石川直樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ご無沙汰しております。今月は壊滅的に読めなかった分、心の慰安旅行に出かけておりました。
行き先は本書『地上に星座をつくる』。大好きな本屋さんで一目見た瞬間、キャッチーなタイトルと表紙の突き抜けるような山景に、心を丸ごと持ってかれました。
マイペースな慰安旅行なのでスローペースとなりましたが、行き先をここに決めて本当に良かったです(*^_^*)
星野道夫さんみたいな風景写真家かな…?
著者については初耳だったので、本文への出発前にWikipedia先生の元を訪ねた。「23歳で七大陸最高峰を当時の最年少記録で制覇」…!?!?
初めての一人旅は14歳。高校2年の頃には沢木耕太郎の『深夜特急』に影響を受け、単身インド・ネパールへ。『深夜特急』によってバックパッカーが急増したとは聞いていたが、まさか高校生まで駆り立てていたなんて…!
写真家になってからは、絶景をフィルムに収めるためにどんな危峰への登山も厭わず。移動の頻度も半端じゃない。本書を読んでいても、ヒマラヤから帰ってきたばかりなのに、もう次の目的地へと旅立っていたりする。
そんなせわしいはずの7年間の記録であったが、全然気疲れしなかった。大自然に身を任せるような、ゆったりとした文章の中を、心地よく漂泊していたから。
「写真は押せば写る。だからこそ、カメラは世界を端的に模写しているのであって、そこに失敗も成功もない」(P 126)
ヒマラヤ・チベット・沖縄・知床・能登・宮古島・鹿児島etc…
登場回数の多い旅先を中心に列挙してみたが、まだまだキリがない。星野道夫さんが辿ったドラマティックな旅路でも、高野秀行氏のような珍道中でもない、時には何てことのない旅景色。
けど、その一景一景はまるで結晶のように煌めいていて、それらを収めた彼の写真はいかほどのものなのか、直接拝みたくなった。
登山といった大自然に身を投じる活動がメインなので、我々が普段感じえないような感覚を追体験することもできる。
ウサギ狩りを観察しに訪れた山形県では、マタギのおっちゃんたちの地形を頼りにした方向感覚に目を見張った。著者の知り合いのネパール人山岳ガイドも実は東西南北の方角を意識して歩いていたりと、フラフラした自分の生活態度をちょっぴり反省もした。
「こんな時代になってしまったが、ぼくは未だ、旅の途上にいる」(あとがきより)
私が旅エッセイに惹かれるように、著者もまた旅(というより冒険?)の虜だった。
特に登山関連は、文調からして他とは違う煌めきを放っていた。若いシェルパ(ヒマラヤの山岳ガイド)が山頂で見せた余裕を思い出して再び登りたくなったり、ある時は予行演習という名目で、登山する山を試しに訪れたり…。
素人からすれば過酷な行為なのに、もうすっかりクセになっている。「世界ふしぎ発見!」スタッフもビックリのフットワークぶりだ。
聞けば、「全身を使って自分の生をまっとうしている喜び」を感じるために、繰り出しているのだとか。
私が気疲れせずにいられたのも、本いっぱいにみなぎる生命力を浴び続けていたからかもしれない。だからか、著者同様「帰国」早々放心状態になっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ星野道夫さんの「長い旅の途中」を読んだ時はアラスカに滞在したくなった。本書を読んだら、主にネパールの山々に登ってみたくなった。寒さに弱いので8000m級はかなり高い壁だが、石川さんが高所順応のために訪れていた5000mのあたりまでは行ってみたい。
地球が織りなす大自然の中に身を置くことは、不便さに突き進んでいくことだと思う。わざわざ行く必要もないのかもしれないけど、そこに向かうことで生きた心地がする、という感覚はまだまだ浅い経験なれどあーあの感覚のことかぁとなんとなくわかる気がする。もっといろんなところ行きたい‼︎旅ってやっぱりすてき‼︎ -
Posted by ブクログ
ネタバレ近所にある「ヒロミブックス」@創の実(26/11末までの期間限定)という、冒険関連書籍に特化した書店で見かけて手に取ったもの。
