田家康のレビュー一覧
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エルニーニョ現象がもたらした異常気象が世界史に与えた影響について5つのエピソードが紹介されている。
エルニーニョにより、南米大陸西岸を北上するペルー海流が弱まったことで、ピサロによるパナマからペルーへの上陸を3度目にして成功させた。このときインカ帝国は皇帝がカパックからアタワルパに代わったところだったのが大きかった。
エルニーニョにより、イースター島から南米大陸への上陸ルートができてイースター島にサツマイモをもたらした可能性がある。
エルニーニョにより、インド洋海上とインド陸側の温度差が縮まることで夏にモンスーンが北上せず、インドに干ばつをもたらした。
エルニーニョにより、ヨーロッパでの温帯低 -
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研究者としてはある意味で在野である、気象予報士の著者の力作。情報量が多いので、5回目読書中。それでも発見が多い好著。
特に、歴史の様々な動乱、混乱を、政治要因だけでなく、気候要因による強制力を見直す視点は、迫力がある。実際、地球上、同時代に各地で、同様な事件や傾向はあるわけで説得力はある。
細かな論証、いわゆるエビデンスは不足しても、このような洞察、視点は、書籍に歓迎されたい。というより歓迎されない昨今を憂う。
それにしても、これだけの情報と俯瞰をよくまとめた。
自然と科学の偉大さがコンパクトに詰まった本でもあります。
次期氷期がいつ来るかはさておき、41万年前の間氷期が最大最長の温暖期 -
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歴史の授業で学んだことの背景には自然気象が関係していた…って、面白かったなあ。
歴史を点でなく横の繋がり(離れた地域間での事象の因果)で理解しろ…とは言われた覚えがあるけれど、それすらも結局は事象という点と点を並べただけだったかなーと自省。
この本ではむしろ、その「点」であった事象の時間を遡って背景や裏面から起因要因を述べているわけで。
「点」自体が広がった感。
まあ、そうしたことは受験勉強には不要な部分なのは間違い無いんですけど!w
しかし改めて気付かされたのは、日本ですら食に困って人身売買が行われたり土地を捨てざるを得なかったりした時代からまだ100年も経ってないんだなあ…ってこと。
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日本史から世界史、気象学へ翔ぶ、知のダイナミズムが心地良い。膨大なデータ検証後の考察に新鮮な指摘があり、著者の横断的な知が読み取れる。
研究者らしいというか、災害、飢饉の事例を逐一記述しているので若干退屈になる部分もある。グラフの無骨さ、読みにくさには改善の余地あり。
・畳、マツタケは森林伐採による資源枯渇の産物
・元寇は元の戦略上では非常に些末な戦争
・鎌倉防衛システムは海水面低下によって破綻
・アイヌ叙事詩「ユーカラ」に他人を騙すという行為は無い
・新技術への優遇政策が普及に対しての起爆剤
・30年で市場の失敗の教訓は忘れ去られる
・「グスコーブドリの伝記」で、人工火山噴火の温室効果で冷 -
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ネタバレ読み始めたときは「自分が望んでいた内容だ!」と喜んだのだが、読み進めていくとアラが目立つ。著者の経歴から一抹の不安を抱いていたが、それが現実化した感じ。
100ページほど普通に読んだだけで誤植を3〜4箇所見つけており、明らかな誤字脱字が目に付くので、校閲どころか校正すらしてないのだろうか?と不安になる。巻末に謝辞もないので本当に著者一人で書いたのだろうと思う。
内容的にも「コレ、本当か?」と思う箇所(地球科学的な内容)があり、話半分に読むものだと認識している。
また構成がヘンなのも気になる。
この内容で年代順で話を書かないのは、違和感が強い。
序章で人間の発達と気候の関係(5〜2万年前前後) -
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ネタバレタイトルが悪い。異常気象では無くエルニーニョと書くべき。
太陽黒点の話や小氷期などの過去の歴史的な気象現象がまとめられていると思ったら、近世以降のエルニーニョが関係する内容ばかりで肩すかしを食らった。
内容の構成にも文句がある。本書は全体を通して古い時代(大航海時代;エルニーニョが資料に現れる)から、近代(全地球的なつながりの発見と研究の発展)、現代(最新の内容)へという時間軸で書かれているが、
歴史的事象とエルニーニョの研究史が入れ子のような格好になっており、非常に分かりづらい。
エルニーニョの研究史を時間を追ってまず説明してから、それらの時代ごとの歴史的な事件の解説へ入って行く方が「当時の -
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日本の歴史を気候変動とともに読み解く一冊。台風が来たり大雪が降ったり、現代でも天変地異の影響は大きいが、昔はこのような気候変動は飢饉や疫病の発生と直結しており、それによって世情や統治構造の変化といった時代の移り変わりの引き金になったケースも多々あるようだ。
たとえば平安時代末期から鎌倉時代にかけては、朝廷・公家の力が衰えて武家が勃興していったが、それも気候変動の影響が大きいという。ただ神仏に祈るだけで贅沢な暮らしを止めようとしない公家の荘園から農民は逃げ出し、質実剛健ながらも自分たちの暮らしを守ってくれる武家の庇護の下に民衆が集まったために、この権力移転が起こった。
これら気候変動が起こる