の作品の登場人物であるラウィーニアと会話をするシーンがあること。あなたの未来、私が書いてますよというような会話で、途中までその通りに進んでいく。最後の数十ページはハラハラしながら読んだけど、ラウィーニアの強さを感じたし、おおむねハッピーエン -
Posted by ブクログ
ネタバレ・『ゲド戦記』の似姿
『ギフト』でもうっすらと感じたことだが、『ヴォイス』ではさらに感じた。
『ヴォイス』に対応する物語は『壊れた腕輪』であろう。喰らわれしものアルハは設定が完璧すぎて、テナーをお姫様にしてしまった。その反動が『帰還』で爆発し、それによって一部の読者はやっつけられてしまった。
お姫様にならないための背景を与えられたメマーは、元気いっぱいに活躍する。しかし、怒りを秘めた内向的な若者として描写されていたにしては、ややご都合的ではある。
・一人称視点
説明調である。朗読向けなのか。そんな印象を『ギフト』にもった。狙いはどうあれ、一人称視点による事物紹介は説明調になりやすいよ