著者は、写真家としてその作品、写真集も過去、見ていたが、文章は初めて。登山家山野井泰史氏のように生死の境を彷徨うなこともなく、冒険家角幡唯介氏のように冒険そのものを目的としてない、あくまでカメラマンとして自然、高山と向き合った平常心の筆致が印象的だった。
とはいえ、ドラマがないわけではない。大ありだ。
本書は、若き、新世代のシェルパ族にスポットを当て、将来の登山ビジネスと、それに絡むネパール人、国家としての在り方を俯瞰して見せてくれる。
さらには、終盤、目の前で記録を焦るあまりに引き起こされた二人の女性登山家の事故を間近で見ていた場面が、なんともドラマチック。やはり、山は、非日常であり、登山という行為そのものが、ある意味で神聖化されている。
デスゾーン近くでの筆者の感慨、感受性が高まる描写は常人では計り知れないものがある。
「怪峰ジャヌー(7,710m)が眼下に見えた。4年前、カンチェンジュンガの下見に来たことがあって、そのときははるか遠くに見上げていたジャヌーがこんなにも下に見える。“眠れる獅子”という異名を持つこの山が、日の出と共に起き出してくる。そんな想像をしたあたりから、断続的に涙が出てきた。「なんで自分はこんなことをしているのか」「もっと大事なことがあるんじゃないか」「バカなのか」「最後に落ちたら笑える」などと考えた。」
これは、「8000メートル峰に登っているときにだけあられる、不思議な状態」なのだそうだ。
まだ100年にもならない高所登山の歴史だが、今や金さえ積めば誰でも体験できるレジャーに堕しつつある大衆化する登山についても警鐘を鳴らすが、あれダメこれダメ、ゴミは持ち帰れ云々という話はしない。 静かに山と対峙し、著者が感じ取った自然からのメッセージを伝えてくる。
「山から見る風景は昔から変わらないが、山そのものには人間の欲望の残滓が澱のように蓄積していく。ぼくは山を見て、山からの風景を見るわけだが、同時に山からも、その先の世界からも見られていることを、自戒を込めて再認識せねばならない。」
身近に事故を体験した後、
「山への恐怖心はない。まったくないと言ったら嘘になるが、あるとしたら恐怖ではなく畏怖である。ぼくたちが命を燃やして登り続けたあの山に戻って、自分の中で区切りをつけたい。そうしなければ終われないし、進めないし、別のことを考えることなどできない。」
と、著者は綴る。
恐怖ではなく畏怖。これはどのような感覚だろうか。きっと、平地で暮らすだけの自分には伺い知れないものだろう。
上記、書店で、近々、著者を招いてのトークショーがあるというので、是非、伺っていろいろ訊いてみたいものだ。 -
Posted by ブクログ
・山形県小国五味沢集落でのウサギ狩りから、K2への挑戦と失敗、宮古島での休息など、51編のエッセイ集
・『全ての装備を武器に置き換えるということ』と形式は近いが、こちらではエベレストやK2等の山々への挑戦が具体的に描かれていて、冒険家としての石川直樹さんをより深く知ることが出来ると思う
・自分は山登りはあまりやらない、というかむしろあまり好きではないが、世界最高峰の山に挑戦するのに何年も準備すること、他チームの状況や天候などコントロール出来ない要素に左右されること、登頂した後の体調回復にも時間を要すること、など、時間、精神、肉体、と挑戦のスケールに驚かされる
・2020年に刊行されて、2023年に文庫化、7年間の記録、と書いてあるが、もう少し時系列が分かりやすいとイメージがよりしやすかったな、、、
・印象に残ったエピソードメモ
>手で尻を拭くことは気にしないが、間接キス「ズト」は気にする
>宮古商工の写真部。「高校三年生が人生の中で最も賢く、世の中を冷静に見ている」
>知床連山のルート組み。夏山登山はクライミングがなければどこもハイキングの様なもの
>昼食カレー→クライミングジム→海で泳ぐ→海辺を走る→マックでコーヒーを飲みながら新聞を読む→パニパニシネマで映画を見る→ファミレスで執筆活動・・・の宮古島での一日の過ごし方、羨ましい、、、
・「偏見強め」に映る部分は、要は結構自己完結してしまっているということなのかな、と。エッセイとはそういうものではないか
・この本ではK2登頂は成功していないが、K2という山の魅力は十二分に伝わってきて、結局、石川直樹さんのK2撮影の写真集を買ってしまった(かなり値が張った。。。)