あらすじ
わずか1、2度の海水温の変化(エルニーニョ)が
世界史を大きく動かした!
●異常気象がいかに世界を変えたかを描く歴史科学読み物
インカ帝国征服、イースター島伝説、インド大飢饉、ドイツ軍スターリングラード敗北、世界食糧危機――。
気候変動が世界史に及ぼしてきた影響を豊富なエピソードと共に紹介する良質な解説書として好評を博した同名書を文庫化します。
異常気象、特にエルニーニョやラニーニャに由来する異常気象をめぐる5つのエピソードを歴史ドラマに仕立てて掘り下げます。
為政者、つまり人の営み・企てがあった際に、突如襲う予想外の異常気象。それによって歴史が思わぬ展開を迎えた例を、豊富な裏付けデータと共に紹介する、知的読み物です。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
エルニーニョ現象がもたらした異常気象が世界史に与えた影響について5つのエピソードが紹介されている。
エルニーニョにより、南米大陸西岸を北上するペルー海流が弱まったことで、ピサロによるパナマからペルーへの上陸を3度目にして成功させた。このときインカ帝国は皇帝がカパックからアタワルパに代わったところだったのが大きかった。
エルニーニョにより、イースター島から南米大陸への上陸ルートができてイースター島にサツマイモをもたらした可能性がある。
エルニーニョにより、インド洋海上とインド陸側の温度差が縮まることで夏にモンスーンが北上せず、インドに干ばつをもたらした。
エルニーニョにより、ヨーロッパでの温帯低気圧経路が変わったことでロシアに強烈な冬将軍をもたらし、ヒトラーナチス軍に大打撃を与えた。
今も昔も気象の影響は計り知れない。
Posted by ブクログ
タイトルが悪い。異常気象では無くエルニーニョと書くべき。
太陽黒点の話や小氷期などの過去の歴史的な気象現象がまとめられていると思ったら、近世以降のエルニーニョが関係する内容ばかりで肩すかしを食らった。
内容の構成にも文句がある。本書は全体を通して古い時代(大航海時代;エルニーニョが資料に現れる)から、近代(全地球的なつながりの発見と研究の発展)、現代(最新の内容)へという時間軸で書かれているが、
歴史的事象とエルニーニョの研究史が入れ子のような格好になっており、非常に分かりづらい。
エルニーニョの研究史を時間を追ってまず説明してから、それらの時代ごとの歴史的な事件の解説へ入って行く方が「当時の人たちの認識」と「現代の知識での解釈」の対比が出来てわかりやすく、面白いと思う。
文句はあるが、内容としては良かった。
これまで理解していなかった全地球的な気象現象のつながりについて理解できたし、「僅か1℃の海水温変動(が何するモノぞ)」と思っていたエルニーニョの印象を、カオス的な事象、全休的な現象として再認識させられた。この、認識の変化にともなう快感(感動?)は何度経験しても大きく、本質的なので、
本書の中身の構成やタイトルへの文句を超えて良い評価となった。
ただ、何度も書くが、手放しで褒められるものではないので4点には届かない評価になった。
また、ダイヤモンドの著書を先に読んでいることが、この本の評価に大きく寄与しているだろうことを感じる。環境に対する意識は、あの本で完全に(不可逆に)変化してしまったと感じているので、改めてアレはすごいと思った。