北澤宏一のレビュー一覧
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筆者は高温超電導の研究で世界的に有名であり、福島原発事故独立検証委員会、いわゆる「民間事故調」の委員長でもある。5章構成の冒頭である第1章は、3.11福島原発の事故の様子を改めて振り返ったものであるが、今まで読んだ原発事故に関する記述の中では最もわかりやすく、かつリアルなものであった。この部分だけでも、できれば一読をお奨めしたい。
この事故が、首都圏を含む3000万人の人たちが避難をしなければならないという最悪の事態にまで至らなかったのは、まったくの偶然が重なったからにすぎないという事実には、思わず鳥肌が立つ思いだ。また、エネルギー政策の現状と問題点や今後の展望についても、平易な表現でありなが -
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科学技術力の経済に及ぼす影響について述べられた本。データが豊富で、論理的に書かれており説得力がある。印象に残る箇所を記す。
「優秀な研究者を集めることができなければ、地域の大学に生きていくすべは残されていません。一流でなければ、通用しないのです。それがグローバル化した社会の必然であると思います」
「メーカーはグローバル化で困っていない、困っているのは国民と政府だけということになります。早く言うと、日本の国民と政府は民間企業に見放されたのです」
「現在勤めている人達がいずれもらう退職金などを含め、一軒の家には平均すると5000万円くらいの金融資産があるというのが、今の日本なのです。この金融 -
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脱原発なのか、原発存続なのか、二者択一の議論が多いですが、元東大教授、JST理事、原発事故調査委員会の委員長としての立場で書いてあるので、1つの考えとしてはバランスが取れていると思います。
前半は原発事故の問題点で、原発事故調査委員会の委員長としてもかかわっているので感情論ではなく、科学者としての視点があって面白い。後半は、脱原発として考えるとしたらという諸外国の例や可能性を、ロジックでエネルギーを代替できるのかを考えているのかがわかりやすい。
政治の争点にもなりやすいですが、感情論ではなくて、原発の危機想定が未熟だったように、実際の想定をせずに結論を急ぐのは危ないと改めて感じました。 -
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近年の日本の閉塞感・倦怠感は日本人が希望を持てず積極性をなくしているからだとし、希望が持てるための対策として、「第四の価値」="「大きなビジョンの下に初めて実現できる夢」"を科学技術によって創出することを説いている。
希望的観測に基づく理想を語るのではなく、現状を詳細に分析したうえで実現可能な対策を論じている。
以下、自分の解釈(間違っているかも)。
日本はバブル期以来巨額の「双子の黒字」(貿易黒字と所得収支黒字)を出し続けているが、それによって円高が進行、企業の新規技術への無関心さも相まって産業と消費の流出が拡大した。
日本企業は内需を増やさなければならないが、需要は -
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シュウゾー購入本、のような題名ですが、自分で買いました^^
内容は、「経済の伸張はイノベーションなしには達成できない」「したがって、イノベーションを起こす国内での投資が必要だ」「研究助成のあり方を変えて日本独自の2段階方式にしたことで、日本の研究は好転してきている」「日本の科学技術は相対的に優れたポジションに今はいる」「もっとここに投資すれば将来いいことあるかもよ」
というような内容。
おおむね、合理的な話であり、共感できる内容であった。
経済に関する考え方としても、一国単位でみたときに(あるいは世界単位と言い換えてもいいかもしれない)、「貯蓄はできない」というのも、とてもシンプルで的を得 -
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福島原発事故独立検証委員会委員長の手による再生可能エネルギーへの移行の可能性を定量データを基に客観的に論じた一冊。
前半は福島原発事故の分析に充てられており、組織と個人が非常事態においてどのように失敗に至るのか、言い換えれば組織のルールや文化が個人の判断と行動にどのような影響を与え、それらの判断と行動の一つひとつが逆に組織に対してどのように影響するのかがわかる。
後半は再生可能エネルギー移行に向けた分析とシナリオであり、「『原子力はいやだ』という国民感情と、『原子力がないと経済はめちゃくちゃになるぞ』という…経済界からの警告との、二者択一の議論」に対して「もう少し定量的な議論をしなければな -
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『科学技術は日本を救うのか―「第4の価値」を目指して』
(北澤宏一、2010年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
本書は、若者が未来への夢を失くしているというプロローグの問題提起から、日本の経済を再生し、科学技術を用いて「第4の価値」を創造すれば、若者が未来に夢を持てるはずだということが書かれている。
日本の科学技術の水準の話、日本経済の長期停滞の理由(これを筆者は25年に及ぶ国際収支黒字がもたらしているという)、第4の価値の説明、科学技術を用いて地球の環境を守る(主にエネルギー供給の面で)ことができる事、などを解説している。
日本の科学技術の現状がよくわかることや、最新の科学技術の知 -
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JST理事長の北澤宏一氏の本。
学術的な、あるいは科学的な視点から書かれたものを期待して読んだが、どちらかというと経済的な視点から日本経済を支えるための科学技術の在り方が書かれている。なので、想定していた内容とは少し異なったが、これはこれで面白かった。
具体的なデータを提示して定量的に議論が展開されるのがよかった。例えば、日本の大学(東大、早稲田)とアメリカの大学(ハーバード etc.)の年間収支の比較。日本の大学は、東大(国立)は国立学校特別会計(国からのお金)、早稲田(私立)は学生の授業料が主な収入であるのに対し、ハーバード(私立)では事業収入と寄付金が多く、それらを合わせると収入の半